唐突ですが、あなたは「Walkin' After Midnight」を聴いてどう感じましたか? っていうよりどうなさいましたか? が正解かな? タイム・マシーンから飛び出してきた歌姫マデリン・ペルーが今宵贈るは、デビュー・アルバムの『Dreamland』。宣伝文句にはジャズ・ヴォーカルの新星、ビリー・ホリデイの再来と騒がれ、その鳴り物入りのぼやけたポートレイト・ジャケのアルバムがいま私の手元に置かれている。私は前述の曲と2曲目を聴いて一抹の不安と微かな望みを抱いた。彼女を聴いてすぐに思い浮かべたのがイングリット・ルシア、ノスタルジックな趣は確かに共通するところが多い。しかしマデリン・ペルーの場合は自作自演出来る能力と、味ある卓越したギターの腕前に聴き惚れることしばし。私のようにビリー・ホリデイが苦手だというお方、安心してお手にしていただきたい。ビリーとの接点は共通の楽曲にあって、声質がどうのこうのという問題ではない。すぐに失望は確かな希望となる。
3曲目「I'm Gonna Sit Right Down And Write Myself A Letter」でもう彼女のとりこに。バックで図太いテナーを響かせるはあの無骨な男ジェームス・カーターでは。何とここではオシャマな女の子のように優しさをたたえた一吹きが私の口元を緩ませる。昭和の香りがたちこめてくるとでも表現しようか、天衣無縫の姿である。ふとライナーに目をやるとピアノにはサイラス・チェスナットが弾いているではないか。その後セカンドではラリー・ゴールディングス、サードでは珍しくサム・ヤヘルがピアノに興じている。マデリンのこだわりと捉えるかどうかは別にして、毎回の楽しみが増えたと独り喜んでいるのだ。
「Always A Use」で聴ける力強いギターと歌声、フォークの神様ディランとデュエットさせたらと彼の“World Gone Wrong”を思い浮かべたりもする。さて10曲目タイトル・ナンバー「Dreamland」はタイム・カプセルの中を行き来しているような過去と現在の見事な融合がみられる私的ベスト・チューン。今後もこういったマデリンらしいPOP寄りのナンバーを待ち焦がれるのではと、朝と夜の透き間を埋めてゆくこの一枚に耀さを覚え、心地よい眠気がたまらなくいい。ああ明日も仕事はお休みだ。
-NO.522-
【いけ善・蕎麦猪口】
私は蕎麦屋に出かける楽しみのひとつに箸袋を集めることにした。ただしそこの屋号を記した部分だけを切り取って自称4コマノートというものに貼り付けている。もちろん名刺やパンフレットの切り取りはコレクションしない、箸袋もしくは箸帯だけだ。初めてのお店へ行くときなんかは、それらがあるかどうかワクワクするのである。他にも楽しみとして蕎麦猪口やお店の造りや調度品などのレイアウトに興味津々の眼差し。“いけ善”のカウンターには江戸~明治時代の蕎麦猪口が手にとって愉しめる。