東京は六本木。
新国立美術館での特別展「ミュシャ展」。
今日ご紹介の絵は
スラヴ叙事詩20作品の中の4番目です。
「ブルガリア皇帝シメオン1世」
<スラヴ文学の明けの明星>
405×480㎝
テンペラ 油彩 カンヴァス
描かれている時代:9世紀末~10世紀初頭
舞台となった場所:プレスラフ(現ブルガリア)
アーチ状のドームの下にいるのはブルガリア皇帝シメオン1世です。
昨日のスラヴ叙事詩③で書きましたが
中欧に誕生したスラヴのモラヴィア国家の王、ロスティスラフは
自国宗教の為に
ビザンティン帝国から宣教師を派遣してもらいました。
やってきたのはキュリロスとメトディオスの宣教師の兄弟です。
彼らはスラヴ言語を表記する初めての文字である
グラゴル文字を案出し聖書を翻訳するという大偉業を果たしました。
ところがメトディオスの死後、
ローマ教皇はスラヴの言葉をラテン語に戻したく、
メトディオスの弟子たちを追放します。
追放された弟子たちが向かった先がブルガリアとロシアでした。
今日ご紹介のスラヴ叙事詩の4作品目には
ブルガリア皇帝の元に
追放された学者や宗教者や僧侶や芸術家などが集い、
王の語る言葉に耳を傾けている場面です。
一気にブルガリアに叡智が集まり
ブルガリア・ルネサンスとも言うべき時代が到来しました。
名君の誉れ高きシメオンの言葉を書き取る書記の姿。
大量の皮革紙や分厚い書物が皇帝の関心と教養と愛を示しています。
皇帝が天を指しています。
誇り高きスラヴ人の未来は天もお守り下さると
そんな思いも込められているのかもしれません。
実はこの4番目の作品は
主題の年代においては4番目に相当しますが
実際に描かれたのは12~15番目に制作された作品です。
スラヴ叙事詩は
大きな大きな歴史絵画です。
ただ観て、大きさに感動する事でも充分ですが
歴史を知り、そしてミュシャが仕掛けてある様々なモチーフを知る事により
鑑賞の醍醐味が広がります。
一点一点の作品の持ち味と歴史をブログでお伝えするには限界がありますが
ブログをお読み下さっていらっしゃる皆様が
スラヴ叙事詩の壮大な素晴らしさを
ブログから少しでも感じて下されば
私は心から心から嬉しく思います。
明日は5番目の作品をお伝えします。
「ミュシャ展」
スラヴ叙事詩の解説鑑賞付き個人セッション
http://ameblo.jp/peroko-0221/entry-12255783660.html
2017年6月5日迄
ライフメソッドアドバイザー 山下純子