ヘビはまだ窓から外を見ている。
「しばらく居てもいいかな。」
「まあ、いいですねど。でも、もう猫はいませんよ。」
「あの猫しつこいからなあ。」
追っかけられるのは今日が初めてではないようだ。
「ところで太郎さんは人間の時、何してたのですか?」ヘビに太郎って犬みたいだな。
「製薬会社の営業課長、いわゆるMR(Medical Representative)ってやつの上司。」
製薬会社の営業課長。うちの課長と同じくらいの年で死んだということか。
「へ~、何という偶然。俺、MRしてるんですが。」
「え、お前MRなの? 売れそうもない顔だな。営業成績よくないだろ?」
人に命を助けてもらってよくそんな事が言えるな。当たっているだけに反論できないが、少し頭にきた。
「顔見ただけで、わかるんですか! 第一、僕はあなたの命の恩人なのですよ!」
「あっ忘れてた。すまない、すまない。その節は大変お世話になりました。」ヘビはお辞儀をした。
その節はって、今さっきだろ。
「お礼に、お前の相談役になってやろう。」
「いいですよ。気持ちだけありがたく受け取っておきます。」
「遠慮するなよ。ヘビは神の使いだぞ。ありがたく思え。それに俺はもう決めたんだ。ここは安全だし。」
勝手に決めんな。神の使いのヘビって白ヘビじゃなかったっけ? だいたい何で僕がヘビに相談にのってもらわなきゃいけないんだ。
「何の相談にのってくれるのですか?」と、取り合えず聞いてみた。
「何でもこいだよ。お前モテそうにないから恋愛から、営業スキルまで。」
モテそうにない!悔しいけど当たっている。けど、メタボで死ぬようなやつだから、きっとボテっと腹が出てて頭も禿げていたに違いない。何でそんなやつにこんなこと言われなきゃいけないんだ。
「そうと決まったら、まず腹ごしらえだな。おっ、ビッグマックじゃねーか! 懐かしいなあ」
そうと決まったら? 僕は何も決めてないぞ!



