皮肉にもビーチ・ボーイズのメンバーであるカール・ウイルソンとアル・ジャーディン二人のビートルズ・マニアとすでに自分自身の影をも見極めることができなくなったブライアン・ウイルソン、マハリシ・ヨヘギに心酔してしまったマイク・ラブとその対角に位置したチャールズ・マンソン・ファミリーと化したデニス・ウイルソン、幻とされるモンスター・アルバム【スマイル】を取り巻くすべてが【破壊】と【再生】を繰り返し、彼ら出口の見えない暗黒の時代へ。
さてあの曲、手に馴染みやすくかつ複雑な「グッド・ヴァイブレーション」は希に見る勇敢な名曲である。ビートルズが叩きつけた《サージェント・ペパーズ~》に挑発され、それや自らの《ペット・サウンズ》を超える【魔物】に取り付かれたブライアンが1000ピースとも云われる音源を一繋ぎにしようと試みるが儚くも細胞分裂をし始める。《ペット・サウンズ》の次なる作品《スマイル》はまさにバブル崩壊となった。また《スマイリー・スマイル》での「英雄と悪漢」は、その飛び散った音源を無理矢理つなぎとめた感はあるが、そのひとつひとつは素晴らしく、ドラッグやプレッシャーに蝕まれたブライアンが数秒にしか満たないモノ、曲としては捉えることのできないモノまで、それら溢れかえる音塊を日々節せと書きまとめていたのだ。そしてその多くは、後出の作品群に含まれることとなる。そして今ここにあるまことしなやかなアルバム『フレンズ』は、まったくと言っていいほどその影響を受けず、隅からすみまで【さわやかさ】を感ずる。負の遺産とも云われる時代にあって一際やさしい光につつまれた作品だ。と同時にカールがブライアンに代わって音楽的監督を担うようになるターニングポイント的作品でもある。ヴォーカルはカールやアルが台頭し、曲作りにはデニスやブルース・ジョンストンが頭角を現してくる。
表題曲「フレンズ」は冒頭の38秒の「メント・フォー・ユー」に導かれ漆黒の闇からすっと現れ、サビの部分ではビートルズ・ライクな展開を見せる。ブライアンの発声がまさにポールそのものとなった「世界よ目をさませ」ではホルンやキーボードが、「ビー・ヒア・イン・ザ・モーニング」でのウクレレはシタールに対抗してか予測不可能とされたニュー・サウンドは予測可能な領域へ。さり気なく、嫌味もなく、そして惜しげなくビートルズ・サウンドのツボをしっかりと捕らえている。レコードでいうA面ラストの「パッシング・バイ」にしてもただ♪ア~ア~ア~とただそれだけを歌っているのに、哀愁を帯びた美メロとなって僕の心をとかしてゆく。「リトル・バード」はめずらしくデニスのリード・ヴォーカル。中間部での転調の仕方は笑えるほどビートルズそのものだ。
『フレンズ』は実に愉しいアルバムであり、彼らの作品の中でも僕は愛でることに喜びを感ずる。
-NO.503-
【ヴォーリズ記念館(旧邸宅)】
一柳(ひとつやなぎ)米来留(めれる)という建築家をご存知であろうか? 彼が残した遺産は全国に多く息づいている。気取ることのない建築美は飽きることを知らない。あの近江兄弟社を興したのも彼だ。