何かを改革しようとするとき、問題がどこにあるのかをきちんと分析しなければ、対策だって決められない。
では、巨額の財政赤字を累積してしまった原因は、何なのか。
大蔵省は、財政赤字の原因を景気対策と公共事業のせいにもしてきた。しかし、それはまったく事実ではない。
平成2年以降大型の景気対策がいくたびか行われ、事業規模は130兆円を超える。とはいえ、真水と呼ばれる実際の財政支出は、その半分もない。せいぜい60兆円と推計されている。
一方、平成元年以降の20年間で、国債発行残高は400兆円以上も増えている。
400兆円-60兆円=340兆円は、一体どこに使われたのか。
公共事業も冤罪だ。公共事業が激減したこの10年、財政赤字は急増しているからである。
こうした嘘を振りまいて、公共事業を削減し、国民の生命と生活を危険にさらす権利が財務省にあるのだろうか。
そもそも財政資金は、国民が、国民生活を守るために拠出した、国民のお金である。財政赤字の本当の原因を明らかにすべきである。
繰り返し述べてきたように、不況下の緊縮財政・増税が、経済をさらに悪化させ、そのせいで税収が激減したことが、財政赤字の主たる原因である。国家予算が約80兆円、それなのに税収が40兆円から50数兆円しかなく、毎年、毎年、20兆円、30兆円の赤字を国債で補ってきたのである。
日本経済と国民生活の再建よりも、財政再建を優先させた結果である。
公共事業や景気対策が財政赤字を拡大したのではない。公共事業や景気対策を行わなかったことが、財政赤字を拡大させたのである。
日本の財政危機は、狼少年が、自らの嘘で実際に狼を招きよせたようなものなのだ。
『平成経済20年史』 紺谷典子
