大変遅くなりましたが、ロイヤルオペラハウスのDon Giovanniです。


9月12日のAチーム、9月27日と10月2日のBチームと3回行った感想から、役柄別に勝ち負けを決めます。


判断の基準は私の好みだけですが、知名度から行くとAチームが優勢で切符の売れ行きも最初はかなり差がついてましたが、Bチームが健闘し、結論から先に言うと、全体としてはBチームの勝ち


Composer Wolfgang Amadeus Mozart
Director Francesca Zambello
Designs Maria Björnson


          Aチーム(     Bチーム(
Conductor Charles Mackerras Antonio Pappano
わんわんDon Giovanni Simon Keenlyside Mariusz Kwiecien
にゃーDonna Anna Marina Poplavskaya Pacticia Ciofi
うり坊Don Ottavio Ramón Vargas Ian Bostridge
ウサギDonna Elvira Joyce DiDonato Emma Bell
ペンギンLeporello Kyle Ketelsen Alex Esposito
ブタMasetto Robert Gleadow  Levente Molnár
ヒヨコZerlina Miah Persson Rebecca Evans
オバケCommendatore Eric Halfvarson Eric Halfvarson

Aチーム


                        Bチーム


登場人物ってどんな人たちなの?と仰る方は→こちら をご覧下さい。


わんわんドン・ジョヴァンニ(女たらし貴族)

マリウス・キーチェン(B)の勝ち、 サイモン・キーンリーサイド(A)の負け 


えっ!、今一番のドン・ジョヴァンニの一人と言われてるサイモンが新人のキーチェンに負けるの? 


はい、私自身も大びっくりの番狂わせ。12日のサイモンは元気がなくて動きがほどんとなく、体調悪かったにちがいないのですが(10日は本当にひどかったらしいです。その後回復したとのことですが)、もしサイモンが絶好調でも私はキーチェンに軍配を上げるでしょう。

一定の歌唱レベルに達していればという前提ですが、ドン・ジョヴァンニは歌より芝居で良し悪し好き嫌いが決まるわけで、私はキーチェン・ジョヴァンニの魔力に取り付かれてしまったんです。極めつけのワル


今まで印象に残っているROHのドン・ジョヴァンニとしては(詳しくはこちら→比較 )、若くて自分が悪い奴だとい自覚のないアーウィン・シュロット、クールで陰湿で悩んでいそうな複雑なサイモンに比べると、キーチェンは悪人であることを楽しんでいる残忍マゾ男。殺すつもりはなかったとは言え瀕死の騎士長をせせら笑いながら抱きしめんばかりの場面からそれはっきり表され、後はためらいもなく傲慢な悪人に徹するキーチェン。これは充分な魅力がないとできないわけですが、ヴァル・キルマーを整ったハンサムにしたようなキーチェンは、常にキビキビと動き回り精悍そのもの


そして、どうしてもカラダ比べになってしまうROHのドン・ジョヴァンニですが、この点でもキーチェンの若くて引き締まったボディの勝ち(サイモンは今は結婚して子供も産まれて幸せ太りなんです)。

そしてやっぱり一番大事な歌唱面でも、不調だったサイモンよりも、張りがあってアクションに見合うメリハリたっぷりのキーチェンのクリアな美声の方がずっと素晴らしく、Bチーム勝利の牽引車はタイトルロールの彼でした。


キーチェンは3年前に一度だけROHのラ・ボエームのマルチェロ役で聴いたことがあり、その時は品よく無難にこなしただけで個性もなくどうってことなかったけど、こんなに凄いドン・ジョバンニができる人だったんだ。びっくり。新人だなんて言っては失礼な程もう世界中活躍中の彼、なんでもできるのでしょうが、悪役路線でいって欲しいというのが私の切なる願い。


   

      マリウス・キーチェン           サイモン・キーリンサイド 

  (あ、カツラが違う! ガウンの長さも違う? ブルマーは共用かな)

                      

ペンギンレポレロ (ドン・ジョバンニの家来)

アレックス・エスポジット(B)の勝ち  カイル・ケテルセン(A)の負け


ドン・ジョヴァンニ同様、Aチームのケテルセンが断然格上だし、彼は文句のつけようのない芸達者ぶりでした。だけど、Bチームのエスポジットのお茶目ぶりがすっかり気に入ってしまいました。


サイモン/ケテルセン組は姿も声も似てるお友達風でドン・ジョヴァンニはレポレロに一目置いてる感じだったのに対し、傲慢キーチェンは童顔で小柄な召使レポレロを虫けらのように扱うのでよけい同情を集めるし、虐げられてもひょうきんで明るいレポレロはとても印象的。エスポジットのやり過ぎとも思える百面相とコミカル演技とドン・ジョヴァンニの残忍なダークの組み合わせも見事。


エスポジット、聴いたことある名前だけど、でも初めて見る人だわと思ったのですが、後になってトビー君のチェネレントラ の家庭教師役だったとわかりました。その時は抑えた演技と歌でなんてつまんない奴だと思ったのにこの変りよう。びっくり。
  

         お茶目小僧エスポジット            分別大人ケテルセン                                 

ウサギドンナ・エルヴィラ (ドン・ジョバンニに振られて怒る女)

ジョイス・ディドナート(A)の勝ち  エマ・ベル(B)の負け


ドン・ジョヴァンニに弄ばれて捨てられて湯気出して怒ってるお譲様は、世界中で大活躍のディドナートと英国の中堅どころのエマ・ベルの一騎打ちですが、どちらも素晴らしかったです。


こないだのイドメネオ の捨て台詞アリアで拍手喝采を浴びたベル吠えるソプラノとしては天下一品なので、この役はまさにぴったり。大柄美人で舞台映えもするし、まだドン・ジョヴァンニを愛しててメロメロになる女心もサマになってBチームの女性陣の中では一番の声量と迫力。この役とイドメネオを引っさげて世界のオペラハウスで頑張って欲しいものです。


だけど荒っぽくて一本調子なところがディドナートには敵わない理由かも。もっとも今をときめくディトナーとに勝てる人はいないでしょうが。まったく、ディドナートの全く乱れない見事なコントロールに感服です。今までのROHのエルヴィラではダントツぴかで、有名歌手が何人かいるAチームの中でも(サイモンが不調だったので)彼女だけ格ちがいなのが明らか。でも、負けたエマ・ベルにも拍手を送ります。


    

    世界のディドナート          イギリスのベル     二人ともよかったです


にゃードンナ・アンナ(ドン・ジョバンニに父親を殺されて怒る女性)

パトリツィア・チオフィー(B)の勝ち  マリアナ・ポプラフスカヤ(A)の負け


これはもう雲泥の差ポプラフスカヤの調子は10日はアナウンスされた程ひどかったそうですが、この日はほぼ絶好調に戻ってました。それでも相変わらず高音はお粗末だしくぐもった声は不快。おまけに聞き飽きてうんざり。私だけじゃなくて、回りも彼女の声は好きじゃないと言う人ばかりだし、いい加減に彼女を起用するのはやめて欲しいものです。


ポプラフスカヤには誰だって勝てるのですが、今回はBチームでは知名度の一番高いチオフィーですから、余裕の楽勝。とは言っても、実はチオフィーの甘く優しい声はさすがと思うときもあったけどBチーム回目の途中で声がかすれ出して、すぐに買い振るしたものに、絶好調ではなかったし、大きなオペラハウスで出番の多い役だとスタミナに問題がありそうです。疲れ知らずの強靭な喉のディドナートやベルが羨ましいチオフィーかも。


 

     チオフィー                   ポプラフスカヤ    ドレスは素敵なんだけどね~


うり坊ドン・オッタヴィオ(ドンナ・アンナの婚約者)

イアン・ボストリッジ(B)の勝ち、ラモン・ヴァルガス(A)の負け


これは全く好みの問題で、ヴァルガスの甘い声がいいわ、と仰る方のほうが多いかもしれません。たしかにヴァルガスは、今まで数年間のROH出演の中では一番よくて、さすがにあちこちで主役を張ってるトップ・テノールの一人です。でも私は彼のふんわりふにゃふにゃ声より、イアン博士の芯のある(クセもあるが)透き通った声のほうが断然好きだし、イアン博士はとても好調で、以前この役で聴いたときには、あのアホなオッタヴィオに哲学的な意義でも与えようとするが如く青筋立ててあまりに真摯に演じて滑稽ですらあったけど、今回も同じでも私のほうが見慣れたせいか、このイアン・オッタヴィオ博士が素敵に見えました。


ヴァルガスはこんな脇役で出てくれただけでも感謝ですが、大した演技はせず、美しいアリアを聴かせるのが僕の役目と、正しいアプローチで、当然の拍手喝采受けてました。

 こんなに体型がちがっては、同じ衣装を手直しだけで着回すのは不可能でしょう。で、よく見るとちがうじゃん。


ヒヨコツェルリーナ(ドン・ジョバンニがモノにしようと狙う村娘)

ミア・ぺルソン(A)の勝ち、レベッカ・エヴァンス(B)の負け


エヴァンスは、ちょっと前は小柄で愛らしくて鈴のような声が魅力だったけど、今やデブになるつつ声を太くなっておばさん化が著しいので、この役はもう辞めたほうがいいでしょうし、高声はいつも苦しそうだけ中音低音はリッチで良いので、メゾに転向したら?


ミシェル・ファイファー似の金髪美人ぺルソンは、田舎娘にしてはおすましお嬢様だけど(だからフィガロの結婚の女中役も合わない)、細い声と体がチャーミングで、今回のマゼットとは美しいカップルだったのでさらに得をして勝ちが決まり。



ブタマゼット(ツェルリーナの婚約者の農夫)

ロバート・グリアドウ(A)の勝ち、Lモルナー(B)の負け (ほぼ引き分け)


グリアドウはかつてROH若手育成プログラムのメンバーでロンドンではお馴染みだけど、ほんのちょい役でしか出たことがなく、まともに聴くのはこれが初めて。へーっ、彼ってこんなにハンサムで上手だったんだ、とびっくり。これならあの時もっと利用すればよかったのに。それともROHを卒業してから上達したのか?今はどこでどうしているやらですが、一人前になったグリアドウ、いつでもまたこの古巣に帰ってきてね。


モルナーはBチームの当初レポレロのキャンセルによる玉突き人事で抜擢された若いハンガリー人。ブリン・ターフェルの弟のような容貌と声の彼、去年のカーディフ・コンテストで誉められた人だとすぐわかりました。もっさい田舎の兄ちゃんにルックスも声もぴったりだし、スケールの大きさで将来有望。

  

     都会的過ぎる美男美女              こちらの方が農夫夫婦には向いてる

ふたご座騎士長

エリック・ハーフヴァーソンは最近やたらとROHによく出るのでちょっと聞き飽きたし、かつての低音の底力は段々なくなってきたような気はしますが、あのロバート・ロイドおじさんを押しのけてくれるのなら大歓迎。


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