久々、ご無沙汰。
・・・・というか、久々すぎて、本人すらその存在を忘れかけていたほどの不定期連載企画「Oh! マイ・テルミン!(仮題)」。
6年ぶり、10回目の今回は、日本製テルミン。
「e-winds S」を紹介!
(ちなみに過去記事はこちらです→ 第9回目/ 第8回目/ 第7回目/ 第6回目
/ 第5回目 / 第4回目 / 第3回目 / 第2回目 /第1回目 )
※注意※
今回の記事はかなりの長文になります。
お時間とお気持ちに余裕のある時にお読みください。
こちらのテルミン。
かつてはSYMPATHY NERVOUSの名前でミュージシャンとしても活動していた新沼好文さんが岩手県・宮古市の「TAK・テルミン・ラボ」という工房で制作していたテルミン。
今でこそ、日本国内でテルミンを制作・販売している会社や工房も増えてきましたが、数年前までは日本で製造されているほぼ唯一のテルミンだったと言えるでしょう。
それでは、このテルミンについて詳しく紹介ー!
まず目を引くのが、宮城県の伝統工芸品の「仙台箪笥」を思わせるような、この美しい木目・・・・。
宮城県のお隣の岩手県産テルミンゆえに、このデザインになったのでしょうか(いや、多分関係ない)。
TV番組の「和風総本家」あたりで取り上げてもいいんじゃ・・・と思うほどの「和」を感じさせる美しい姿です。
本体底面はこんな感じ。
ゴム足がついているのは、テーブルなどに設置して座って演奏することもできるように配慮したから・・・とのこと。
ちなみに、他のテルミンだと、大抵本体の底にスタンドに取り付ける金具が付いているのですが、ご覧のようにe-windsには付いていません。
なので、スタンドに立てて演奏するには・・・・
このような専用のアダプタが必要になります。
さて、こちらのテルミン。
外観だけではなく、機能にも国産ならではの工夫がたくさん。
例えば、背面のコントローラー部ですが・・・
中央左側のつまみはピッチチューニングの補助調整つまみ。
アメリカ産のetherwaveなどは、日本の夏の気候に耐えられないのか、チューニングが全くできなくなることがあって、その都度、本体のフタを外して細かい調整をしてやらねばならないのですが、e-windsはこのツマミをちょいっと回してやるだけでOK!
ちなみに右下はアースを取るためのGND端子。
こういうちょっとした工夫にも職人気質を感じます。
そしてフロント側のコントローラーはこんな感じ・・・。
本体左サイドのコントローラーは、アンテナ調整用。
左の2つがピッチチューニング用で、左上が微調整(ファイン)、左下が粗調整(ラフ)。
マニュアルには「まずはファインをセンターにして、ラフでチューニング。その後、ファインで微調整」となっていますが、オレ、いつも逆にやっているや・・・・。 まぁ、無事に弾けているから良しとしましょう・・・・。
右の2つはボリュームアンテナ調整用で、こちらも右上がファイン、右下がラフになっています。
つづいて右サイドのコントローラー。
こちらの左下のスイッチは音色スイッチで、上にすると管楽器的な音色、下にすると弦楽器的な音色になります。
このスイッチと左上のツマミとで音色を設定するのですが、スイッチを下にして、ツマミを右に回しきると、チェロっぽい音色で個人的にはかなり好みの音色。
etherwaveで弦楽器っぽい音を作ろうとすると、よっぽど注意しないとトゲトゲしい音になりがちなのですが、e-windsではほどよくまろやか音色になるのが嬉しいポイント。
ちなみに音色ツマミを左に回し切ると、丸い音色(ヘテロダイン)になります。この音色でのハイトーンも弾いていて、チョー気持ちいいです!
そして右上のツマミはマスターボリュームで、右下はミュートスイッチ(下がミュート)。
マスターボリュームが付いているので、バンド形式で曲中にソロを弾きたい時などは、手元でブーストすることもできて、チョー便利です!
そんなこんな、見た目も機能も充実のe-winds Sですが、制作していた工房が東日本大震災での津波被害に遭い、製作者は避難できたものの、機材も設計図も全て消失した・・・とのことで製造ストップ。
今となっては、それまでに市場に出回っていた個体しか残っていない・・・という貴重な存在に。
かく言う自分のe-windsも、東日本大震災の時に倒れた本棚の下敷きになってアンテナがグニャリと折れ曲がり、使えない状態に・・・。
そのまま5年ほど放置していたのだけれども、2017年1月のワンマンリサイタルでどうしても使いたくなり、愛知県にある電子工房 mb-laboさんに相談してみたところ、修理していただけるとのことだったのでお願いし、無事に復活!
それ以降、クラシカルな曲だったり、etherwaveでは演奏しづらい高音域が必要な曲を演奏する時にはすっかり重宝しています。
製作者のテルミンに対する熱い想いを伝えていけるよう、これからも大切にこのテルミンを演奏していきたいと思います!