自分の子供や部下に対して、「上手に叱ることができない」「上手に褒めることができない」「褒めて育てるべきか、厳しくしつけるべきか悩んでいる」という方にはお勧めの一作です。
あ、でも、この映画に全ての解決策が出ているわけではありません。
自分のやり方とその善し悪しを考える機会にはとても良いと思います。
ペップトーク度 | (最高★×5) | :★★★☆☆ |
映画オススメ度 | (最高★×5) | :★★★☆☆ |
【ストーリーと背景】
ウッドコックは冷血な体育教師。軟弱な子どもたちには腕立て伏せやランニングを罰として与え、厳しく育てるのが信念。
子どもの頃「おでぶちゃん」だったジョンは、ウッドコックの厳しい体罰がトラウマのようになっている。
大人になり、自己啓発本でベストセラー作家となったジョンは、故郷で表彰されることになり、久しぶりに家に帰って紹介された母親の新しいボーイフレンドはウッドコックだった・・・
【ペップトークの見所】
アメリカでヒットするコメディというのは、表面的な面白さの裏側に、なんか必ず哲学的なものとか、人生訓とか、明確な思想とかってのが隠されていますね。
この作品もそのひとつ。
アメリカ劇場公開時に初登場3位だったそうです。
日本での評価がイマイチなのは、レビューとかを読んでいても、日本人はコメディには単純明快なオバカさを求めているからのような気がします。
それはさておき、個人的にはコメディとしても堪能させていただきましたが・・・
それ以上に考えさせられたのが、ウッドコック先生の教育方針。
今、世の中は「褒めて育てる」というのが主流ですし、ペップトークも現状を容認し、ポジティブに解釈することからスタートしています。
ウッドコック先生は全く逆で、デブの子を否定し、喘息の子を否定し・・・腕立て伏せやランニングを強要して厳しく育てます。
ちょっとネタバレになってしまいますが・・・そうやって育てられた子は、反骨心を持って、自分を厳しく律し、立派な大人になっている。
この映画を見ていて、厳しく育てることの重要性や効果はよくわかりました。
でも、その効果を本人が自覚できるまでには5年10年という長い時間がかかること、
もし失敗したら、相手の子どもの人生を台無しにしてしまう危険性
など、不安な要素もたくさんあります。
私自身、社会人になって厳しい上司の下で、毎日涙を流しながら
「なんで俺ってこんなにダメなんだろう」
「何故、こんなことで叱られなければならないんだろう」
と思い、出社拒否スレスレの体験をしたことがあります。
ずいぶん後になってから、その上司は私のことを高く評価してくれていて、弱点を克服するために厳しく育ててくれたのだということを知りました。
その上司に巡り合えたから、現在の自分があるのは良くわかっていますが、その感謝の気持ちをもてるようになったのは、自分の配属がかわり、他の人が上司になってからでした。
私を厳しく育ててくださった上司に対して、本当の信頼関係ができたときには、一緒に仕事をする機会はなくなっていたのです。
一歩間違えれば、私が自己崩壊していた危険性もあったわけですが・・・上司は私の限界ラインを知っていてギリギリのところまでは追い詰めても、這いあがれないようなことはしなかった。
つまり、ある線までは、私を信頼してくれていたということなのでしょう。
だからといって、私は自分の部下や若い人たちに、同じような教育はできそうもないです。
厳しく育てるというのは、育てる側にも相当な覚悟が必要だということですね。
吉田松陰は叱らずに人を育てた、欠点や短所にふれず、長所を伸ばすことを徹底した・・・と聞いています。
しかし、「褒める=甘やかす」ではなかったのではないかと思うのです。
「褒めて育てる」でも「厳しく育てる」ということが両立できたら素晴らしいことだと思うのです。
そういう意味では、子どもを持つお父さん・お母さん、部下を持つ組織のリーダーやマネージャー、スポーツや教育の指導的立場にある方々・・・には是非とも観ておいていただきたい作品です。
で、肝心のペップトークですが・・・ほとんど出てきません。
というか、沢山出てくるのですが、ネガティブな表現だらけ(テーマがそうですからね。)なので、ペップトーカーとしては
・こんなときには使ってはいけない言葉、表現
を学ぶことができるのと
・ネガティブな単語や表現をポジティブな単語や表現に置き換える
というトレーニングのためには、教材の宝庫といえる一作です。
ペップトーカーへの道として、ぜひ、お役立てください。