第1巻・第1部(17) ニコライとソーニャの事情。 | 気ままな日常を綴っています。

気ままな日常を綴っています。

いつか静かに消える時まで。。
一人静かに思いのままに生きたい。。

(物語)

食事が終わり、若い人達は伯爵夫人の勧めで音楽に興じ始めました。

ジュリイがまずハープで小品とその変奏曲を弾き、音楽の才を知られているナターシャとニコライに何か歌ってくれるよう、皆は求めるのでした。

「『泉』がいいよ。」とニコライが言ってナターシャが歌おうとしたとき、ナターシャはソーニャが居ない事に気付くのでした。

 

ナターシャは、ソーニャを捜しに駆け出して行きました。

ソーニャは、ロストフ家の若い娘達が悲しみの涙を流す場所となっていた廊下の長持に腰掛けていました。

「ソーニャ❗️どうしたの❓」と、ソーニャが泣いているのを見てナターシャはわっと泣き出すのでした。

ソーニャはやっと気を静めて「ニコライが1週間後に出発するのよ。令状が出たの。あんたは幸せだわ。。でも、私はあんたの事もボリスの事も愛しているから羨ましいとは思わないけれど。。あんた達には障害が無いのだもの。。ところがニコライは私には従兄でしょう。。だからお母様(ソーニャは伯爵夫人を母と考え、母と読んでいた)は、私がニコライの出世を妨げるとか、私を恩知らずだとかおっしゃるでしょう。。」と言います。

 

ナターシャはふいに「ソーニャ。。きっと食事の後でヴェーラ(長女)が何か言ったのね❓」

「ええ。。ニコライが私に書いてくれた詩をヴェーラが見つけてお母様に言いつけてやるとか、お母様はニコライと私の結婚を許しはしない、ジュリィと結婚する事になるだろう。。って。。今日一日、ニコライがジュリィと一緒に居たのを見たでしょう❓」

ナターシャは彼女を抱きしめると、彼女を慰め始めました。

「ソーニャ、ヴェーラの言う事なんか信じちゃダメよ。だってシンシンおじ様のお兄様は二等親の従妹と結婚なさったじゃ無いの❓私たちは三等親の再従姉妹なのよ。それに、ニコライはジュリィの事なんか思っていないわ。」そう言うと、彼女はソーニャの頭に接吻しました。

 

ソーニャは生気を取り戻しました。

「さあ『泉』を歌いに行きましょうよ。」

「ねえ。。あの太ったピエールって方ね。。私の向かいに座っていたあの人、滑稽ったら無いのよ❗️」と、ナターシャは出し抜けに言いました。「私、とっても楽しいわ❗️」

 

歌の後、大広間ではダンスの支度に掛かっていました。

音楽が鳴り出すと、ナターシャが客間に入って来て、ピエールに歩み寄るとニコニコ笑いながら顔を赤らめてこう言うのでした。

「お母様が貴方にダンスのお相手をお願いするようにって。」

「ぼくは貴女の足を踏んづけそうで心配ですが。。」とピエールは言いました。

「でも、貴方が教えて下さるとおっしゃるのなら。。」

彼は、その太った手を低く下げながら、ほっそりとした少女に与えました。

 

大広間では、伯爵がマーリヤ・ドミートリエヴナを相手に巧みなダンスを披露していましす。

伯爵は上手いけれど、マーリヤの方はさっぱりでした。

伯爵はそれを上手く捌いて踊り続けるのでした。

ナターシャは、人々の袖や衣装を引っ張りながら「パパを見る事」を要求して回るのでした。

ーーーーー

(解説)

ここでは主に、恋仲であるニコライとソーニャの事情が描かれています。

ソーニャは、ニコライの再従妹に当たり、結婚するには近親婚に当たるので大主教の許しが必要なのですね。

また、ソーニャは、何らかの事情によりロストフ伯爵夫妻に引き取られ育てられているので、いわばロストフ夫妻には恩義があります。

そしてロストフ家は前述のように、財政的な問題を抱えています。

 

もし、ニコライがソーニャを選んで妻にした場合、後ろ盾の無いソーニャは何ら経済的基盤を持たず、ロストフ家の財政に役に立つ事は出来ません。

その事は、引いてはニコライの出世に支障が出るのですね。。

その事情がある事が判っているので、現実派の長女ヴェーラはソーニャに「ニコライとの結婚は諦めなさい。」と言うのですね。

(個人的には、ヴェーラの進言は悪くはないと思うのですけれどね。いつかは本当のことが分かる事を思うと。要は「言い方」なのでしょうね。)

ナターシャは、ソーニャの心に寄り添い慰めます。

ここに、ナターシャの優しさ・熱さそして弱さとが見えます。

長女ヴェーラと対照的なナターシャの性格は注目に値します。

 

ナターシャは、今、どうあってもソーニャの心に寄り添うことが大事だと思っており、それはナターシャの優しさ故ですが、その優しさは、まだ成長が足りない、どうかしたら無責任な優しさでもあるのですね。

彼女は、本当の優しさを、これからの人生において学ばなければなりません。そして、きっと大人の女性としての真の優しさに目覚めると思います。

 

また、ナターシャは、舞踏会で初めてのダンスをピエールと踊るよう母のロストフ伯爵夫人に促されます。

おそらく、ロストフ夫人の腹の中には、お金持ちのピエールと自分の娘がお近づきになる事を希望していたと思われます。

後に、べズーホフ老伯爵の遺言を巡ってロストフ伯爵夫人の親友のアンナ・ミハイロヴナは暗躍するようです。