源氏物語「紅梅」②(最終回) 匂兵部卿の宮、宮の御方に執心する。 | 気ままな日常を綴っています。

気ままな日常を綴っています。

いつか静かに消える時まで。。
一人静かに思いのままに生きたい。。

匂宮は、明石の中宮の清涼殿から、自分の宿直のお部屋へ退出なさる所だったのよ。

按察使の大納言の若君が居るのを見つけて声を掛けるわ。

若君は「今日は、まだ宮が宮中にいらっしゃるとお聞きしたので、急いで参りました」と子供っぽく甘えて申し上げるのよ。

 

「宮中だけでなく、気兼ねのいらない私の邸でも遊びにおいで」と宮は言って、この若君だけをお側に呼ばれてお話になるのよ。

そして「この頃は、東宮からは(若君が)少しお暇をいただけるようだね。前はお側から離されない程お気に入りだったのに。。姉君が入内されてからは、そちらに東宮の御寵愛を奪われて居るんだね」と匂宮はからかうのよ。

若君も「お側から離して下さらず困って居ました。でも、匂宮様のお側でしたら。。」と、後の言葉は控えて居るわ。。

 

匂宮は「あなたの姉君(一の姫君)は、私を見限って東宮に入内なさったのはおもしろくないね。私と同じ古めかしい皇族の血筋の宮の御方(蛍兵部卿の宮と真木柱の宮の姫君)と申し上げている姫君に、私と仲良く付き合っていただけないか、とそっと伝えておくれ」とおっしゃるのよ。(※大納言は、二の姫君を。。と思って居るけれども、匂宮は宮の姫君が気に入っているのですね。

そして若君があの紅梅を差し上げると、匂宮は花を下にも置かずにしみじみと御覧になるのよ。

匂宮は、前々から紅梅がお好きで、たいそう喜ばれてこの紅梅を褒め称えていらっしゃるのよ。

 

匂宮は「今夜は宿直なので、あなたもこのままここで泊まっておいで」と若君を引き留めて離さないのよ。

いい薫物の匂いのする匂宮のお側近く寝ませていただいたので、若君は子供心にも嬉しくて匂宮を懐かしく思うのよ。

「この花の送り主は、どうして東宮に差し上げなかったのだろう」と、匂宮がお聞きになるけど、若君は「存じません」と答えるわ。。

 

はて。。大納言は、自分の実の娘(二の姫君)を、とお考えなのだな。。と、匂宮は思うのよ。

でも、自分自身の関心は、別のお方(宮の姫君)にあるのでこのお手紙のお返事は、はっきりと気持ちを示さないのよ。

翌朝若君が退出する時に「花の香りに誘われて良いような軽い身分なら、そちらに参らない理由がありましょうか❓」(※要するに、身分が重いからそう易々とは行けないというやんわりしたお断り)とお返事を書いてお持たせになるのね。

 

若君は、子供心にも、宮の姫君が重々しく申し分のない御性質でいらっしゃるので、何とかして立派な御結婚をなさるのを見たいものだ、と常々思って居たのね。

そして、せめてこの匂宮だけでも、何とかして宮の姫君の婿君になっていただきたい、と思い続けていた所だったので、若君はこのお使いを格別嬉しく思ったのよ。

さて、匂宮からのお返事を大納言にお目にかけたわ。

大納言は「ほう。。匂宮は色恋沙汰の度が過ぎていらっしゃるのに、堅物がっておられる」などと陰口を叩いて「貴方の芳しい香りのお袖が触れれば、我が園の紅梅もさらに素晴らしい薫りがすると世間に噂が立ちましょう」と、真剣に熱意のこもったお手紙をお書きになるのよ。

匂宮はそれをご覧になって、大納言は本気でこの縁談をまとめよう。。と考えて居るのだろうか。。と思うけれども「貴方のお邸へ梅の香を求めて尋ねて行けば、色香に目の無い浮気者と人に非難されましょう。。」と、気を許さないお返事なのね。。

 

真木柱の北の方が宮中から退出なさって、宮中での出来事をあれこれ大納言に報告なさるわ。

そして話のついでに「若君が一晩宿直をして退出してきた時の匂いがたいそう芳しかったのを、東宮がいち早くお気づきになられて、若君が東宮ではなく匂宮のお側に居たのに恨み言を言われたのがおかしかったわ。貴方から匂宮にお手紙でも差し上げたのでしょうか❓」とおっしゃるのね。

大納言は、匂宮や薫中納言の香りについてのお噂をなさるわ。

 

宮の姫君は、すっかり分別ある大人なのだけれど、普通の結婚生活をする事には全く興味が無いのよ。

世間の男たちも、時の権勢におもねる心がある為か、両親の揃った姫君たちに言い寄ろうとしているのね。

だからこそ匂宮は、そういう控え目な方こそ自分にはふさわしいと考えているのよ。

そして大納言の若君をいつもお側に引きつけて、こっそり(宮の姫君に)お手紙を差し上げているのね。

 

大納言が中の姫君をぜひ。。と望みをかけていらっしゃるのを見ると、事情をご存知(匂宮が宮の姫君に気があるという事情)の北の方はお気の毒に思うのよ。

宮の姫君からは、ほんの形ばかりのお返事さえ無いので、匂宮は負けず嫌いのお心が募り、却って諦めきれないで居るのね。

北の方は、確かに匂宮はお人柄も将来の望みも十分あるお方と思われるので申し分無い。。とは思うものの、匂宮は多情なお方で通い所も多く、宇治の八の宮の姫君にも御執心なのでどうか。。。とも思って居るのよ。

 

でも北の方は、相手が宮様で畏れ多いので、時々こっそり自分の一存で、お節介にも姫君の代筆のお返事を差し上げているような始末なのよ。。。

 

今日はこれまでです。

いつも読んでいただき有難うございます。

次回は「竹河」①です。

 

今日も良い一日をお過ごしくださいね❣️

ーーーーー

(追記)

匂宮は、大納言の若君から紅梅を受け取ります。

その「紅梅」が東宮では無く、自分に送られた大納言の真意が「二の姫君」を自分に縁づけたいたいからだ。。と察知します。

しかし匂宮の関心は、蛍兵部卿の宮と真木柱の間の宮の姫君に在るのです。

同じ宮家の血筋に興味を持っているのですね。

匂宮は、やんわりと二の姫君に会う❓為に大納言家に行く事を「私はそちらに軽々しく伺う様な身分では在りません」と若君を通じて大納言に断りを入れます。

 

匂宮は、若君にこっそり宮の姫君へのお手紙を託けます。

宮の姫君は、すっかり分別のある大人ですが、普通の結婚生活をすることに全く興味がありません。

そして匂宮は、宮の姫君のそんな控え目な態度こそ「自分にふさわしい」と思うのです。

真木柱は、一の姫君が東宮に入内している事から、宮中に上がるので、匂宮の気持ちが二の姫君では無く宮の姫君に有る事を知っています。

しかし、匂宮の多情な性格や、宇治の八の宮の中の君にご執心である事も知っていたので、匂宮と宮の姫君との結婚はどうかな❓と疑問に思っています。

とはいえ、相手が匂宮という身分の高い方なので、真木柱は自分が代筆で匂宮のお手紙に返事を書いたりしているのです。

 

ここで按察使の大納言と真木柱の家の娘達のお話は終了です。

結局、二の姫君や宮の姫君がこの後どうなったのかは、記載は無いようです。