僕はこのピアニストにとても甘いのです。僕の大嫌いな曲を取りあげようが、生理的に受けつけないサックス奏者をゲストに迎えようが、目を覆い隠すようなジャケットにしようが、この先ずっとオリジナル曲を書かなくなろうと、彼の少し危うい髪の毛がみるみる無くなり坊主頭になろうが、甘いチョコを頬張りブクブク太ったあげく難病を患ってまともに演奏ができなくなったとしても、彼がピアニストである限り、何をどうしようが、何がどうなろうと赦してしまうことでしょう。
1995年のメジャー・デビュー以来、言うなれば追っ駆けをやってきたのだ。超有名なスタンダード・ナンバー<イッツ・オールライト・ウイズ・ミー>にしろ<ヤング・アンド・フーリッシュ>、<ザ・ウエイ・ユー・ルック・トゥナイト>しかり到底何の曲だか分からず、辛うじて分かったにせよ破天荒なまでにその原型を留めていない。一般的に聴くに耐えないとの言葉が百出するはずだが、彼の場合、こころ砕いてその瞬間を待つことにしている。それを楽しんでいるといったほうが正しい。その瞬間はイントロでほんの10秒、エンディングでおよそ30秒程度のもの。深淵に横たわっていた聞き覚えのあるメロディが恥ずかしそうに現われる瞬間だ。いずれの曲もその僅か1分にも満たない過ぎ去りし余韻とこれより訪れし至福の時間(とき)のために、10分をも超える浪漫への探求へと向かうのである。
冒頭で辛辣極めた諸事も<ムーン・リバー>で一網打尽され、最初は手のひらに乗るほどの小さな幸せがこの曲が終わる頃には抱えきれないほどの幸せが満ちたりている。アルバム名は『ライヴ・アット・ザ・ヴィレッジ・ヴァンガード・・・ジ・アート・オフ・ザ・トリオ・ヴォリューム2』、そこでピアノに向かっているのがブラッド・メルドーだ。-NO.546-
【出雲崎・良寛と夕日の丘公園】
新潟名所百選の堂々一位に選ばれたこの眺め。眼下には穏やかな日本海と妻入り屋根の町並みが。是非とも薄紅の桜舞う春、穏やかな風ぬける夏、夕日に染まる秋、淡く積もった雪とのコントラストが秀逸な絵を思わせる冬、どの眺めもその目で留めるべし。