音楽は不思議なものでお国によって評価が天と地ほど違うことがある。特にジャズにおいては顕著であり、そのいい例がトランペッターのケニー・ドーハムだ。なぜ本国アメリカでは過小評価なのであろうか、たしかに彼が活躍した50年代といえばハード・バップ全盛期で、華やかさに欠けるドーハムはアメリカ人には歓迎されなかったのだろう。ではなぜ日本人、すなわち私に好かれたのか。それは日本人が好む憂いたっぷりのマイナー調のオリジナルがあるからだ。皆が揃えて口にするように、曲だけでなく少し霧がかかったような淡く甘いトーンが琴線をくすぐるのである。想像しただけで聞こえてきそうなもの、その究極の作品が『静かなるケニー (Quiet Kenny) 』。
さてメンバーも凄いぞ! ピアノにはトミー・フラナガン、ベースにポール・チェンバース、アート・テイラーのドラムとこのうえない布陣である。私はもともとフラナガン聴きたさにこの盤を手にしたのだが、フラナガン以上にブルーでセンチメンタルなフィーリングにしてやられた。ジャズ初心者だった私は「マイ・アイデアル」や「アローン・トゥゲザー」を来る日も来る日も聴いていた。その後一時飽きたように聴かなくなったドーハム、ジャズに嫌気がさして浮気モノ(ジャズ以外の音楽を聴く)に奔ると、もうこれでジャズは聴かなくなるのかななどと心配になる。そうなった時こそ、次の2曲で一気にブルーでセンチメンタルな世界へ戻してくれるのだ。是非その2曲を聴いてジャズの世界へ入り込んでいただきたい。そしてジャズへ永遠の愛を誓ったら「ブルー・フライデー」や「ブルー・スプリング・シャッフル」、後の「ブルー・ボッサ」に心酔するがよい。この静かなる蒼き炎に包まれたら、もうここから逃れることは不可能だ。彼が作る作品には《ブルー》とつくものが多いが、他の作品も彼が奏でるとどうしてもタイトルに《ブルー》とつけたくなってしまうほど《ブルー》している。
-NO.487-
【常滑・やきもの散歩道】
常滑焼といえばイの一番《朱》の急須が思い浮かぶだろう。以前と違って観光客に喜んでもらおうと、町興しの一環でやきもの散歩道なるロードがある。焼物はもちろん洒落たカフェなどもあちこちに見かける。ここは一日ゆっくりと時間をかけて過ごしたい。モノクロが似合う裏路地、その先には何かあるとこころ膨らむのである。