カナダ出身のベテラン・ピアニスト、ブライアン・ブラウンのオタワはカフェ・パラディゾでのライヴ盤『クワイエット・ナイト』。こうやって書いておかないと誰もライヴ盤だと気づくことはないだろう。この人、名前も初めて知ったし、音を耳にしたのも今しがたのこと。まこと端正なピアノをお弾きになり、音の粒立ちもキリリとしており我ながら背筋の伸びる思いがする。
私がジャズ初心者であるならば、このようなジャズで崇心すればまともなジャズ人生を送ることができようもの。それほどにピュアで、これ以外のものは享けつけることを拒み続けるであろう。そうのような自信が俄然と湧いてき、不平不満、愚図るわけではないが、驚きの連続とやらが現れることも決してない。
最初と最後に配されたオリジナル・ナンバーに期待の丈を覗かせ、じっと食い入るよう先ずは<Beautiful Creatures>を聴く。一曲目からこのような超スロー・ナンバーを置くことに驚く。日も暮れしころ、酔いどれたちの美しき凱歌が闇に底知れず沁み入る。これはジャズというよりブラウンお得意のブルース感覚に酔うといっていいでしょう。タイトル・チューンの<Quiet Night>は、ジャケットに映る街並みのようなほんのりした明るさを湛える静けさがとっても心地よい。
さて気になって気になって気になってしょうがない<All In Love Is Fair>はスティービィー・ワンダーの隠れたる佳曲。よくぞ数ある彼の楽曲の中から択んでくれたものだ。誰も取り上げることなどないと決めてかかったのか、よほど性格も私に似て捻くれ者でないかと心配すらしてしまうくらい探しにさがしたのでは。ステーヴィーは滅多矢鱈にこのようにしんみりとした曲は書かないのだが、これもすべてブラウン含む3人の慎ましやかで老練な業に気圧された証しだろう。もう一つ気になるの曲が<Besame Mucho>だ。これまたこんなにスローなベサメ・ムーチョは先にもなく後にもないであろう。場所はカナダのオタワ、八方手を尽くしラテン風味を封じ込めた老獪なるカナディアン3人によって、そっと秘密の扉を開けるように私に聴かせてくれた。
幸いなことに彼を知る人は少ない・・・と思うのだが。
-NO.577-
★カギロイ★
神保町にあるカギロイでは、日本特有の調味料である【味噌】にこだわった作品が供される。敢えて作品といっておこう。浅蜊のエキスがしみこんだ味噌や、全国ありとあらゆる自慢の味噌が集結している。調理法も食べ方も至ってシンプルで、分かり辛いのはお店の場所だけ。お昼のランチメニューにそそられ知ったお店。