戦争と平和 第3巻・第2部(13−2)ロストフ、公爵令嬢マリヤから事情を聞く。 | 気ままな日常を綴っています。

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(物語)

「やあ❗️アルバートゥイチ 、おっかねえ顔してよ❗️勘弁してけれや、な、威張るなって❗️おい❓」百姓達はにやにや笑いながら言いました。

ロストフは酔った百姓達を見て、くすくす笑いました。

「それで、どうしたと言うのだ❓」と、ロストフはアルバートゥイチ に聞きました。

「お恥ずかしい話ですが、ここの粗暴な百姓どもが公爵令嬢を屋敷から立ち退かせまいとして、馬を外すと脅しを掛けて来て、その為に朝からすっかり支度しながら、令嬢はお発ちになれない始末なのです。」

「そんなばかな❗️」と、ロストフは叫びました。

「なんで嘘など申し上げましょう。。」と、アルバートゥイチ は言いました。

 

ロストフは馬を降りると、それを伝令に預けてアルバートゥイチに事情を詳しく尋ねながら、本館の方へ歩き出しました。

事実、令嬢が昨日百姓達に麦を分けてやろうとした事と、ドローンが寄合で話し合った事とが、すっかり事態をこじらせてしまったので、ドローンはヘソを曲げて鍵を返し、百姓達の側についてしまったのでした。

そして今朝、令嬢が出発の為に馬を付けるように命じると、百姓達は大挙して倉庫の前に押し掛け、公爵令嬢を村から出す訳には行かない、荷物を搬出してはならぬと言う布告があるから、馬を解く、と言って来たのでした。

アルバートゥイチは、彼らの所へ行って説き伏せようとしましたが、彼らの返答は、公爵令嬢を出す訳には行かない、布告にそう書いてあるからだ、公爵令嬢は留まればいいでは無いか、そうすれば彼らは今まで通り仕えるし、どんな命令にでも服従する、の一点張りでした。

 

ロストフとインリンが街道を馬を飛ばして来た時、マリヤはアルバートゥイチやドゥニャーシャや小間使いの止めるのも聞かずに馬を付けさせて、出発しようとしていました。

ところが、御者達は走って来る騎兵の姿を見て、フランス軍と思い込み、逃げ散ってしまい、家の中には女達の鳴き声が上がりました。

「隊長殿❗️ああ、有り難い❗️神様がお遣わしになったのよ。」

ロストフが控え室にを通る時、感激した声が言い合いました。

 

ロストフが広間へ案内された時、公爵令嬢マリヤは、悄然と椅子に座っていました。

彼が何者なのか、何をしに来たのか、自分がどうなるのか、彼女にはわかりませんでした。

しかし、彼のロシア人らしい顔を見て、またその入って来た態度と最初の言葉から、自分と同じ階級の人間とわかると、彼女はそのきらきら輝く深い眼差しでじっと彼を見つめて、胸の動揺に震える途切れがちな声で語り始めました。

ロストフは、瞬間的にこの巡り会いに何かロマンチックなものを感じました。

『粗暴な暴徒達の群れの中に、ただ1人取り残された身を守る術も無い、悲しみに閉ざされた令嬢❗️しかしなんと言う奇妙な運命が俺をここへ導いたのだろう❗️』と、彼女の言葉を聞きながら、彼女を見守りながら、ロストフは考えました。

『しかし、彼女の顔と表情には何と言う柔和な気品がみなぎっている事か❗️』と、彼女のおどおどした話を聞きながらロストフは考えました。

 

こうした事件が、父の葬儀の翌日に起こった事に話が及んだ時、彼女の声が震え出しました。

しかし、彼女は直ぐに、その言葉がロストフの同情を誘おうとする意味に取られはしまいか、と危ぶむような、ハラハラしたような眼差しを彼に戻しました。

ロストフの目に涙がにじんでいました。

公爵令嬢マリヤは、それを見てとりましたた、そして彼女の顔を醜さを忘れさせるあのきらきら光る目で、感謝を込めてロストフを見守りました。

 

「お嬢様、偶然にこの地に立ち寄りまして、お役に立つ事が出来ます事を、どれほど幸福に思っているか、僕は言葉に表す術を知りません」と、ロストフは言いました。

「どうぞご出発下さい、そして僕に護衛をお許し下さいますよう、何者にもお経様に指一本触れさせぬ事を、名誉にかけて保証致します。」

そして、恭しく一礼すると、彼は扉口の方へ歩き出しました。

ロストフは、その態度の丁重さによって、彼女を知った事を幸福と思う事に変わりは無いが、しかし彼女と親しくなる為にその不幸を利用する事を潔しとしない事を示そうとしたのでした。

マリヤはそれを悟って、その美しい心を嬉しく思うのでした。

 

「本当に、心から感謝致します。」と、公爵令嬢はフランス語で礼を言いました。

「でも、こんな事は皆単なる誤解で、誰の罪でも無いようにあって欲しいと思いますわ。。」

その言葉を聞くと、ロストフは泣きそうな顔になって、改めて深く一礼すると、部屋を出て行きました。

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(解説)

う〜む。。

ま。農民達から村から脱出する為の馬車と馬を拒否されて、屋敷で立ち往生しているマリヤですが、おそらく、この部分の記載によると小間使いや召使い達はこのどうしようもない状況にただただ呆然として、泣いていただけのようですね。

マリヤは、自分が領主(代理)として、こんな時こそ冷静にならなければならないという覚悟は有ったと思います。

だから、当初フランス軍と間違われたロストフ一行が「何者か聞いてきなさい」と命じたのでしょう。

 

たまたまロストフが偶然この村にやって来たのも運命だったのかもしれませんが、もちろんその『運』を拾ったのはマリヤの勇気と積極性だったと思います。

まず、この点に、ロストフは、今まで自分が知っていた女性と違うマリヤの一面を見たのだと思います。

 

そして、初めて広間で出会った公爵令嬢マリヤは、不幸の只中に居たにも関わらず、取り乱す事なく、気品に満ちた言葉遣いと心遣いで彼を迎えたのでしょう。。

身なりは決して派手では無かったと思いますが、知性と慈愛と責任感に満ちた表情を「美しい」と感動したみたいですね。

マリヤは、不美人という設定で、あのアナトーリに「おばけ」とまで言われた女性ですが、ニコライの審美眼は良いですね〜。

ニコライは、この心の美しい利口な女性に運命まで感じてしまいます。

 

一方、マリヤの方も、ロストフの礼儀正しい態度と配慮にとても感謝していますね。

それに自分と同じ階級の人間ということにもほっとしている様子です。

彼女は先日、農民達に無礼な言葉を投げつけられたばかりですし。。やっぱり自分と同じ階級の人間には、同じセンスっていうのがあるのですよね。

 

彼女も彼も、お互い、計算してお互いの好意を引き寄せていると思われたくないのですね。

これは本物の証ですね、お互いの好意が。

こういう出会いって、人生においてなかなか無いと思いますし、全く無いという人も多いと思います。

 

ロストフ(ニコライ)には、ソーニャという幼い頃から結婚を誓い合った恋人が居ますが、どうなるのでしょうかね。

また、ロストフ家の財政危機はいよいよ深刻化している様です。

ニコライにしてみれば、お金目当てでマリヤに近づくなんて発想はもちろんあり得ないのですよね。

彼は、天によってどのような運命に導かれるのでしょうかね。。