第1巻・第1部(8) ロストフ伯爵家の子供達(ナターシャ、ニコライ、ボリス、ソーニャ) | 気ままな日常を綴っています。

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(物語)

その時、不意に隣の部屋でドアの方へ走ってくる数人の男女の慌ただしい足音と、躓いた椅子の倒れる音が聞こえたかと思うと、13歳になる少女(ナターシャ)が短いモスリンのスカートに何かを隠すようにして駆け込んで来ました。

それと同時に真っ赤な襟の制服を着た学生(ニコライ)と、近衛士官(ボリス)と、15歳になる娘(ソーニャ)と子供服を着た丸々太った血色の良い少年(ペトルーシャ)が現れました。

 

ロストフ伯爵は、駆け込んで来たナターシャを抱き込むように両手を広げ迎えました。

伯爵は、ナターシャにはとても甘かったのです。

ナターシャは、目の黒い、口の大きい、美しくはないが活発で明るい少女でした。

彼女はレースのスカートの下から取り出した人形を時々つつきながら、何やら可笑しそうに母の膝の上に突っ伏して笑い転げています。

礼儀にうるさい客の婦人までが、釣られて思わず笑い出します。

母は、わざと怒ったフリをして少女を押しやりながら「これが下の娘です」と言いました。

 

ナターシャの若い仲間達は、アンナ・ミハイロヴナの一人息子で近衛士官のボリス、伯爵の長男で学生のニコライ、伯爵の姪に当たる15歳のソーニャと、末子のペトルーシャ少年です。

ニコライとボリスの二人の青年は、小さい時からの親友で同じ位の年齢でした。

ボリスは、金髪の長身の青年で美しい顔をしており、社交的でした。

これに対し、ニコライは髪の縮れた中背の青年で、一途な感激しやすい性質が顔全体に表れています。

ニコライは口下手で恥ずかしがり屋でした。

 

ナターシャは、ついに笑いが堪えきれず、客間を走り出して行きました。

ボリスは、静かに客間を出るとナターシャの後を追います。

ペトルーシャ少年も二人の後を追って駆け出して行きました。

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(解説)

ロストフ伯爵家で、この物語の重要人物となる子供達の描写です。

まず、ヒロインのナターシャは、両親に甘やかされてわがまま一杯に育った明るい少女として描かれています。

ニコライの一途な真面目さ。ボリスの礼儀正しさ・社交慣れしている様子、どちらかというと影の薄い感じの姪のソーニャ。

末子のペトルーシャもやがて成長して戦場に出向きますが、この登場シーンの柔らかい子供らしさがとても幼気な感じです。

 

それぞれの子供達がどんな試練を受け、何を考え、学び、どんな大人へ成長して行くのか、がこの物語の一つの柱となります。