皆さんは小さい頃【雨】や【雪】と対決したことはありませんか? 【雨】はいったん降ってしまえば散弾銃如き戦法で秒殺されてしまいましたが、こと降りはじめの【雨】は学校から家へ帰るまでに10粒身に当たるまでに帰ればセーフなどと言い聞かせ、【雪】に至っては降りそそぐ天を仰ぎながら顔を左右前後、時には膝を駆使しつつ上下運動を加え【雪】からの攻撃をかわしたものです。天から舞い降りてくる【雪】はスピードこそないものの、ほんの少しの気の流れであっち行ったりこっち行ったりと気ままに戦術を変えてきます。やがてこちらも逃げてばかりはおれず戦術企てます。そう討って出るのです。大きく口を開けひらひらと舞い降りる【雪】を喰うのです。まあそんな他愛もない自分独りの遊びですがね。ところでそんな【雪】との対決を思い出していたら、ふと浮かんできたのが我が国の重鎮ピアニスト山下洋輔でした。
山下洋輔は日本ジャズの牽引者の一人で、坂田明を始めアヴァンギャルドなジャズで旋風を捲き起こしたかと思うと、方や“ラプソディ・イン・ブルー”や“ボレロ”などを手掛けクラシック界やポップス界にも根を張った音楽活動に日夜励んでいらっしゃいます。実は・・・正直なところ彼のファンかというとそうではありません。音楽以外で数々ある共通点で親近感をもよおしているだけに違いありません。ならばその共通点とは如何に。一つは蕎麦好き。もう一つは猫好き。もう一丁が駄洒落好きという、山の下洋之輔左右衛門の好き慣れこそ三原則の状と私は言っております。彼は蕎麦好きが講じて“蕎麦処 山下庵”なる著書をしたため、猫可愛さあまりに全国にその名を轟かせた“猫返し神社”の名づけ親でもあり、駄洒落ジャズマンの異名を持ち彼周辺に蔓延るデタラメ外人の発起人でもある。その一端を彼の新刊“山下洋輔の文字化け日記”から少々。
下手くそなロシア人の仕立て屋さんウラジミエール・チャンチャンコ、ロシア人耳鼻咽喉科医ノゾキミール・ノドチェンコ、韓国人読書家チョー・ヨンデル、下着が合わないクロアチア人クイコムワ・ブラヒモビッチなどなど。というわけで私も一席と思いましたが敵うはずもなくあえなく撃沈。
さてさて彼のライフワークであるニューヨーク・トリオ盤『スパイダー』を少々。猫好きだから半強制的に書き上げたのだろうか<Cat's Dance>というタイトルに期待したが、猫特有の可愛らしさがなく少々失望。しかしつづくラテン・ナンバー<Revenge of Picasso>でその失われた望みは期待へと誘われる。複雑なハーモニーやメロディもこれ以上私の意のままだと【芸術】になってしまうのではと心配してしまうほど最高にクールでいてホットだ。<One for M>のイントロは深々と降る雪を想起させてくれるかと思いきや、田畑にできた雪の遊び場をウサギが跳ねるような、日本古来のええじゃないかの踊りをモチーフにしたのではないかと彼や是やと表情豊かな山下節が炸裂している。<Kids in Memory>は山下叔父ちゃんお得意の童謡調のナンバー。勇猛果敢なイントロがいかしている<Doubles>はフェローン・アクラフの民族的打楽器の趣がよろしいかと。ある意味和太鼓にも通ずる感性が生みだすサウンドだ。
なぜ【雪】との攻防戦が山下洋輔なのかって? 彼のピアノってどこか【雪】が舞って降りてくるようにうまく私たちの意とするツボをぬらりかわしてくるのですよ。ちなみにラストの<Spider>は、昔ダイハツ・ムーブのCMに使われたナンバーです。そうと思い聴いてみても皆さんはそのドバラダなメロディは思い出せないかも(笑)。おっと私、彼のピアノというよりエッセイにこころ奪われたのだとこれを書いているうちに気づきました(爆笑)。
-NO.566-
★五十河の雪景色★
京都北部にある京丹後市にある旧大宮町の山里“五十河(イカガ)”は小野小町ゆかりの地であり終焉の地とされる。この丹後地方は今でこそ雪は少なくなったものの、私が丹後地方に身を置いていた頃は少なくともこの五十河などは豪雪地帯に部類したであろうか。それほどまでに山深く離れたこの地に住む同級生はバイク通学が認められておりチョッピリ羨ましかったりもしたが、冬雪降る季節は高校のある街中へと下宿をしなければならなかったという大変な思いもしたのだ。
久しぶりに故郷の地を訪れた私を出迎えてくれたのは、昨年末に降り積もった雪が田畑一面に懐かしい雪景色を演出してくれていた。