【HK/変態仮面】 奇跡!あの『スパイダーマン』をも超える和製ヒーロー映画 | エンタメ&アート系 神映画ランキング

エンタメ&アート系 神映画ランキング

■ エンタメ ジャンル別神映画ランキング
 ハラハラドキドキ、感動、笑える泣ける・・ 「面白いかどうか」のエンタメ至上主義な基準。

■ アート系映画 世界の国別100選
 世界の国別アート系映画。「ひたすら映像美専科ランキング」は耽美至上主義。

【評価】 ★★★★★

HK/変態仮面
まさか、あのアメコミ映画の名作『スパイダーマン』を超えるコミックヒーロー映画が日本から誕生するなんて、一体誰が想像できただろうか!ありとあらゆる意味で完璧。奇跡としかいいようがない映画。

■ 変態の身体表現が完璧すぎて「美」の域にまで達した主役俳優


漫画やアニメの実写化では、多かれ少なかれ、生身になった主人公にオリジナルとの違和感が感じられるものだが。
ところが本作の場合、違和感がまったくない。
違和感どころか、あまりにも完璧すぎて逆にアンビリーバブルなくらいだ。
単に造形がオリジナルとそっくりとか、筋肉が隆々で凄いとかいう浅いレベルではなく、
動きや立ち振る舞いやポーズ一つ一つに、微妙な変態ニュアンスが完璧に体で表現されているのだ。
変態の姿そのものであることは間違いないにも関わらず、あまりに高度に完成された変態表現のため、
「なんかわからんが、すごく美しい、そしてかっこいい」と思わる超絶的極限の域に達している。
俳優は誰かしらんのだが、ここまでできる、その才能と努力は、感嘆に値する。

■ 華麗に連発される突き抜けた笑い

TVのお笑い芸人のよくある2つのパターン、「パンツを脱いででも笑わようとする系」の体当たりギャグと、
「言葉をやたらにこねくりまわして強引に笑わせる系」、どちらも好きじゃない。
だからあんまり漫才やお笑い番組が好きじゃない。
なんとかして、無理にでも面白いことを言って笑わそうとする気負いがとってもウザイし、
義務感に追われてもがき苦しむ心中を察してしまうと息苦しくなる。
でも本作の笑いは、楽々そういうもがきを一切感じさせないというか、
天才的な楽々感としかいいようのないもので、いちいち見事にキマっている。

・SM嬢の母がノーマルな息子に対して「まじめか、おまえ、まじめか!」と罵る場面。
・狂介の顔にある傷をみて「どうしたんですか?顔?」と心配する愛子に「生まれつきイカツイ顔なんです」と返す場面。
・ヘリコプターを止める場所がないのにヘリコプターを要求する立てこもり強盗犯に対する主人公の「バカなのかあ、くそおっ!」という場面。
・愛子を救出しに颯爽と登場した変態仮面に対しての「やだっ。あの人は、あの人で、なんか怖い」という場面。
どれも言葉で説明しても何がどう笑えるのかわからんのだが、ものすごく面白い。

主人公とマドンナ女子との間のやりとりは特に名言の宝庫だ。
・「あなたは一体誰なんですか?」
   「ふっ。通りすがりの変態ですよ。さらばだ」
・「ごめんなさい。今日はパパとママと外食する予定なの」
   「それ、ご一緒しちゃダメかな?」
 「だめよ、なんでご一緒するのよ」
   「じゃあ、それ、遠くから見てていいかな?」
 「そんなの変態じゃない」 
   「なに、言ってるんだ、僕は変態じゃないよ。
    ・・・・
    わかった、じゃあテーブルの下に隠れてるから、僕を踏んづけながら食事してよ」

■ これまで見たことのない意味不明な「真面目仮面」の芸風


本作の中でもひときわ異彩を放っているのが真面目仮面!

何系なのか分類がさっぱりわからん、これまで見たことのない芸風。
「私が、んが、この学校を、んが、正しい方向へと導いていく、
 そんな決意である、あるいは、んなるいは、んが、
 そんな心境である、そんな、んが、言葉で挨拶とさせていただきます」
あなたの着ている服の色がひじょーに派手である、
 んなるいは、トロピカルである、んなるいは、トロピカーナである、
 そんな、んが、言葉で、ええいんが、へへいいにやんが、挨拶と、させていただきます」
なんじゃこれは?なんなんだ、これは?
こういう人物のキャラクター設定なのか?しかし、どういう類の設定なんだ?
二次元の漫画では表現するのが不可能な異様さなので、オリジナル作品の設定とは関係ないはず。
そうすると、演じている俳優自身の芸風なのか?
あまりの衝撃と不可解さに、俳優の名前をみたら、佐藤二郎。
誰だ、それ?佐藤二郎をググっていろいろ調べたり、youtubeで他の作品の画像みたが、わからん。
もともと癖のある、変わった芸風の持ち主らしいが。
あの真面目仮面の他に類をみない異様な芸風は、一体どこから来たのだ?
わからん。どんだけ調べてもわからん。こんな芸風みたことない。ジャンルも系統もさっぱりわからん。

■ 『スパイダーマン』のパロディっぷりが芸術的なバカバカしさ


蜘蛛の巣の接写映像で始まるおなじみの『スパイダーマン』の冒頭部を、女性のパンティの接写で見事に代用してみせたその芸術的価値はいうまでもないが、全編のストーリー構成の骨格となっているパロディぶりがあまりに完成度が高い。
主人公がヒーローとしての存在の意味について葛藤し苦悩する姿は、本作でもモチーフになっているのだが、その苦悩の理由がさっぱりさわやかにくだらない。
悪役が心理的に主人公を追い詰めるのだが、この攻め方の方向性が脚本担当が投げやりになっているとでも言えるくらい思い切りめちゃくちゃ。
そして、葛藤を克服する時の気づき。

「俺は気づいたのだ。変態であればあるほど強いとは限らないことに」
という気づきがこのうえなく絶妙なバカバカしさ。
これだけ、半端なく理屈が通ってない筋書きにするには、血のにじむような徹底的な推敲を要したはずだ。
もしくは天才の直観力か。


■ 最大の驚嘆は、「映画制作に向けてのやる気のない姿勢」の完璧に緻密な演出

そして、最後に、本作がみせる最高の奇跡。
奇跡中の奇跡。
「映画制作に向けてのやる気のないふざけた姿勢」
最初は表現を考慮して「てぃんこ」と言葉を微妙にぼかしていたのに、途中から製作者が面倒くさくなったかように、「ちんこ」と言いっぱなしになっていく。
敵怪人との戦い(とりわけ『モーホー仮面』との戦いのシーンに着目)が、ものすごくええかげんなカット割りで、作り手の編集のずさんさを表現している。
悪役のボスが登場することごとくのシーンでの、緊張感がまるでないダラダラなセリフまわしと無気力な演技。
恥ずかしい姿で都心の街中を走り回る役者を追いかけるカメラの視点が、
「シーンに臨場感を持たせる撮り方をしよう」とかのこだわりがまったく感じられず、
むしろ、仕事であることをほっぽりだして、いたずらっ子のようにふざけて、
「ほら、こいつらこんな恥ずかしいよ。みてみて」
っていう意地悪な突き放し方を感じさせる。
「プロとして観客を楽しませる娯楽作品を完成させたいという情熱はなく、制作陣本人たちが楽しむことを目的に遊びながら作ってる」という見せ方が、あまりにも完璧な演出なのだ。
これが、本作を他の傑作と一線を画して唯一無二の特別な作品としている、最大の奇跡だろう。

というわけで、あまりに奇跡的な完成度で、世の中からも絶賛を集めた本作だが。
どんなに評判が高くても、これをハリウッドでリメイクされることは無いだろう。
なぜなら本作の完璧さを超えることは100万%あり得ないから。