こないだ随分遅れてアップした「道楽者のなりゆき」が備忘録なら、6月25日に観て今頃アップするこのタンホイザーは回顧録と言うべきか・・・観てすぐ書ければいいのですが、なんやかんやで無理なのが悲しいです。


しかし、今更ナンですが、生で観たオペラは全部書くことにしているし、実は写真だけは随分前から準備してあったので、誰も読んでくれなくても最低限のアップをしておきましょう。なんだかやり残した夏休みの宿題みたいでずっと気にかかっていたんです。なんて思ったら、子供の時2学期が始まる直前にキャーっと焦りまくっていた惨めな思い出が蘇ってきた。人間、いくつになっても変らないものですね~


などど余計なことを言ってないで、ほれほれ、ワーグナー、ワーグナー。


はい。


このタンホイザーで、私、ワーグナーの生オペラを全部観たことになります。やったねクラッカー 


しかも、それがこのオペラが初演されたドレスデンのセンパーオーパーだったのは凄い。つうか、ROHのレパートリーにはタンホイザーは今のところ無いようなので、遠征しなくてはいつまでも制覇はできませんでした。


私は特にワグナー・ファンではないので、どっかから切符が降ってこない限りバイロイトに行く機会はないだろうし、狭い意味でのワグネリアン(ワグナーしか聴かない人)には絶対ならないのですが、それでも一応全部生で観た、というのはちょっとした達成感です。


さて、初演した記念すべきドレスデンで観たのですが、ここで1845年に初演したものとは実は少しちがうバージョンでした。いくつかあってややこしいのですが、「いわゆるパリ版」(パリではなくウィーンだったようですが)といやつを少し変えたものらしいです。どの版も観たことのない私にはちがいはもちろんわからないのですが、有名な場面はどれもそのままでしょうから、あまり気にしないことにしましょう。


このプロダクション、去年の秋に日本引越し公演もあったので、ご覧になった方もいらっしゃるでしょう。


メモあらすじ


詳しいあらすじはこちら→ウィキペディア で読んで頂くことにして、


要するに、いい加減に抜粋すると、


中世の騎士で吟遊詩人のタンホイザーは、仕事も恋人も放ったらかして、フーゾクのオネーチャンのところに入り浸ってたんですが、それにも飽きて望郷の念に駆られ、今まで尽くしてくれたオネーチャンを傷つけて、おめおめと戻って行くんです。


幸い、長い間行方不明になっていた彼を、かつての仲間も恋人エリザベートも喜んで受け入れてくれたのに、このアホは、シンガー・ソング・ライターとして、「愛」がテーマの歌合戦で、「精神的で崇高な愛なんてクソ食らえってんだ。快楽こそが愛の本質に決まってるじゃねえか」、と歌ったもんだから、今までの放蕩ぶりがばれてしまって大ヒンシュク。

後悔するタンホイザーは、エリザベートの叔父である領主に「ローマ法王に謝罪して許してもらうように」と言われて、遠路ローマへ。


でも、当然というか、法王に「あかん、赦せん」と言われて、「しゃーない、又オネーチャンのとこに行くしかないべ~」と自暴自棄となったタンホイザーの前に(夢で)現われるフーゾクのオネエチャン。だけど、恋人の名前を呼ぶと夢から覚め、オネエチャンの姿も消える。そこへエリザベートの亡骸を運ぶ葬列が近づき、タンホイザーは棺の上に倒れて息絶える・・・


という、肉体的快楽と精神的な愛のせめぎ合いがテーマで、ワグナーの崇高さとセクシーさが充分味わえ、「あ、これ知ってる~」という有名な曲もいくつか出てきて、ワグナーの中でも人気のある作品であるのも頷けます。



家舞台と衣装ジーンズ


このドレスデンの1997年のペーター・コンヴィチュニーの演出は物議を醸し出したようで、その理由は写真でおわかりでしょう。荘厳さの欠片もないですもんね。

私はこういう「なんじゃ~、これ」というのが結構好きなので、とても楽しめましたが、設定通りにやったらこうなるんだろうな、という作業が必要なわけで、ちょっと疲れます。


つまり、右の絵(ラファエル前派のジョン・コリアJohn Collierの1901年の作品)のようなのを、↓このフーゾクのオネエチャンたちから想像しなくちゃならないんです。


体をグリーンに塗って、マージ・シンプソ(TV漫画の)ンのようなっこんもり髪型のオネエチャンたちがタンホイザー人形を弄ぶ場面はすごく面白かったですけどね。

それも最初はちっちゃい人形なのが、次々と大きくなっていって、最後は等身大のタンちゃん人形になり、首がちょん切られるんです。


吟遊詩人の歌合戦場面の聴衆もカラフルな三角ハットでまるでガキンチョのお誕生日パーティ。これでこの場面に必要な深刻な緊張感を感じろと言われてもねえ・・・


タンホイザーは始終パジャマ姿だし、騎士軍団が背広姿にお鍋を被っている程度の崩し方は慣れてるのでどうってことないですが。






音譜パフォーマンス音譜


これはもう、前日のリゴレット (フロレス、ダムラウ、ルチッチ)があまりにも素晴らしかったので、このタンホイザーはすっかりかすんでしまい、一流と二流の差を嫌と言うほど知らされたのですが、ま、仕方ないですね。


詳しいキャストはご一緒した のブログでご覧頂くとして、主な人たちはこちら。




TANNHÄUSER und der Sängerkrieg auf Wartburg


演出  Peter Konwitschny

指揮  Christof Prick     

タンホイザー (中世の騎士で吟遊詩人) Robert Gambill

エリザベート (タンホイザーの恋人) Brigitte Hahn

ヴォルフラム(タンホイザーの友人) Christoph Pohl

領主ヘルマン(エリザベートの叔父さん) Georg Zeppenfeld

ヴェーヌス(フーゾクのオネエチャン) Michaela Schuster



タイトル・ロールのロバート・ギャンビルは、高音が割れるのが辛いのですが、中低音は悪くないしパワーもまあまあだし、放蕩息子らしい魅力のあるルックスなので、超人手不足のワグナー・テノール界ではそれなりに重宝してもらえる人でしょう。去年の秋の日本公演も彼でしたよ。


一番の失望はエリザベートのブリギッテ・ハーン。キャサリン・フォスターの代役なので仕方ないのですが、50代小太りのおばさんで歌唱的にも盛りは過ぎた人のようです。


同じ代役でもちょっとしためっけものだったのがヴォルフラムのクリストフ・ポール(オラフ・バーの代役)。彼も日本メンバーだったと思うのですが、タンンホイザーへの友情とエリザベートへの報われぬ愛を声とルックスの両方で理想的に表現した彼は、「娘の婿にはこういう男性がいいわ」と世の母親が思うような孝行誠実ぶり。若い娘は得てしてアホだからタンホイザーのようなワルに惹かれるけど、こういう控え目だけど他人想いで芯の通った男性っていいわあ。


ヴェーヌスのミカエラ・シュスターはデブで緑色だからってわけじゃないけど、下手じゃないけど、声に色気もなくて魅力なし。


領主ヘルマンのゲオルグ・ツェッペンフェルトは、ここのハウスバリトンなのでしょうか、リゴレットにも殺し屋役で出てましたが、独特の風貌が役によっては生かせる人でしょう。リゴレットの方がよかったです。


オーケストラとコーラスは素晴らしかったので、これがワーグナー・オペラでは一番大切なわけで、ソロに対する不満もこれでかなり解消でき、ドレスデンまで行った甲斐もあったというものです。







さて、と・・・


ずっと気になりつつも、このタンホイザーをアップするまでは私のドレスデン旅行はまだ途中だったわけですが、これでついに終わってしまいました。


お天気もよかったし、ドレスデンは広々と美しく、中年男女3人の楽しいオペラ旅行 でした。


やはり一番の思い出はリゴレットですが、あれからBAのドレスデン直行便は廃止決定したし、これがヴェルディ・デビューだったフロレス王子は「やっぱり僕にはまだこの役は負担が重過ぎるようです」とかで暫くは歌わないと表明したそうなので、まさに幻のフロレスのリゴレット@ドレスデンになりました。南無阿弥陀仏・・・



オペラハウスの中から広場を眺めると、あ、私たちが何度も行った思い出のカフェが見えますコーヒーワイン

この美しいオペラハウスにはもう二度と行くことはないかもしれない・・・


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