「クリーピー 偽りの隣人」 | PEROの映画狂人日記

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町山智浩様を神と崇め、ライムスター宇多丸先生を師とするサブカル重症腐女子がヒマつぶしで見ていた映画の数が年に200本を超えて来たので、
これだけ見てるゾという自慢と自己顕示欲を満足させる為だけの映画日記ですがよかったら暇つぶしに。




いままで読んだ本で一番怖くて、読み終わった後にその本がウチにあるのも嫌だったので、小説家志望の友達に勉強になるからと無理矢理あげてしまった、豊田正義の実録犯罪ルポ、「消された一家~北九州・連続監禁殺人事件」を元にした映画で黒沢清監督作だと言うので、この暑さもスッと涼しくなると思い見に行った。

犯罪心理学者の高倉(西島秀俊)とその妻康子(竹内結子)は引っ越しした先で隣に住む西野一家を知り合う。西野家の父親(香川照之)のおかしな言動に振り回されながらも西野の娘、雫(藤野涼子)共々近所付き合いをする2人だったが…

真面目なサイコスリラーだと思って最初は見ていたけれど、途中ホラーになって、最後はコメディで終わった。

いろいろな所で絶賛されているライティング、カメラワーク、西野家の地下室の造形、モブの動きは神経に障る感じで最高だけど…
ホラーコメディだからリアリティラインが薄くてもいいのか。それとも、日本ミステリー文学大賞新人賞を受賞した原作が悪いのか?

まず、犯罪心理学者の主人公が超能力があるのかってくらい目を見ただけで、人の心が分かり過ぎる。
西野の人物造形が最初から不審者過ぎて、お隣さんになっても全然仲良くなれる気がしない。(北九州一家監禁殺人事件の犯人は、人当たりが良く話も面白く人を惹きつける人物だったらしい。ま、でなけりゃ家族の中になんて入っていけないよね。)
そんな男に康子はいつ心を許したのか謎。
出て来る警察官が捜査1課の癖にバカ。単独行動し過ぎで、結局自業自得の結果に。
そんな中、西野の娘の雫は淡々とそこに存在していて良かった。
そして高倉家の愛犬のマックスがいつ殺されちゃうのかと一番ヒヤヒヤさせられた。

私はマンソンファミリー、オウム心理教、連合赤軍など集団で暴走してしまう人の心理というものに興味がある。
一人のカリスマが出てくることで、人がそこに尊敬や恐れで追従しついには暴力に手を出すまでいく。そこがもっと嫌な感じで描かれていて欲しかった。
人を洗脳するのに薬物は効果的だろうけども、高価で西野家の生活では割に合わない。それよりも「消された一家~」の犯人がやっていた眠らせない、食事制限、排便制限、意に沿わなかった時の厳罰という名の拷問を加える事で相手を洗脳していく様を嫌な感じで見たかった。

西野はサイコではあるけれど、



知能派で「羊たちの沈黙」のレクター博士(ドラマ版のマッツ・ミケルセン大好き)のモデルになったテッド・バンディや





衝動派で「悪魔のいけにえ」のレザーフェイスや「サイコ」の犯人のモデルになったエド・ゲインのような、自ら手を下す事に快楽を覚えるハンター型のシリアルキラーでは無く人に殺しをやらせるパラサイト型の男。

ハンター型のシリアルキラーの映画はたくさんあるので、パラサイト型の西野が蜘蛛が網を張って他の虫を取るように、どうやって人を取り込んでいくのかを見れると期待していったので期待はずれだったのかもしれない…

これを書いていてわかったけれど「消された一家~北九州・連続監禁殺人事件」の本インパクトにこの映画では勝てなかったという事だと思う。
母親が年老いた両親を殺し、兄妹を殺し、子供達が殺し合う。死体の始末も自分たちでしていたがそれが狭いアパートの一室でされていた地獄が匂い立つような文章だった。何度も言うけれど本当に怖かった。
題材にしていると聞くとどうしても比べてしまう…




ツッコミ所は満載だけど、演出は流石の黒沢節なので黒沢清好きにオススメの一本。


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