“よく歌っている”と演奏そのものを喩えることがあるよね。 また一人寺村容子なる素晴らしい日本人女流ピアニストが現れました。彼女のピアノはよく歌います。彼女の名前はこの頃ちょくちょく目にすることがある。そう、松尾明氏の諸作品や高橋康廣氏のソロ・デビュー作にレギュラー・ピアニストとして名を連ねていらっしゃいます。90年代に大西順子さんらが門戸を広げ、日本女性ジャズの人気と地位を築きました。それ以来多くのピアニスト、いやジャズ・ウーマン達が活況を帯びてきたのもご承知のことでしょう。一方の男性陣はというと情けないの一言ですね。それなりに新人も輩出してきましたが、どうもね。大西順子さんの復帰作も待たれるところで、山中千尋はというとコマーシャリズムに奔り飽きられる気配が漂っています。現役女子大生という松本茜ちゃんもどこか踊らされている感が歪めないしね。どうでしょう、そう考えると自分らしさを表現し頼りになっているのは野本晴美さんとこの寺村容子さんです。
この寺村容子さんは自主制作盤を作っていたらしく、手にする方法はただ一つ、彼女自身から購入するのみだそうです。いつもライブなどに持ち歩いているみたいですよ。それって欲しいよね。でもその前に聴いてもらわないといけない一枚がこの『うさぎの大冒険』。寺村容子(P)、磯部ヒデキ(BS)、大澤基弘(DS)の三人が結成した《十五夜》というトリオ。たぶんリーダーはドラムスの大澤氏。何と可愛らしいバンド名にアルバムタイトルなんでしょうか。ジャケットも合わせて期待が膨らむのも当然でしょう。では一緒に聴いてみましょう。
CDプレイヤーのスタートボタンを押すと僕の気を惹くためかと思うくら静かに始まる。時間(とき)が進むにつれ熱気を帯びてくる「透明な湖」。タイトルからしてこんな情熱的な曲想だとは予想だにしてなかったなぁ。しかも曲を作ったのがドラムスの大澤氏。ドラマーがこんな曲を書いていいのかと。いやいや書けることが嬉しい。大抵はピアニストと相場は決まっているようですが、今の世の中ベーシスト然りドラマーもいい曲を書いているんです。つづく「月-A Lua-」はもっと静かなテーマで始まります。終始ゆるやかに進み、まるで月の湖(うみ)で舟でも浮かべているような趣ですね。これも大澤氏のナンバー、うんいいね。ついにというか3曲目「うさぎの大冒険」のイントロで大澤氏のドラムが跳ねちゃいます。ファンキーなナンバーでいて凄くメロディアスなんだよね。肝心の寺村さんのピアノはというと心配なさらなくてよ。どっしりと地に足がついた演奏で、よく歌ういいピアノ、いい音です。余談ですが、ずっと前に《大冒険》という床屋さんが奈良にあったのを思い出しましたよ(笑)。
全10曲中、他人様のお作りになった4曲もまた素敵でなさいます。パット・メセニー&ライル・メイズの可愛らしい「ジェームス」、ゴスペルライクなオスカー・ピーターソンの「自由への賛歌」を選曲してくるあたり、僕のツボを押さえてきます。嬉しくてゴロゴロしちゃいます。さ~て残すは寺村容子さんのオリジナルです。
5曲目の「フロントガラス」。走る車のワイパー越しに降りそそぐ雨だれ、そんなイメージでしょうか。女性らしいといえばそんな曲想ですね。フレーズの作り方が巧いです。ちょっと前にアップした小嶋良喜さんにどこか似ているスタイルと申しておきましょう。 もうじきシーズンです9曲目「桜ふぶき」、桜が散る々情景を映し出したナンバーです。しかも夜桜です。花見で一杯。もう酔っています、僕も寺村さんもってな感じで皆さんも酔って(寄って)いただきましょう。感情移入しやすい寺村さんのピアノです。 早くリーダー作、出してくださいね。早く。早くにね。もちろん十五夜のセカンドでもいいですよ。
-NO.508-
【陽菜田】
水戸駅北口からほど近いところにある居酒屋さん。階段を登り店の扉を開けるとちょっと洋風居酒屋かなと思うが、座敷の方はゆったりとし和のテイスト。何が良かったってBGMですよ。70年代の洋楽邦楽が交互に笑っちゃうくらい流れています。もちろんお料理も和洋折衷でよろしいかと。