スパークス・ブラザーズ | ヤンジージャンプ・フェスティバル

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1960年代に結成されて、今でも活動を続けているバンド、スパークス。

50年以上のキャリアがありつつも、知名度はいまひとつでカルト的なバンド・・・というイメージの彼らのドキュメンタリー映画をエドガー・ライト監督が制作しているという情報を知ったのはいつのことだっただろうか。

 

それ以来、公開を楽しみにしていたこの作品。

ようやく観に行くことができたのでした!

 

 

【あらすじ】
 「ラストナイト・イン・ソーホー」「ベイビー・ドライバー」のエドガー・ライト監督が初めて手がけたドキュメンタリー映画で、謎に包まれた兄弟バンド「スパークス」の真実に迫った音楽ドキュメンタリー。ロン&ラッセル・メイル兄弟によって1960年代に結成されたスパークスは、実験精神あふれる先進的なサウンドとライブパフォーマンスでカルト的な支持を集め、時代とともに革命を起こし続けてきた。半世紀以上にもわたる活動の軌跡を貴重なアーカイブ映像で振り返るほか、彼らの等身大の姿にもカメラを向け、人気の理由をひも解いていく。さらに、ベックやレッド・ホット・チリ・ペッパーズのフリー、フランツ・フェルディナンドのアレックス・カプラノス、トッド・ラングレンなど、スパークスに影響を受けたアーティストたちが出演し、彼らの魅力を語る。

(映画.comより)

 

映画の感想を語る前に、まずは僕とスパークスとの関係を簡単に述べていきましょう。

僕と彼らとの出会いは2008年のフジロックフェスティバルでのこと。

 

それまでは、なんとなく名前は知っていたものの、ちゃんと音源を聴いたことはなかったのですが、初めて観たライブがあまりにも素晴らしくって、それ以降は音源を買い求めたり、来日が決まれば可能な限り足を運んだりで、今ではすっかり大ファン・・・といった関係。

 

とはいえ、彼らのキャリアは長く、後追いファンの自分は全てのアルバムを聴けているわけではないので、今回のドキュメンタリー作品で新たにスパークスへの理解が深まればいいなと思っていたのでしたが、この映画。まさにうってつけの映画!

 

彼らの幼少期に始まって、デビュー前夜の出来事もしっかりと。

デビューしてからは、アルバム1枚1枚それぞれがどんな経緯で創られたのか、どのような内容なのかを丁寧に紹介。

もちろん音楽の方も、MVだったりライブ映像だったりでふんだんに盛り込まれているんですが、自分の記憶している限りでは、1曲も途中でカットされた楽曲がなかったという印象。

 

通常、ミュージシャンやバンドのドキュメンタリー作品というと、曲の途中でインタビューが挿入されたり、曲の途中で次のシーンに切り替わったり・・・といったことが頻繁にあって、好きな曲が流れていたりするとそれがストレスになったりするのですが、本作品はそういうストレスは皆無!

 

これは恐らく、スパークスの音楽への愛情とリスペクトのあらわれなんじゃないかな。

そんなところにも、エドガー監督の「愛情」を感じることができたのでした。

 

愛情といえば、この作品。

とにかく全編にわたって「愛」に溢れていたような作品。

 

先述した、監督からスパークスへの「愛」

 

インタビューに答える、有名(ex.レッチリのフリー。ニューオーダーのメンバー。ベックなど。)、無名を問わないスパークスファンたちの「愛」

 

元バンドメンバーや現バンドメンバーによる、バンドへの「愛」

 

そして、スパークスの中心人物である、ロン・メイル&ラッセル・メイルの音楽やファンたちへの「愛」

 

そんな様々な愛が、スクリーンから溢れ出てきて、ちょっと涙ぐみながら笑顔になってしまうような。

そんな多幸感にあふれた作品でした!

 

というわけで、これまでスパークスファンだった人はもちろん、特に熱心に聴いてこなかったような人でも、どこかしら心に刺さる部分はあるんじゃないかなと思いますし、むしろこれまで全く知らなかった人でも楽しめるんじゃないかな・・・という、スパークス入門~上級編までOK!なドキュメンタリー。

観終わったあとには、スパークスのことをこれまで以上に好きになってしまうこと間違いなし!です。

 

 

さて、作中ではさまざまな印象的な言葉が語られるのですが、最も印象に残ったのはラスト付近。
フェスでの出演を終えたロン兄が観客に向かって、

「今日は皆さんのおかげで素晴らしいライブになりました。でも、それに驕ることなくこれからも活動していきます」

と語った言葉。

この言葉こそがスパークスという存在を表すのに相応しい言葉なんじゃないかなと思いました。

 

50年以上のキャリアを誇り、さまざまなミュージシャンやアーティストたちに影響を与えながらも、それに驕ることなく地道に、そして軽やかに活動を続け、アルバムごとに新しい音楽を追求していく彼らの姿。

僕らはそんな姿勢に感銘を受けつつ、彼らが創り出す新しい音楽との出会いにワクワクさせられ続けていくのでしょう。

 

彼らのこれまでの歩みに敬意を払いつつ、これからも見届けていこうと思わずにはいられない。

そんな素晴らしいドキュメンタリー作品でした!

(2022年4月27日 チネチッタ川崎にて鑑賞)