今年1月14日に亡くなられた細川俊之といえば、僕の場合FM東京(TOKYO FM)にて16年半に渡って放送された「ワールド・オブ・エレガンス」が真っ先に浮かぶ。緩やかな渋い語りと、何といってもあのテーマ曲が耳について離れない。女性のMCで「グランドファッションのワールドがお贈りします」の後に渋~く入ってくるのだ。あのテーマというのは“愛の世界”、初代はジャン・ミッシェル・カラディックによるもので、以降レイモン・ルフェーブルやピエール・ポルト、服部克久によるオーケストラ物となった。
大学に通っていたころの記憶に組み込まれた臭覚がハッキリと覚えていた。イントロもさることながらサビでの ♪ルルル ワ~ルド ワ~ルド の節が、さながら独居坊じみた若い男の汗臭~く、尚も多種多様の匂いが充満したアパートに居ながら甘美な世界に誘ってくれたのは紛れもなくそれだった。月に一度のルネ・バンダール・ワタナベによる星座占いでさえ、小雨降るパリ、ヴァンドーム広場から少し中ほどに入った小路で占ってもらっているような錯覚に陥ったのも懐かしい。
ところで急にそれを思い出したのも、ジャズ・ピアニストのフレディ・レッドがパリで録音した『Under Paris Skies』の<Diane I Love You>を聴いたからだ。何がどうのこうのでなく、ふと浮かんできただけ。僅か1、2小節でその曲の99%を形作ってしまうのは結構あるが、アルバム全体の99%ととなるとコレしかない。ジャズ興隆期における1960年代前後にして、このような硬質の響きを放ったのはソニー・クラークやバド・パウエルが程近い気がする。録音は1971年、とくれば、前年「人類の進歩と調和」のテーマで開催された日本万国博覧会、日本の世の中が古き良き時代の欧米文化を摂取することと決別し、先進的欧米文化を積極的に取り入れたことはジャズそのものも変わってしまったような気がする。
<Bleeker Street Blues>はR&Bの経歴がモノを言うガッツある演奏だ。いつもなら出て来いとばかりにベースやドラムに叱咤激励するものも、ここでは控えひかえと申しつけるのである。ディディエ・ラヴァレ(b)、ディディエ・カルリエ(ds)、よくぞ脇役に徹してくれたと褒美の一つでもと思うのだが、僕の知る限りこの一枚でしかお目にかかれなかったと記憶する。また直向きな<You>ではベースとのデュオに何となく切ない気持ちになり、余計ディディエ・ラヴァレよ何処へと探し回ったものです。
フレディ・レッドの諸作は少なく、サイドメンとしての客演も少ない。お宝的発掘モノもなかなか出てこないのが現状。しかも全曲彼のオリジナルとくれば、背のタイトルを無数の模様のように並べてしまわないで、堂々とブルー・マリーヌ(フランスの伝統色で製造国によってクラン・ブルーもあり)のジャケットを表に向け家宝にして奉られることを願う。何度も聴くうち、この部屋はブルー・マリーヌの香りがプンプンしだした。
-NO.620-
★ティン・シーリング★
今年も3月にジャパン・ショップなる店舗関連の展示会が開かれた。その一角に【ザ・トゥルー】のブースで一際輝いて見えたのがこのティン・シーリング、ブリキ製パネルだ。19世紀後半、第二次産業革命による技術革新がもたらした産物。近年、住宅や店舗装飾に使われ、不燃材でもあるため見直されています。どう、見てください、綺麗でしょ。あなたのお部屋も王室のようになりますよ(笑)