前話のアート・ペッパーと時を同じくして聴いていたのがジャッキー・マクリーン。どちらかというと僕はマクリーン派だったと思う。手に持った楽器は奇しくも同じアルト・サックス。しかしこの両雄、同じ楽器とは考えられないほど別世界を築いた。何故キミはマクリーン派なんだい? その答えはこうだ。
一つにペッパーと違って生まれつき生身の人間だったこと。二つには神に憧れ神になろうとし、悪魔に犯されたこと。三つとして音そのものが凶器だったことだ。
1961年10月26日に仕上げた6曲、アルバム『A Fickle Sonance』にそれぞれがそれぞれの相応しい居場所に置いてある。1曲目はこれしかない、そうソニー・クラーク作「Five Will Get You Ten」。オーソドックスなジャズから脱皮しつづけたマクリーンが遠慮がちにジャックナイフ(後のアルバム・タイトルに使われる)を抜いた瞬間だ。油断していると鋭利な刃(やいば)の冷たい感触が肌を通る「A Fickle Sonance」。3分少し手前でトミー・タレンタインの虚空を突き刺すようなトーンが合図だ。ブルース・フィーリング溢れるソニー・クラークのピアノに枯れた味わいのブッチ・ウォーレンのベース、正確無比で決して手数の多くないこの頃、間の使い方が絶妙なビリー・ヒギンズのドラム、もちろんマクリーンも煽られ狂喜乱舞となす。皮肉にも彼が書いた名バラッド「Subdued」は腰が砕けるほどに甘く切ない。彼はペッパーと違って男らしく、とろけるほど格好いい音。好き嫌いの分かれる音色ではあるが、僕はとことん好き。これは感覚のみで味わう音ではなかろうか。
-NO.484-
【金沢21世紀美術館~感情のテイスティング】
金沢でいま最も人気のあるスポットで、気軽さと常に変化しつづける感覚を芸術として形にした皆のための美術館である。その一角で《感情のテイスティング》なるフード・クリエイション、食欲のデザイン展が行われていた。怒りこみあげるテイスト、悲しみのテイスト、失意のテイストと大きく3つに分れ、全部で70強ある料理をランダムに選んで参加者の元へ。悲しみの味、けだるさの味、わずらいの味等など。いま食べたのは何の味? 参加料は1,000円。みんな難しそうな顔をしているのが分かりますか(笑)
-sensuous food, emotional taste-