オードリー・ヘップバーン、ソフィー・マルソー、メグ・ライアン(五十音順)。映画というものをあまり観ない私でもお気に入りの女優さんはいる。まさにその三人ということになるのだが、偶然にも五十音順が好きな順になっていたのは、たったの三人だったからなので、人に訊かれればこの順に答え、わざわざ五十音順が好きな順になっているなどと間違っても言わない。が、ここに書いてしまった。
その中からオードリー・ヘップバーンがフレッド・アステアと共演した1957年作品『ファニー・フェイス(パリの恋人)』のサントラ盤を。実はこのCD入手が困難を極めており、ネット・オークションや中古市場などでも高値(数千円)を維持している。それがだ、あるCDバーゲン・フェアでたったの千円札一枚と交換できたのだから歓喜の声をあげずにはいられなかった。
ヘプバーンはこの映画でアステアと互角に渡り合うため、撮影開始前の2ヶ月間パリのオペラ座のダンス教師についてダンスのレッスンを受けたという。もちろんCDではその気になる初々しいダンスを観ることはできないが、ダンス同様今作で初めて本格的な歌を披露し、それを耳にすることが出来るのだ。彼女のソロ・ナンバーはアルバム2曲目<How Long Has This Been Going On? >のみで、その歴史的瞬間を我々は体験することとなる。しかしそこで聴かれるのは歌というより台詞に近いものであり、恐る恐るマイクに向かっている彼女のシルエットが脳裡を過ぎる。
これも歌というよりまさしく映画のワンシーンからの切り取り。<Bonjour, Paris! >でのヘップバーンは可愛らしさをかなぐり捨てがなり立てるようにシャウト! しまくる。それはそれで私にとって柳に風の心境であり、貴重な一コマなのだ。映画ではシャンティ公園近くの野外でアステアとヘップバーンのダンス・シーンに挿入される<He Loves and She Loves>は、甘く囁くアステアの独唱で始まる。スクリーン・ファンには雨中で踊る二人が音もなく蘇ってくるであろう。最後までヘップバーンの声は現われないが、聴いているだけでヘップバーンの気配を感じる、まさに音もなく。そしてアステアに敬意を表してここに記した。
<On How To Be Lovely>は最もヘップバーンの可愛らしさが傑出したナンバーだ。白眉はデュエットするケイ・トンプソンの“On How To Be Lovely”に続いてヘップバーンが同じように“On How To Be Lovely”と追っかけるくだり。ケイ・トンプソンには失礼だが、天地雲壊の差を感ずるほどヘップバーンは「ファニー・フェイス」ぶりを発揮する。決して上手くないところがすべて決め手となる。最後の<S' Wonderful>は、デュエットするアステアを凌ぐほどの讃美を与えられたのは言うまでもない。もちろん私からだが。
-NO.586-
★北浜レトロ★
英国の旗が目印の北浜レトロ。お目当ては薫り高き紅茶と目移りしそうな珍しいお菓子たち。時間があれば是非格調高き本場のアフタヌーン・ティーを。店内奥の窓からはゆったりとした川面を覗くことができ、趣味のいい調度品のひとつ、この鏡にもゆるやかな時間が映し出されている。