ケンドラーの技術の秘密の第2は、②像の中身が空洞であるという事です。
これはマイセンのフィギュアを見れば明らかです。
マイセン(28)の鷲の像の写真のバックスタンプ(双剣マーク)の写真からも中身が空洞になっている事が分かります。
寄木造りの仏像も、兵馬俑の中身も、日本の柿右衛門様式の人形も中は空洞です。
マイセンのフィギュアは、そもそもケンドラーの考案ですから、当時のヨーロッパの、大理石を彫って像を作る、という塑像の概念を根本から覆していたのです。
像の中身を空洞にする事によって、磁器は軽く却って強度を増す事が可能で、かかる力も分散させる事が出来るのです。
ケンドラーは、物理的に中を空洞にした方が安定した像を作成する事が出来るという事を「知識として知っていた」可能性が高いと思われます。
それから最後に③型抜きで成形をするという事です。
マイセンの初期のカップ&ソーサーは、ろくろ造りと思われます。
というのは、微妙にソーサーに肉眼でも感じる歪みが見られるからです。
この点は古伊万里もそうです。
しかし、古伊万里でも四角い壺の様な形状の作品は、四角い板に陶土を挟んで型で作っていた事が知られています。
また、古いヨーロッパの陶器にも「型作り」という手法がありました。
型を利用する事によって、同じものを複数個作る事が出来ます。
さらに、像の一部のパーツが破損したとしても、修理も可能ですし、型抜きによって焼成時の縮小率の計算もかなり簡単になるはずです。
ケンドラーの塑像は、こうした「知識」によって作られたものだったと思われます。
芸術的センスは元より、彼の知識と応用力が他の造形師たちとは一線を画していたものと思われます。
ケンドラーは、アウグスト強王の息子のアウグスト3世の時代に、セルヴィス(食器のセット)という概念でも名前を知られています。
もちろん、マイセン以前にもセルヴィスは作られています。
しかし、ケンドラーが作成したセルヴィスは数1000ピースという膨大な量のセルヴィスなのです。
これは「型抜き技法」を用いる事によってのみ作成が可能でした。
この点に於いてもケンドラーの非凡な才能を伺う事が出来るのです。(後述)
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