僕は列車に滅法ヨワイ。ヨワイというのには2つの意味があって、一つは乗り物酔いするから駄目だというのと、いわゆる“鉄”と呼ばれる類の鉄道好きという意味のことだ。僕は小さい頃とても乗り物酔いが酷かったし、できれば飛行機ではなくレールの上をガタゴトガタゴトと揺られながらの旅のほうが今でも好きである。となると前者にも後者にも当てはまる。電車より列車、そう呼ぶほうが風情もありいかにも旅情もかきたててくれる。さらに機関車ともなるとどうか、旅情などどこかへ飛んで行ってしまいひたすら力強く働く機械そのもの、はたまたサウンドとなるのだ。
ジャケットに列車らしきものが載っていたり書かれていたりしても滅法ヨワイ。まして曲名に“train”や“railroad”などの単語を見つけたりしたら大変である。どうにもこうにもジャンル問わず気になってしょうがないのだ。そんなこんなで目に留まったのがフランスのピアニスト、ジャン・ピエール・フーキのその名も『RAILROAD』だ。ご覧の通りモノクロで描かれた列車に赤い文字のタイトル。ジャケット裏面を見やると、そこには洒落たアニメ風でどこかの駅構内の様子がこと細やかに描かれている。特に頬が緩んだのは曲目のクレジット紹介だ。ターミナルによくあるパタパタと変わる掲示板に出発と到着があり、そこには駅名と時間が表示されず、曲名と演奏時間が表示されているのである。実に粋な演出である。
先ず曲はというと<スティール・アンド・スティーム>というのに目がいく。が期待のほどでなく、前評判高い<コラーレ>も美メロで悪くない。でもどこか期待している列車に結びつかないのである。何度か聴いているうちに気づいた仕掛けはオープニングの<クルーズ>だった。ほのぼとした空気感、長閑なピアノに導かれピーター・アースキンの柔らかでいて迫り来る列車を表現したドラミングにこころ奪われた。それはあたかもフランスの田舎を走り抜ける近代的な超高速列車には違いないが、列車らしく旅情をかきたててくれる。某TV番組“世界の●窓から”のBGMにも最適であろうと思うが。是非フランス編などあれば一考していただきたい! なぁ~。
ところでピーター・アースキンといえばウェザー・リポート在籍中にあの名ライブ盤“8:30”の一翼を担い、かつクライマックスでの“バディア~ブギ・ウギ・ワルツ”におけるラスト部の超重量級列車を表したドラミングに度肝を抜かれ、そのついでに彼に恋した瞬間でもあったと記憶する。それにしても列車にまつわる曲には目がない僕。ビリー・ジョエルの“アレン・タウン”、グランド・ファンク・レイルロードの“ザ・レイルロード”と急には思い出せぬほど他にもあったはず、と物忘れの激しさは歳の所為にしておこうか。いかようの列車の鼓動(サウンド)も一糸乱れぬことなく僕の廻りを走り続けている。
-NO.570-
★旧岩崎邸庭園 其の壱★
今や龍馬ブームにつけやたらと耳にするのが岩崎弥太郎、三菱財閥を築いた人で、その子にあたる岩崎久弥がこの邸宅の主であった。設計は日本建築の父ジョサイア・コンドルで、鹿鳴館や上野博物館、ニコライ堂なども彼の手によるものだ。このイスラム建築の特徴でもあるエキゾチックなタイル花柄は、ベランダ一面に咲き誇っている。