諺では「天は二物を与えず」と言っているにも拘らず、天が三物を与えたもうた喩えがある。ケイト・デイビスという名の若き女性ベーシストのことだ。その三つの優れたる要素の中には、見た目に可愛らしさなる切っても切れない大定義が存在し、男勝りともいうべき図太く強靭なベースワーク、さらに愕くなかれ歌が巧いとくる。鬼に金棒、虎に翼、弁慶に薙刀だ。
さらに誉め述べると、天真爛漫な可愛らしさ、血湧き肉踊るベース、純度100%の歌声となる。彼女のデビュー作『Introducing Kate Davis』では、12の選ばれし曲の善し悪しを彼女の可愛さと引き換えに、天が三物を与えたのかどうかを検証してみたい。
のっけから急速調で感情が激発する<Just One Of Those Things>は、彼女のベース以外耳に入ってこないほどの凄みがある。。どうって、ボボンボン、ブルンブルン、ダダッダダッダッという風に書くしかないのだ。ねぇお分かりいただけたでしょうか。ベースしか耳に入ってこないのは当たり前で、バース部から数小節はベースと歌のみで進んでゆく。何とピアノにはTony Paciniと希少価値の高いピアニストが、彼女のベースに煽られ荒れ狂うように弾いているではないか。でも彼女に限って言えばベースのみ◎としておく。
ハイライトはラストに配されたビヨンセの<Crazy In Love>がカッコいい。David ValdezのサックスとDick Titteringtonのトランペットとがメラメラと鉄が熱く焼けるほどの芳香が立ち昇り、これまた希少価値充分のRandy Porterのピアノがメロディを弾けさせ、渾然一体となって狂喜乱舞の世界へといざなう。曲◎、ベース○、しかしインスト・ナンバーと分かって天も二物までとうな垂れる。ハイライトでこれじゃあ、では三物はというと。
<ジ・オールド・カントリー>はキース・ジャレットのヴァージョンでいっぺんに私の愛でる曲となり、ナット・アダレイ畢生の名バラードと太鼓判を押す。本来この物静かな円熟味のバラードを、彼女はルーズで退廃的に、尚も骨太なサウンドを軸にスリリングな展開に持ち込む。この曲にしては本来の姿ではないにしろ、これはこれでまたとてもいいのだ。曲◎、歌○、ベース○と天が与えし三物がこれだ。
世の中は(ジャズの世界も)女性の時代へ着々と歩んでいる。この華奢な彼女が抱持するは、ガッチリした男性が如き猛者ならぬウッド・ベースなのだ。補足しておくと、歌で◎を勝ち得たのは<Little Girl Blue>、じつに可憐だ。
-NO.579-
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