ちらりと目をやった先にはアート・ペッパーのALADDIN盤『the art of pepper』の黄色いジャケットが。懐かしさを覚えるくらい久しく聴いていない。そもそもアート・ペッパー自体ホントご無沙汰しているわけでして、初めてペッパーに出会ってからもう30年近くにもなる。モダン、リターン、そしてこのアラジン、貪るように毎日日課のように聴いたものだ。
僕は管ものはあまり聴かずピアノものばかり聴いていたとき、すんなりと入ってきたのがアート・ペッパーだった。湯水の如く湧き出るアドリブが天才的といわれ、女性的な音色とともに日本では圧倒的な人気を誇った。確かにメロディアスで、体内を流れる血の如く巡り狂ったものだ。万人向けといえばそれまでだが。
しかし、彼も見えないプレッシャーの波にのまれそうになり、アルコールとドラッグに溺れてしまうのだ。そして長い、長すぎる沈黙のなか60年代後半に劇的な復活を遂げた。リヴィング、ノーリミット、インテンシティ、トリップなどの復帰諸作に聞くは逞しさを湛えたペッパーがいた。もちろん美しさは損なわれてなく、より人間味溢れる音像がある意味ホッとさせてくれた。コルトレーンに傾倒した時期もあったが、それすらより人間的ではあるまいかと可愛くも思えた。それだけ50年代のペッパーは超越した存在であったと言えよう。こうして身近な存在となったペッパーは今から15年ほど前に感じたのだった。
一般的、いや大方は50年代のペッパーが最高だとおっしゃるでしょう。それに間違いはない、誰も反論はしないであろう。いま僕の部屋ではペッパーの吹く「Begin The Beguine」が鳴り響いている。バース部から主題へ、さあ世紀のアドリブへと。それにしても人間業とは信じ難い。どこまでがアドリブ、どこからがアドリブ。もはやアドリブの存在が不朽のメロディへと昇華してしまっている。これは神の仕業だ。
-NO.483-
【ディスクユニオン新宿ジャズ館】
未だに疑問なのが店名。BIGでなくBICカメラ、discでなくdisc unionなのよね。今でこそアチラコチラに店舗を構える国内でも老舗的存在のレコードショップ。敢えてレコードだ。僕にとっては遊園地そのもの。