ヒトには誰にも教えたくない自分だけのモノが少なからずあるでしょ。でも教えたくない反面、黙ってはいられないのがヒトなんでしょうね。あのバド・パウエルに師事したバップの申し子、バリー・ハリスの1991年作品『イン・スペイン』がそのモノだ。マイナーなレーベルから発売されたこともあり、なかなか手に出来ないファン垂涎のアイテムだった。
私自身バリー・ハリスにはあまり縁がなかったようで、家中探し回ったが5枚しか持ち合わせていなかった。バリーは若かりし頃からどちらかというと老練なピアノを弾くタイプで、少しくぐもった音をしていたが、歳を重ねるごとによりクリアな音を弾くようになっていた。後に発表される日本企画盤アルファからの諸作品などは、とても70歳を過ぎたお爺ちゃんが弾いているとは思えないくらいエネルギッシュで熱い。そして若い。きっとバリーの写真を見せたら誰もがこんなお爺ちゃんが居てくれたらなぁと思うんじゃないか。
さて本盤のベストは1曲目の「Sweet Pea」だ。スペインといえば情熱の国、悠久のかなたからアンダルシアの風に乗って運ばれ、真っ赤な夕日に染まるアルハンブラの丘に沈んでしまうかのような儚く響く曲。バリー本人はそんなイメージなど微塵もないと思うのだが、何ゆえスペインの地で録音したのか訊いてみたいものだ。つづく2曲目「A Bird In Had」はさらにセンチに陥った感じの曲想で、バリーの独壇場かと思った矢先チャック・イスラエルの図太いベースが炸裂する。いやぁ、こんな黒光りしたチャックのベースは後にも先にもここだけであろう。既にこの2曲でコテンパにやられた僕。ボクシングでいう3ノックダウン制ならあと一回。しかしその時はやってきた。4曲目「Alexis Leigh」は終始ダウン・トゥ・アースな趣に徹し、この上ない極上のディナーを運ばれた感じ。ここでのメインディッシュはバリーの指使いだ。その正確無比の指の運びは、一時の不調を吹き飛ばす勢いがある。見事4ラウンドKO負けだ。
満を持してアップしたとは言わないが、これは誰にも教えたくなかった1枚かも。
-NO.474-
【そば処 三里】
谷根千といわれる谷中・根津・千駄木界隈がにぎやかだ。そしてそこに魅せられてきたこの数年。ひっそりとした佇まいをみせているのがそば処《三里》だ。おすすめは《鴨せいろ》。コリコリとした食感がたまらない《つくね》は絶品。お酒を飲みながらゆっくりと過ごしたいお店です。ホントは誰にも教えたくなかったのはこのお店だったかも(笑) ちなみにここのご主人は愛知県出身で、私も行った折には必ず昔の話が出てくる。そうだなぁ、最近顔を出してないなぁと思いつつ、あの鴨汁がジュワ~と広がる夢を見た。