【嫌われ松子の一生】 こんな神様なら信じてもいい | エンタメ&アート系 神映画ランキング

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嫌われ松子の一生 日本 (2006) 監督:中島哲也

地味で貧乏臭い邦画の殻をぶち破る、
斬新でゴージャスな映像で狂喜乱舞させてくれた、
衝撃作『下妻物語』の路線を踏襲し、
さらに強烈に進化した中島哲也革命第2弾。

ロリータとヤンキー娘の奇妙な交流の様子を描いた明るい前作とは一転して、
親から疎まれ、男にDVを振るわれ、恋人に自殺され、
さらに次々と男に騙され続け、ソープに身を落とし、
ヒモ男を殺して、刑務所に入って、精神が破綻して、
引きこもり浮浪者のような荒んだ生活を送り、
最後はゴミのように殺されるという、
これでもかってくらい、とんでもなく悲惨で真っ暗な物語。
にもかかわらず、
色鮮やかな映像はますます仰々しくリッチ&ゴージャスになり、
さらには楽しくハイセンスなミュージカルが加わり、
もはやファンタジーなくらいポップでドリーミー。
暗黒のストーリーに華麗なエンターテイメント演出との組み合わせが、
邦画のみならず洋画を含めても他には類がない超絶映画を創出している。


あいかわらず、絵の作り込みがすごい。

ザ・ベスト・オブ・エンタメムービー 100選-1


背景のちょっとした場所にもカラフルに塗り込みを入れる。
あらゆる一つ一つのシーンで観客の目を楽しませようという
中島監督の完璧主義的エンターテイナー精神。

ザ・ベスト・オブ・エンタメムービー 100選-2

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キャンディーカラー満載のファンタジー感は、
もはやディズニーの世界。

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大人になった松子は怒涛の不幸続き。

ザ・ベスト・オブ・エンタメムービー 100選-8


最初の男は、作家を夢見る文学男。
自分は働きもせず松子に食わせてもらっているにも関わらず、
毎日殴る蹴るの暴力を振るう。
体中アザだらけになっても松子は尽くしていたが、
ある日、松子の目の前で列車に身を投げて自殺。
バラバラになった肉塊が飛び散るスプラッターグログロ場面の直後が
下のディズニー演出。
常識感覚をはるか遠くにぶっちぎった超絶な感性。

ザ・ベスト・オブ・エンタメムービー 100選-9


ストーリー、映像、演出だけでも大変なのに、
さらに驚異的なのは、ミュージカルシーンで使われる楽曲が
ことごとくありきたりではないこと。
すべての楽曲が独創的で完成度がはげしく高い。
毎週水曜日にだけ松子の元にやってくる不倫男を迎える松子の
幸せムード満点な楽曲『ハッピー・ウエンズデイ』。
休日ではなく水曜日という点、
松子が不安のかけらもないハッピーなハネムーン気分、
というのがリアルすぎてすごい。

ザ・ベスト・オブ・エンタメムービー 100選-10


男の家を訪問し、こっそり奥さんに会い、
凡庸なおばさんであることを確認し、
ますます意気揚々な松子。
「勝てる。この女なら!」

ザ・ベスト・オブ・エンタメムービー 100選-11勝てるこの女なら



妻ある男との不倫を描写する時もファンタジックなディズニーモード。
こんな映画、他にどこにあるだろうか。

ザ・ベスト・オブ・エンタメムービー 100選-12


松子はチンピラヒモ男のためにソープで体を売る。
こんなところでも、この映画は手を抜いたりゴマかしたりしない。
あんなことやこんなことも赤裸々にリアルに描きこみながらも
完璧なエンターテイメントに仕上げている。

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ヒモ男を刺殺し刑務所から帰った後は、ヤクザ男。
こういう女は何度ひどい目に会っても、
この手の男にひかれる。

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人生のすべてをかけて愛したヤクザ男にも去られて、
松子は精神をやみ、ブクブクに太り、引きこもり浮浪者状態。

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「神は愛」
見返りを求めることなく、ただひたすらに無償の愛を与える。
ヤクザは松子が自分にとって神だったと悟る。

愛以外にも神の属性はある。
神は全知全能。
神は聖なるもの。
神は正義。
いわゆる神は、特定の価値観を強制的に押し付け、
従わない者には圧倒的な暴力をもって裁きの名の殺戮を行う。

松子はバカだし、弱いし、低俗だし、決して正義でもない。
聖や正義や全知全能とは真逆の存在だ。
ただただ、ひらすらに愛を注ぐ。

しかし世界の神様がみんなそんなふうなら、
この世から争いはなくなり、真の平和になっていることだろう。

瑛太のセリフ「松子のような神様なら信じてもいいかも」は、
まさしくそのとおりだと思う。








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