London Opera-loving Kimono-girl (着物でオペラ in ロンドン)
<12 February Sun>

今夜はROHで恒例のBritish Academy Film Awards授賞式。いつかレッド・カーペットをパレードする映画スターを見学に行きたいと毎年思ってるんだけど、今年は寒過ぎるので、家でぬくぬくしてました。しかし、2月にロサンゼルスの真似しようとするから、イブニングドレスの女優さんたちは可哀相だこと。しばらくドアが壊れてたROHのトイレも修理して、メリル・ストリープが入ってきても呆れることなく済んでよかったトイレ


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London Opera-loving Kimono-girl (着物でオペラ in ロンドン)


モーツァルト/ダポンテ3部作もたけなわとなり、最後のフィガロの結婚も昨日はじまりましたが、まずは1月30日

と2月10日に2度行ったCosi Fan Tutteの感想を。(2月10日の代役ドラマについては既に済んでます→こちら


その前に、まず、どんなオペラなの?と仰る方に以前の記事を繰り返しますと、


クリップ1790年初演のモーツァルトのオペラ、「女は皆こんなもの」という意味ですが、テーマが浮気ラブラブなので、「女はみんな浮気者」ということで、女性を馬鹿にしたセクハラオペラとも思われて、長い間あまり人気がなかったようですが、上手な歌手が4人(できれば6人)揃えば、流れるようなアリアと重唱が次から次へと出て来て、歌合戦のような楽しみ方ができる、構成的にも音楽的にも優れたオペラです。

筋書きは軽薄でアホらしく、

ナポリの裕福な二人の姉妹にはそれぞれ士官の許婚がおりましたとさ。この二人の男、友人の老哲学者に「なあお若いの、女なんてものは皆浮気者なんじゃよ」と言われて「いやいや、僕達のフィアンセだけは貞節だよ~!」「未熟じゃのう、それじゃあ賭けてみるかのがま口財布」「勿論OK。なんでもするさ。賭け金丸儲け!」。


ということで、哲学者の作戦通り、自分たちは戦争に行って留守ということにして、アルバニア人に変装し、自分のフィアンセではない方をあの手この手で徹底的に口説くことに恋の矢。(どちらをお相手にするかはどちらかと言えば女性側の選択で、皮肉なことに自分のフィアンセでない方を選ぶわけです。ちがうタイプの男と遊んでみたいというのは自然のなりゆきでしょうか?) 


さらに援軍として哲学者は姉妹の女中を買収して、「お嬢様方、彼らがいない間に他の男と楽しく遊びましょうよ!」とけしかけてもらい、最初は「ワタクシたちは婚約の身ですから、他の殿方なんてとんでもありませんことよ」と突っぱねていたものの、「付き合ってくれないなら僕たち毒飲んで死んじゃうから」というドラスチックな迫り方に「死んじゃうならその前にちょっとだけ優しくしてあげるのが人間として当然かしら?」などど思い始め、お金のためならなんでもする女中にホイホイ乗せられて、まず軽いノリの妹があっさり陥落ダウン

お堅い姉は、頭ではいけないわいけないわと抵抗するものの、こういうタイプの方が本気になると真剣で、僅か一日で二組とも結婚式まで挙げてしまいます。

そうなると、可哀相なのはコケにされた男たち。当然友情にもヒビが入り、軽い気持ちで乗った賭けが大シリアスな問題に。


救いは、さすがに経験豊かな老哲学者、「そうじゃろ、やっぱり浮気者だったじゃろ? そんな尻軽女たちとはとっとと別れなさい」とは言わず、「それでこそ人間らしいってもんじゃよ。許してやりなされ。結婚もするがよい。」と言うところ。


正体を知って姉妹は謝るのですが、それで最後どうなるかというと、これが上手くできていて、元のサヤに収まってもいいし、或いはこれでパアにもなれるように歌詞ができているので、それは演出次第。最近のは駄目になることを示唆している演出の方が多いらしいですが、浮気をした相手を許すかどうか、人間としての本質的な面までみせてくれる、オペラには珍しいくらいの深みのある内容とも言えるほどで、さすがモーツァルトクリップ


London Opera-loving Kimono-girl (着物でオペラ in ロンドン)
Composer Wolfgang Amadeus Mozart
Original Director Jonathan Miller
Revival Director Harry Fehr
Set designs Jonathan Miller/Tim Blazdell/Andrew Jameson/Colin Maxwell/Catherine Smith/

Anthony Waterman
Lighting design Jonathan Miller/John Charlton


Conductor Colin Davis
Ferrando Charles Castronovo
Guglielmo Nikolay Borchev
Don Alfonso Thomas Allen
Fiordiligi Malin Byström
Dorabella Michèle Losier
Despina Rosemary Joshua
   

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モーツァルトのオペラの中では私が一番好きな作品なのに2回しか行かなかった理由は歌手の顔ぶれで、ウヘッ、又トーマス・アレンか(何度この役で出れば本人も飽きるんだろ)、テノールは何度も聴いてるけど上手だと思ったことがないチャールズ・カストロノーヴォ・・・。姉妹役の二人もバリトンも聞いたことのない名前だし、トーマス・アレンのROH出演40年周年の記念オペラということで彼を引き立たせるためにしょぼい歌手ばかり集めたのか? 真っ白で何もないモダンな設定のジョナサン・ミラーにしては一番つまらないプロダクションなのにも拘わらず、この5年間で4度目というやり過ぎ感もあったし。


姉妹二人に関しては、去年10月のファウストで登場した時に素晴らしかったので、しまった、もっと買っておけばよかった、と後悔したけど、私の好きな舞台近くの安い席はもちろんとっくに売り切れてたので諦めました。案の定切符は売れ残りまくり、オーケストラ・ストール75ポンドとか65ポンドとかのオファーも散々出ましたが、老後のおこづかいのために節約してる私には手が出なかったし、たとえ清水の舞台から飛び降りたくても予定が詰まってて無理でした。バレエにまで手を伸ばすのはやめようと思うのはこんな時ですむっ


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フィオディリージ
(お堅い姉)ソプラノ ★★★★★

難しいアリアがたくさんあって一番大変なのはこの役ですが、いやあ、長身金髪美人のスェーデン人のマリーン・バイストロムは本当にゴージャスで美しいキラキラ 太く重い声で、普通なら私のあまり好きなタイプではない筈だけど、リッチなダーク・チョコレートのような艶っぽさと、くぐもらずに元気に前に出て声量も立派で迫力があるので、すっかり気に入ってしまいました。超低音が弱いけど、そこが難しいこの役で凄く上手にできるソプラノは滅多にいないわけだから、全然オッケー。


去年10月のファウストでゲオルギューとダブルキャストだったときにはじめて聴いたけど(→こちら )、その時よりも今回は主役の風格も出て、コメディ演技も上手だし、ファッションモデルにでもなれそうな顔とプロポーションなので何を着てもサマになるし(女性の衣装だけはその度に変るので楽しみ)、この美貌と歌唱力、しかも声も艶っぽくてユニークだし、もっと売り出してオペラ界のために人気スターになって欲しいです。


ドラベッラ(尻軽の妹) メゾ・ソプラノ ★★★★☆

おきゃんになれる役なのに、ミシェル・ロシエの演技は少々控え目過ぎたのが残念だったけど、声量のあるよく通る、メゾ・ソプラノにしては軽い澄んだ声が素晴らしく、バイストロムとの二重唱も相性良いし、ずっと聞惚れっぱなし。ファウストのシーベル役で上手な男役だった彼女がどういう女役に変身するか楽しみにしてたんですが、マリーンほど美人じゃないけど充分綺麗で素敵。


デスピーナ(姉妹の女中)ソプラノ ★★★★★

ローズマリー・ジョシュアは、歌手としては下り坂になる年齢だろうに、よく通るピュアな声がますます冴えて、今イギリス人ソプラノとしては頂点に立ってる人ではないかしら。たしか、しばらく病気で休んでいた筈ですが、立派に復活してくれて本当に良かったです。姉妹に比べると小柄でほっそりした容姿で、これまでのデスピーナの中では一番素敵な衣装と思うグレーのスーツと赤いハイヒールがとても素敵。


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というわけで、女性3人は皆さん期待通りの素晴らしさでしたがクラッカー、男性はと言うと、

フェルランド
(妹のフィアンセ) テノール ★★★☆☆

ROHの道楽者のなりゆき、椿姫、2年前のコジで聴いたけど、上手だと思ったことがないアメリカ人のチャールズ・カステルノーヴォが一番期待が低く(アレンは別格として)、椿姫の時に蔓延しててグリゴーロもヤホも倒れたウィルスに感染してくれないかしらと祈っていたんですが、これがなんと意外に良くて、聞惚れるほどではないに
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しろ、テクニックはなかなかで声もよく出て、足を引っ張ることなく立派に勤めたと思います。いつのまにか上達したんでしょうか? でも、バリトンっぽい太めで重い声は私の好みではないので、次回は他のテノールにして下さいね。先回のブレスリク君があまりに良かったので、どうしても比べてしまったのも不満の種でした。

グリエルモ
(姉のフィアンセ) バリトン ★★★★☆

若いロシア人(ですよね?)ニコライ・ボルケフ彼が今回の嬉しい驚きで、個性はないけれど端正で抑揚に富んだ軽めの声と、すっきりしたルックスがなかなか良くて、彼のソロ出番が楽しみでした(バリトンには惹かれない私には珍しいこと)。女性の衣装が時代にマッチしてファッショナブルなのに引きかえ、男性二人の変装衣装は毎回同じで時代錯誤のヒッピー風なので折角の好青年も台無しなのが残念。男性も時代にマッチしたセレブという設定にすればいいのに、といつも思います。サッカー選手とか宇宙飛行士とかさ。



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ドン・アルフォンソ (中年哲学者) バリトン ★★★☆☆

私がいくら「ええ加減に他の人にバトンタッチしたらどうなんだよ」、と怒っても、この役はROHではサー・トーマス・アレンの独壇場で、ペンション代わりに出て頂くのは仕方ないですね。67歳のアレン爺ちゃんは、声の衰えは明らかだけど(私は彼の最盛期に聴いたことがないですが)、ばりっとしたスーツ(プレミエの時はアルマーニということで話題になった)も似合うダンディな初老のイギリス紳士で、洒脱で洗練されたドン・アルフォンソはこのプロダクションの演技面での要でもあり、間の取りかた方や身のこなしはさすがの貫禄と余裕で素晴らしいアレン爺ちゃんに、過去の業績と英国オペラ界への貢献に感謝しつつ、40年を祝して拍手を送りましょうクラッカー祝日


10日は倒れて降板しましたが、明日(13日)の最終日は一応まだ出る予定になってるんですが、折角ROHがお祝いイベントを用意してくれたんだから(もしかしたら、3部作をやろうという発想はアレン爺ちゃんのためかもしれないし)、元気で最後に華を飾れるといいですね。そしたら、もう思い残すことはないでしょうから、後進の指導とかに専念しましょうね。

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指揮者
 ★★★☆☆

カーテンコールに写真がないのは、サー・コリン・デーヴィス大爺さんが舞台に駆け上っていけなかったからで、指揮台に指揮中からカーテンコールの最後までずっと座ったままでした。去年の魔笛で指揮台を踏み外して頭を打ってしばらく倒れてこともありましたしね(私は目撃したのですが、ご臨終かとひやっとしましたガーン)。


80台半ばのコリン老人は演奏中もずっと座ったままで腕だけちょっと動かしてるだけ。オケがよく見える席の私にとっては指揮者のアクションもオペラの楽しみの一つなんですが、軽やかで明るいコジには全く似つかわしくないコリン老人は見ないようにしてました。いつものようにおおらかなテンポでまったりし過ぎだし。

9月に85歳の誕生日祝いコンサートがバービカンであるのですが(→こちら )、私も行きますので、それまでは元気にお過ごし下さいね。そして、アレン爺ちゃん同様、そろそろ後輩に機会を与えてあげませんか?

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