剛志
最近、私が最もショックを受けたのは、2015年秋の叙勲のニュースです。今回は戦後70年の節目として「戦後日本の平和と発展の重要な基盤を形成した日米関係の増進に大きな功績のあった方々を特に推薦した」(外務省)ということで、「旭日大綬章」を受章した19人のうち日本人は7人しかおらず、半数以上の12人が外国人でした。
その中に、ドナルド・ラムズフェルド元国防長官が入っていたのです。
ラムズフェルドは息子ブッシュ政権下で国防長官を務め、イラク戦争を指揮した張本人です。
平和国家を標榜する日本が、国連安保理の決議を経ない武力行使、つまり侵略戦争をやった人物に叙勲するというのは、恐るべき事態です。同時にリチャード・アーミテージ元国務副長官も叙勲されました。
アーミテージは日本を飼い慣らす「ジャパンハンドラー」として知られています。日本政府にあれこれ指示を出す「アーミテージ・ナイ・レポート」の、あのアーミテージです。
信子
いわば、自分を飼い慣らした主人に対して叙勲するようなものですね。
適菜
安倍首相は国会(衆院予算委員会・2014年5月)で、イラク戦争に対する認識を問われ、「大量破壊兵器が無いことを証明できるチャンスがあるにも関わらず、それを証明しなかったのはイラク」と、イラク側に非があったといわんばかりの発言をしています。
これは俗に「悪魔の証明」と呼ばれるもので、当然、挙証責任はアメリカ側にあります。
要するに、安倍は思考回路がおかしい。
だから「普遍的価値」を掲げてイラク戦争を主導したアメリカのネオコンたちの無残な失敗をいまだに認められずにいる。
その延長線上に、今回の叙勲があるわけです。
『脳・戦争・ナショナリズム』
中野剛志 適菜収 中野信子