唐突だが私は桑田圭祐の声が生理的に合わない。よってサザンのCDやレコードというものを持っていない。しかしながら桑田圭祐から生み出されるメロディとコメディな世界は尊敬し称賛に値する。日本のメロディ・メーカーとして誰が一番かと問われるとユーミンかクワタかと大いに悩み結論は出ずのままだろう。
実のところそう言いつつも私はサザンを摘み食いしていた。何故なら原由子という日本を代表すべくヴォーカリストが居たからだ。桑田曰く原さんは自分の歌う声にコンプレックスを抱いていたらしく、それを解放させてあげたのが桑田氏であり、サザンが生まれるきっかけとなり後に生涯を供にすることとなる。
さて原由子の声となると賛否両論が飛び交うかも知れないが、私にとって生理的にピッタリとくるのだ。決して上手いとは言えないが、大御所ユーミンや竹内まりや、大貫妙子、尾崎亜美など代表的な歌い手を挙げても、ある意味彼女を超える日本的ヴォーカリストは居ないでしょう。下手な演歌歌手より、実に日本的な佇まいと日本的心情を歌に表現できるヴォーカリストである。
キーボード奏者であり、ギターの腕前も達者くる、コンポーザーとしての素質も兼ね備えており、サザンにおけるサウンド面での権力も桑田圭祐に肩を並べるほどの存在だったのだろうと。そう思いたいしそうだったのだと確信する。そんな彼女が『ハラッド』なる超ベスト・アルバムを新曲<京都物語>を引っ提げリリースしたのだから黙ってはおれない。気になる曲はすべて収録順に紹介させていただきたい。
Disc1最初の<京都物語>は松山千春のアノ曲に似たメロディと言いますか、日本古来のフォーク・サウンドの常套手段 Em、Am、Dm、G7 あたりを今更ながらの感も余所に惜しげもなく使っている。そのコード進行が日本人的で曲名が“京都”と付くのだから想像も出来よう。メロディも昭和歌謡の雰囲気が溢れ出ていて、原坊(仇名 ハラボウ)本領発揮というナンバー。京都観光案内的ソングで、今年のJR東海「そうだ、京都行こう!」へ使われそうだ。
<鎌倉物語>は旅番組で使われていたように旅情を掻き立ててくれるナンバー。彼女独特のフラットな音階がゆったりとした空気に包まれとても気持ちよく聴ける。
初めてサザンでソロ・ヴォーカルをとったナンバーが<私はピアノ>。製作当時アイドル歌手の高田みづえに提供したのはあまりにも有名。大きく原由子とサザンの、そしてちょっぴり私の人生を変えてしまったお茶目な名曲。健気懸命歌う彼女の姿や声はいまだ愛を感じる人もいよう。
これも高田みづえでヒットした<そんなヒロシに騙されて>はサザン生涯最高のメロディだと信じている。「えっ!」って思わないでくださいな。サーフ・サウンドに乗ってとことん突き進むこのメロディ、サビ部でドラムが裏拍子で煽りまくる。サビ ♪泣いたりしたり のまたサビ ♪だから一言 が現れる刹那、背筋がしゃんとし涙が零れ落ちるのである。
<シャボン>は彼女の可愛らしさが一番に表出しているナンバーと思う。♪シャボン シャボン セゾン セゾン と狂おしく歌うのだ。
<いちょう並木のセレナーデ>はアラっ懐かしいフォーク・ソング調だこと。このライヴ録音を聴いて思い出したのが“さだまさし”のアノ迷曲 前歯がキラリでお馴染み「雨やどり」での同種の聴衆が放つ笑い声だった。
原由子作曲<あじさいのうた>は某TV番組のテーマ・ソングに使われたりしてよく耳にしたものだ。そのため日曜の夜遅い放映のため、私にとっては明日の朝を拒むテーマになってしまっていた。原サウンドはやはり桑田サウンドとは一線を画し、このコンポーザー原誕生は嬉しさあまりにCDシングルなるものまで買ってしまった。
ではDisc2に移りましょう。何と言っても<花咲く旅路>の和に徹したヴォーカリスト原由子が傑出したナンバーに移ろいゆく日本美を感じない人はいないでしょう。日本の詞の季節感や心情、あちこちにいずる風光に身をゆだねようでは。
これも数少ない彼女が作曲した人気曲<少女時代>で、初々しい斉藤由貴が歌っていたヴァージョンも懐かしいのでは。
渋めの<涙の天使に微笑みを>は全国的TV朝ドラの主題歌で、私がカラオケで唯一女性の歌を歌ったナンバーなのです。個人的思い入れで選んだのでお許しくだされ。
ラストにはやはり<想い出のリボン>だった。別に予想していたわけじゃないけど最後はこの曲でなきゃ、そうでないといけない気がする。この曲は勿論のこと、どの曲をとっても全部が美しい。ヴォーカリスト 原由子 万歳!
-NO.596-
★河井寛次郎記念館★
京都五条通りから少し入ったところにひっそりとある河井寛次郎が設計した建物。今はそのまま記念館として残されており、彼の作品やコレクションをまじかに見ることができる。“土と炎の詩人”という異名が手に取るように分かると同時に無数にある素晴らしい作品が生まれた理由がそこには在る。こんな佇まいを皆は欲しているのだと思う。