スティーヴ・ハウ爪弾くクラシカルなギターの調べはいつもと違う空気がもたらす期待と不安の交叉に胸高鳴る。やがてタイトなリズムへと急進する。改めて聴くと思いの外ゴリゴリとしたファンクネス・ベースのクリス・スクワイアと、案外控え目だったのねと言わざるを得ないビル・ブラッフォードのドラム、意表をつくジョン・アンダーソンのお上手な歌(アメリカン・ロックに比べブリティッシュ・ロックのヴォーカルはヘタウマが多い)とが一致団結勇気凛々たるアトモスフィアを構築し、あとはリック・ウェイクマンのラジカルなサウンド・ウエイブを迎え撃つのみが名曲<ラウンドアバウト>。
この曲の真骨頂は残すところラスト3分強にある。慈愛に満ちささやくかのようなジョンの歌声、5人で繰り広げられる怒涛のサウンド・クリエーションに、クイーンも影響を受けたのではないかと思われる重厚なコーラスは圧巻。そしてしめやかにそっとギターを置くようにハウがあのメロディを爪弾いて終える。
随分も前のこと、今回のアップが584回目、前というのは137回目のアップに“シンフォニック・ロック”なるタイトルでこのイエスの『フラジャイル』を取り上げた。シンフォニックという印象はプログレッシヴ・ロックにはつきものだったのか、どうもそれらのイメージがまとわりついてしょうがない。まあともあれリック・ウェイクマンの<キャンズ・アンド・ブラームス>はその名の通りブラームスの“交響曲第4番ホ短調第3楽章”そのもので、ストリングスや木管楽器などの全パートをウェイクマン孤軍奮闘、鍵盤楽器のみで挑戦した作品だ。この手法はEL&Pのキース・エマーソンやディープ・パープルのジョン・ロードを始めとした多くのブリティッシュ系キーボーディストで流行っていた。違う観点からするともっともっと聴いてみたい気がする1分半の小品。
恐ろしいのはラストに控えた<燃える朝やけ>。プログレッシヴに往々に出てくる大仰な邦題には困ったものだ。それこそ原題は<Heart Of The Sunrise>。この曲がお気に入りかと言えば嫌いな部類としてイの一番に入るものだろう。何故取り上げたかというと、最初と最後にロバート・フィリップ率いるキング・クリムゾン・スタイルのおぞましき前衛的サウンドが現われるからだ。何をしてあのサウンドを入れなきゃいけないのか。この曲はジョンが純真な愛を綴る曲なのにね。
だからお口直しに、否お聴き直しにひとつ前の<ムード・フォー・ア・デイ>は、スティーヴ・ハウのガッド・ギター・ソロを堪能していただけるスパニッシュ風ナンバー。艶麗な音にしばしごゆるりと。CDプレイヤーならプログラム操作でこの曲をラストに置き換えることができるハズ。さらにこのアルバムを進化させるため是非ともそのようにしていただきたいのです。
そして最もこのアルバムより強力な助っ人現るといってよいのがジャケット画のロジャー・ディーン。イエスにロジャー・ディーンありと言わしめた才知ある人物で、長年秀逸なるイエスのジャケットを描き続けることとなる。
-NO.584-
【大阪・日本銀行前ポスト】
このポストには「郵便は世界を結ぶ」と書いてある。実際ポストの上部には地球を多くの人達が支えている装飾が、このレコード・ジャケットと同じように施されている。