幽藍神采 | 東京人在上海(上海の東京人)

ステイホームということで、SNSではブックカバーチャレンジなるものが流行っているようです。

表紙ということで、この本を思い出しました。

2012年に上海博物館で元代青花磁器の特別展が開かれた際に出版された、『博物館絵本 元青花』です。この本は、
表紙が壺型に外れます。なぜかは知らないけれどw

青花とは染付けのこと。

“幽藍神采”と銘打たれた、この特別展は、国内外約40カ所から90点余りの元青花を集め、それまであまり注目されることのなかった元代青花の魅力を広く世に知らしめました。

遊牧民の王朝であった元の青花は中国国内に完品が少なく、交易品として渡ったイスラム圏にたくさん残っています。

トルコに40点、イランに32点保存されているそうですが、イスラム圏に向けての交易品のものはイスラム文様のような緻密な植物柄が特徴で、人物の描かれたものはありません。偶像崇拝禁止のイスラム教では磁器に人物の描かれたものもNGなのだそうです。

しかし、こちら、2005年のクリスティーズのオークションで30億円もの高値がついた「青花鬼谷子下山図罐」は↓
人物が描かれた珍しい元青花でした。

ペルシャから輸入された高価なラピスラズリを使った青花はヨーロッパで大ブームとなりました。でも、漢民族は同じ青でも本当は「青花」より「青磁」の方が好きなんですよね。

しかし、青磁は元々が翡翠を模してつくられたものなので、「青」というより「緑」です。
私も越窯のこの緑が好きです。そういえば、ファイヤーキングも翡翠のあの緑を真似て作っているんですよね。

宋代には、雨の晴れ間の空を模して作られた汝窯や龍泉窯で青磁が作られましたが、これも「青」というよりは「水色」です。

漢民族は「青」に本当に思い入れがないようで、元から明になると、青花では飽き足らず赤絵や豆彩で鮮やかな色彩が加えられていきました。

それに対し、日本では染付からさらに青を追求し、呉須焼が生まれています。日本人にとって青は母なる海の色です。

出光美術館所蔵「青花昭君出塞图盖罐」↓
濃厚な青花(染付)で表された頸部の波涛文、肩部の蓮唐草文、裾部の蓮弁文にはさまれた主文様として、元曲「破幽夢孤雁漢宮秋雑劇」が描かれている。(出光美術館所蔵品紹介より)

出光美術館所蔵の蓋もある元青花の逸品中の逸品。匈奴の王に嫁ぐ漢民族女性の王昭君の物語は元の時代に人気があったそうです。



『元青花』、中国では珍しい青一色のハイセンスな絵本でした。