70年代半ばお洒落な大人のロックといえばTOTOみたいなコンテンポラリーなロックバンドがすぐに思いつくが、ちょうどそのころカンサスやボストン、ジャーニー、スティックス、ELO、スーパートランプといったプログレッシヴでハードなロックが持てはやされていたのだ。その中でも異色のバンドにフォリナーがいた。英米混成の6人組で、イギリス人の元キング・クリムゾンのイアン・マクドナルドと元スプーキー・トゥースのミック・ジョーンズが中心となって結成したところに面白みがあった。
この2人ならともっと英国的な音を想像していたのだが、キャッチーでいてどちらかというとアメリカンな装いに戸惑ったのは僕たちの方だった。出来過ぎたデビュー・アルバム『衝撃のファースト・タイム』がベストには変わりないが、このセカンド『ダブル・ヴィジョン』こそ人気と実力を彼等自身が確信した内容とセールスを記録したのだ。アルバムからのシングル「ホット・ブラッディッド」の荒削りで少しルーズなミックのギターが小気味いい。つづく「蒼い朝」や「君は僕のすべて」で聴かれるコーラス&ハーモニーは、彼等がビートルズや60年代後半のブルー・アイド・ソウルなどをアイドルとしてきた影響がモロに出ていていい雰囲気だ。後者などは知らない人にビートルズだといっても分からなくらいだ。そうかと思えばアルバム一番のハード・ヘヴィな「ダブル・ヴィジョン」は、ただハードだけではないんだぞと言わんばかりにしっかりと計算されている。マクドナルドの吹くサックスを効果的に絡ませ、そこにミックのスリリングでブルージーなギターが格好いいリフを終始絡ませている。さらに一つの楽器とみなしたほうがいいだろう、ルー・グラムのヴォーカルがサウンドに厚みをもたらせており、実に音の組み立て方が上手いバンドだなぁと今更ながらに思うのである。マルチ・プレイヤーのマクドナルドの存在と、決してテクニックがあるわけでもないミックのギターと曲作りの才が、千変万化のロック界にとどめを刺した聴き応えのある作品だ。
それにしてもあの曲「ダブル・ヴィジョン」においてミックのギター・ソロがないことに今気付いたのだ。ソロがなくてもあんなに格好良ければいいじゃんね。それも湯水のごとく湧き出る曲作りのアイデアと、格好良さのツボを知り尽くしているからなのであろう。
-NO.476-
【おかげ横丁 すし久】
伊勢参りに馳せ参じ疲れたからだと空腹を満たすため、旅籠風の屋敷へと足を踏み入れる。二階へ上がるなりそこには別世界が待っていた。窓の外に目をやると清流五十鈴川が流れており、いや応なく気持ちも静まる。名物『てこね寿し』は是非味わってもらいたいものだ。王道のてこね寿しにするか、伊勢芋麦とろろにするか思案の影が愉快である。