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読書の記録

本の詳しい内容を記録しています。

2016.01.08 エーゲ 永遠回帰の海 

 立花隆 須田慎太郎(写真)  2005年11月1日

 書籍情報社 1500円 333頁 

 サイズ 126mmx185mm 

 評価 95点 

 写真がすばらしい、エーゲ海の古代遺跡に立ってみると、文字や写真では感じられない多くのことを

 感じるのだろう。 多くの遺跡が、破壊され、いまも生活のすぐそばにあることを

 写真を通じて実感した。それぞれの遺跡の持つ歴史的な重みを強く感じさせる写真と文章である。



第一章 聖山アトスへ



アトスは世界で唯一の修道院自治国家である。


アトス半島には、20の修道院があり、これが半島全体を分割所有している。


ギリシャは憲法によってこの修道院共同体の完全自治を保証しているのだ。


入国に際しても、アトスには独特の決まりがある。女性が入ることは禁じられているのだ。


いかなる女性もここに一歩でも踏み入れることはできない。


動物もメスは、入国禁止である。ロバもすべて雄である。


初めて知ったのだが、修道僧は、信者には関心は無い。


ハルマゲドンで、天使連合軍が悪魔連合軍に勝利し、キリストが


天から、降臨してきた時、自分が天国に行けることを祈っているのだ。


東方キリスト教の厳かなミサに立花氏は感激したと言う。


そういえば、大学時代、通学途中にあったニコライ堂に立派さを思い出す。



第二章 アポロンとディオニソス


 シチリア島のシラクサにあるセリヌンテ神殿について、の記述を読むと


是非現地に行ってみたいと思ってしまう。


治安に問題があるらしいが、残存している建造物がすばらしい。


 ギリシャ北部の、テサロニケの東にあるフィリピの遺跡は、この地の歴史を知って


訪れると、誠に興味深い遺跡だ。この都市は、アレキサンダー大王の父フィリップ二世


が自分の名前に冠してつけた名前の都市である。


マケドニア王国の中核都市が、ギリシャの北東部にあるとは知らなかった。


さらに、この町はパウロがヨーロッパに初めてキリスト教を伝えた町として知られている。


 古代ギリシャで最も重要視された聖域にデルフィのアポロンの神殿がある。


アポロンは音楽、芸術、光の神であった。アポロンの預言はデルフォイにいる巫女の口を


通じた神託として与えられたという。


ここには、ディオニッソスの墓があるとされている。


ディオニッソスや不死の神ではない。父はゼウスだが、母は人間の女である。


このディオニッソスの死んでも復活するという復活能力がキリスト教に影響を与えたという。


アポロン的なるものは、静的で明晰で秩序を求めるのに対し、ディオニッソス的なるものは、


本能的、感情的で、ダイナミックな爆発性を秘めている。


 アポロンの神城として有名なのは、デロス島である。


アポロンはこの島で生まれた。アポロンはあちこち出歩く神である。


その留守を預かったのが、ディオニッソスであったらしい。


ディオニッソス的なモノを求めたニーチェは44歳の若さで発狂し、12年後に


死ぬまで、正気を取り戻すことはなかった。



第三章 聖なる神と性なる神


小アジアのトルコにあるエフィソスは古代世界では最も大きな町であった。


そこには、エフィソスの遺跡の出土品の巨大なアルテミス像がある。


アルテミスはゼウスの娘でアポロンの妹である。


アルテミスは多産と豊穣の神である。


地母神信仰はセックスと強く結びついていた。


地母神の神殿で神聖売春が行われていた。


神聖売春というのは、神殿で売春婦を買ってセックスすることは、


信仰を深める行為として、当局から推奨されていた。


キリスト教の教義では、原罪は性と強く結びついている。


人間は性行為を通じて生まれてくる。それ故にすべての人間は原罪を持って生まれてしまう。


しかし、マリアは、処女懐胎で原罪から免れ、死んだ後は被昇天によって遺体の腐敗から免れる。


こうして、聖母子は性から切り離され聖性が守られた。


以後、性は禁忌となったのである。



第四章 ネクロポリスと黙示録


ネクロポリスとは「死者の都市」と言うことである。


すなわち墓地である。サルコファガスという巨大な石棺がまるで家のように立ち並んでいる。


サルコファルガスで最も有名なのがイスタンブール考古学博物館にあるアレキサンダー大王の


サルコファルガスであろう。この本に写真があるが見事なできばえで、現存しているだけで


感動してしまう。


 黙示録は世界の終末のかかわる預言の書である。


それには、七つの封印が解かれすさまじい災禍が地上にふりかかる。


こういった終末理論は、ほぼすべての宗教にある。


仏教も、キリスト教も、イスラム教も、布教には終末理論を取り入れて


天国にいける権利をどうやって得るかを指し示すことが


一番だと、思う。


終章  終末後の世界





終章では、ミトレスというトルコの都市国家についての記述がある。


ミトレスはイオニア諸国の内で群を抜いて強い国であった。


イオニア連合とペルシャ連合の紀元前500年から479年にかけて行われた


ペルシャ戦争でイオニア連合軍が敗北。 ミトレスは陥落する。




立花氏はミトレスについて、こう締めくくっている、


「要するに、私がミトレスで見た荒涼たる風景は、その時代の世界大戦に敗北した


かつての超大国が、敵に蹂躙され、徹底した破壊を受けた後の荒廃の風景だったのである。


いってみれば、1945年の日本全土に広がっていた焼け跡風景の古代版だったのである。


ヘロドトスの「歴史」の他の部分を読んでいくと、我々がもう完全に記憶を失ってしまった


古い古い時代から、世界大戦は何度も戦われ、そのたびに時の大国、超大国が滅亡し


繁栄と映画の跡が烏有に帰してしまうことの繰り返しであったことがわかる。(中略)


誠に時は円環状に流れ、世界は永遠に回帰し続けるものなのかもしれない。


あるいは時は、螺旋状に流れ、世界はある高みに向かって上昇し続けるものなのかもしれない。」