(物語)
(12月3日)
遅く目が覚めて、聖書を読んだが、虚ろな心だ。
その後で部屋を出て、広間を歩き回った。
色々としようと思ったが、思いはそちらへ行かないで、4年前にあった一つの事が頭に浮かんだ。
ドーロホフ氏が、我々の決闘後モスクワで出会った時、奥さんはいらっしゃらんが、でも完全な心の安らぎをお楽しみでしょうな、そう願ってますよ、と私に言ったのだ。
私は、その時は何も返事をしなかった。
今、私はこの出会いの時の模様をまざまざと思い出し、心の中で彼に最も毒々しい刺すような返事を叩きつけた。
やっと気づいて、この考えを払いのけたのは、激怒に火を噴いている自分を見出したからだった。
しかし、この位ではまだ萌え足りない思いだ。
その後、ボリス・ドルベツコーイが来て、様々なアヴァンチュールを語り出した。
私は彼が来た途端に不愉快になっていたので、何かで嫌味を言って話の腰を折った。
彼はやり返した。
私はカッとなって、聞き辛い事や、乱暴な事まで散々まくし立てた。
彼は黙り込んだ、そして私が気が付いた時は、もう後の祭りだった。
困った事だ、私は全く彼を扱い切れない。
その原因は私の自尊心だ。
それは自分を彼の上に置こうとする、だから彼よりはるか下の人間に成り下がる、というのは、彼は私の乱暴を大目に見るからだ。
ところが私は、その逆に、彼に軽蔑を抱いているのだ。
神よ、彼の前でもっともっと私の醜さを見せ、それが彼の利益になるような行動を私に取らせ給え。
夕食後、私は横になった、そしてウトウトとしかけた時、左耳に『お前の日だ』と告げられた声を、はっきりと聞いた。
私は妙な夢を見た。
暗がりを歩いていると、ふいに数匹の犬に囲まれたが、平気で歩いて行く、すると一匹のあまり大きく無いのがいきなり私の左ズボンに噛み付いて離さない。
私は両手でそいつの首を締め出した、やっとそいつを引き離したと思うと、別なもっと大きなのが私に噛みつこうとした、そこで私はそいつを掴んで持ち上げた、そして高く持ち上げるほど、その犬はますます大きく重くなった、
するとだし抜けに同志Aが歩いて来た、そして私の手を取ると、ある建物の方へ連れて行った。
その建物の入り口の所に1枚の板が渡してあって、それを渡らなければならなかった。
私がそれに足を乗せると、板がしなって落ちてしまった。
私は塀にやっと手を掛けてよじ登り始めた、私は散々苦労した末、やっと足はこっち側に垂れ下がっているが、上体を塀の上から向こう側へ突き出す事が出来た。
ふと見ると、同志Aが塀の上に立って、大きな並木道や庭園を指差している。
庭園の中に大きな美しい建物が見える、そこで目が覚めた。
おお主よ、偉大なる自然の造物主よ❗️私が犬をーー私の煩悩を、そしてこれまで全ての犬どもの力を結集した最後の犬である最大の欲望を、振り切る事を助け給え、そして私が夢にその姿を垣間見た善徳の宮殿へ入らせ給え。
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(解説)
よく意味がわからない夢のように思いますが、この夢の中身にピエールの内心の葛藤を読み取れると思います。
夢というのは、天からのお告げという考え方もあるでしょうが、個人的には、自分の潜在意識を投影している場合が多いと思うのですよね。
だから、上段の部分の夢については、自分の妻エレンと仲良くしすぎるドーロホフとかボリスに対する嫌悪感と、それに対する自分への罪悪感を述べていると思われます。
ピエールは、もともと妻のエレンを愛して結婚したというか、エレンが必要以上に近寄った時の胸の肉感にボ〜として、つい『無意識下の煩悩』に負けてしまった。。と言うような感じだったと思います。
決してエレンの中身を尊敬したり、共鳴したりしている訳ではありません、、むしろ、どうしようも無い位、知性に欠けると思っているのですね。
だから、ドーロホフに対してもボリスに対しても、もちろん嫌悪感は持つのですけれど、それは肉体的な嫉妬感でしかないと思われるのですよ。
そんな男たちにムキになって暴言を吐いている自分のレベルが低いと認識しています。
ボリスは、むしろ怒り狂っているピエールに対し、冷静に大人として対応するのに、こんな計算高い男よりも自分が下になってしまう、と自分でもわかっています。
だったら、いっそのこと、自分の醜い姿が、彼のフリーメーソンの真理に目覚めさせるものである事を願っていようか。。とそんな気持ちを綴ったものでは無いか、と思います。
下段は、自分の煩悩(=おそらくこの場合は女性への肉欲と推定して良いのかな。。前後関係から)の大きさを襲ってくる犬の大きさが大きくなってくる事で比喩し、そして、それをようやく逃れた(板の橋からあやうく落ちそうになるのですけれどね。)先に美しい美徳の宮殿が現れた。。という象徴的な夢だと思われます。
すみません。ここはかなり勝手な私の解釈ですね。念の為。