連載小説「ペンフレンド」 -10ページ目

連載小説「ペンフレンド」

男女2人の作家による1話掛け合い形式の連載ブログ小説です。東京に住む女性と神戸に住む男性がメールによるバーチャルな恋愛ストーリー。行きつく先は・・・。

- 木綿子さんへ



- じゃ、続きを楽しみに待ってるよ! なんて言っておきながら・・・

- 書いてます(笑)


- 別に何ってないんだけどね。


- 今日は休みでね、朝から家でボーッとしてた。
- 今は自分の部屋でこうやってパソコンうちながらジャズ聴いてる。

- ソニークリスというアルトサックス吹きなんだけど、
- 彼のサックスって中毒性があって、心が惹きこまれていくんだよ。

- これでウイスキーでもあればさらにいいんだけどね。
- 残念ながらまだ夕方にもなってないから、ちょっとアルコールタイムは早いかな。



 ここまでメールを打って、手をとめた。


 前のメールで木綿子さんから過去の告白があり、ぼくはそれに言葉を選びながら返信した。それから数日がたったが、木綿子さんからの返信はなかった。


 ひょっとしたら、何か木綿子さんの気分を害するような事を書いていたんじゃないだろうか・・・。そう思ったぼくはもう一度自分が木綿子さんに送ったメールの中身を読み返した。


「振り返ればみんな愛おしい人ばかり・・・」

 過去の人間関係に暗い影をおとしている木綿子さんにとっては、ぼくの書いた内容はすべて綺麗事なのかもしれない。自分の書いた文面を読み返しながらそんな風に考えていた。

 逆に傷つけたのかもしれない・・・・。

 そんな風に思うと今度はいてもたってもいられなくなって、気づけば木綿子さんへメールを書いていた。でも考えれば考えるほど、気のきいた言葉がある訳でもなく、それ以上は書けなかった。

 ぼくは彼女の中にある暗い部分をもっと知りたいと思うようになっていた。ぼくの中で彼女を想う気持ちが明らかに以前とは違っていて、何か特別な感情がぼくの心の中に生まれてきているように感じていた。


 ぼくは彼女の無邪気さのようなものに魅かれていた。

 ぼく自身の今の生活の中で、家族との生活に不満がある訳ではない。ただ会社に対する不満からか、自分自身の人生のやりがいのようなものをいつしか追いかけるようになっていた。そんな時に現れた彼女のどこからか舞い降りてきたようなキラキラとした存在に、いつしか癒されるようになっていたんだと思う。


 「男なら必ず一度は通る道ですよ」
ジャズバーブルーマンハッタンのマスターのこの言葉がいつも頭の中を支配している。

 みんな誰しもそうなんだ・・・と思う事で自分の心をおさえつけようとしてきたが、やはり心のどこかに支障をきたす訳で、精神的なバランスが悪くなっている。
 
 妻の薫に何ら不満はない。
いや、むしろ家庭のことをしっかりと守ってくれて、感謝しなければいけないほどだ。


 ただ何かしらイライラした自己嫌悪的な気持ちが常にあって、それが時折ネガティブな方向に向かった時に、木綿子さんを想うようになってきていた。


 少しずつ少しずつぼくの中で木綿子さんの存在感が大きくなってきている。木綿子さんを想うことで、ひょっとしたらぼくの心の中のバランスがとれているのかもしれない。

 でも、木綿子さんに対する想いは、妻子ある家庭人として受け入れるべきものではなく、ぼくの心の中にそっとしまっておくべきもののように感じていた。


 ぼくはもう一度パソコンに向かった。



- 木綿子さん、ぼくもね今色々悩んでる。

- 人生このままでいいのかな・・・なんて。


- その答えがビジネスの独立なのかどうかはわからないんだけど、

- 今のままではぼく自身何も無いんだ。


- ぼくがぼくじゃない・・・っていうか。


- でもね、男だから、大人だから、我慢しなくちゃいけない。
- 我慢できるから大人なんだ。って思うようにしてる。


- 別にね、日常に不満がある訳じゃない。
- ただ自分が自分らしく生きていないんじゃないか・・・って。

- プライドをどこかに置き忘れてしまったように思うんだよ。


- 何が正解なのかなんてわからないし、ひょっとしたら正解なんてないのかもしれない。


- ただそこで自分がどう思って生きていくか・・・なんじゃないかと思う。

- ごめんね。ちょっと愚痴っぽくて。

- 木綿子さんはどうしてる?

- 優也




To be continued・・・   Written by 琉咲 凌