私は写真やカメラが好きである。たいていの男性はそうだと思うし、子供心と一緒で覗くという行為が好きな人種でもあるに違いない。それらは私の場合趣味という域にあるものでもなく、ただ日常的に持ち歩き、特別に被写体を選んでいるわけでもない。書く行為が日記なら、撮る行為の日記のようなもの。そんな折この他愛もない一枚の写真に相応しい音がないものかと見つけ出したのがラーシュ・ヤンソンの新作『ワーシップ・オブ・セルフ』ということだ。
ヤンソンの作品は殆ど持ち合わせており、どれもが高水準の出来でハズレがなく、これからヨーロッパ・ジャズを食指しようとお考えならばお勧めのミュージシャンである。今やヨーロッパ(北欧)・ジャズの重鎮とも称されるベテラン・ピアニストの一人で、とにかく安心して聴ける。今回の作品はクラシックとの融合が極めて美しく、静謐な趣が辺りを支配している。以前ボースレン・ビッグ・バンドを従えた『ワン・ポエム、ワン・ペインティング』という作品を捉え、それを超えるものは出てこないと断言した私だった。たしかに一度二度、いや三度と聴いたところであれを超えるとは夢想だにしてなかった。しかし・・・今そのハードルを軽々と越えてしまった。ヴァイオリン、ヴィオラ、チェロの弦楽にオーボエやフルートの木管とヤンソンの鍵盤がものの見事なアンサンブルを紡ぎだすのである。こりゃ参ったの一言。いきなりの「サヴァーサナ」はジャズ独特の匂いやクラシックの響きとは一切無縁であり、ラーシュ・ヤンソンとアンサンブル・ミッドヴェストだけに与えられた音世界。静かな夏、自分一人のどかに過ごす夏、どこかCMなんぞに何気なく使われてそうな三重丸の曲想だ。つづく「スクールダンス」はほど良いグルーヴ感が持ち味。クリスチャン・スペディングの爪弾くベースが8ビートに乗ってミッドヴェスト達を促す。このアルバム全編にいえることだが、特にこの曲では珍しく跳ねるようにヤンソンが弾くピアノ、音の粒立ちが際立ち沈んだ気持ちも晴れやかにしてくれるような作品。
悪く言う北欧にありがちな暗く重い雰囲気は微塵もなく、クラシカルな嗜好はほどよくブレンドされ、母国スウェーデンに訪れる一瞬の夏の輝きを教えてくれる。そんな一枚の絵のようであり、一枚の写真のようでもある。もちろん私の撮った他愛もない川原でのベンチの写真に捧げてくれたと勝手に思い込んでいるのである(笑)
-NO.488-
【水郷東大橋・川原のベンチ】
これはモエレ沼公園の玄関口にかかる水郷東大橋から川原を覗くと木製のベンチが。傍には夏色の白い花が咲いていました。ただそれだけですが、ずっと見ていたい、そんな焦燥にかられてシャッターを切った一枚です。