「デュ・モーリア傑作集 いま見てはいけない」創元推理文庫 | サーシャのひとり言

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デュ・モーリアの短編集。
収録作品は
「いま見てはいけない」
「真夜中になる前に」
「ボーダーライン」
「十字架の道」
「第六の力」

どの作品も最後の1ページまでどうなるのか分からない、しかもゾッとするような後味の悪さ。(「十字架の道」はコメディタッチでこれには当てはまりません)
それでも怖がりながらもついつい魅入られたように読んでしまう面白さも・・。
中でも表題作の「いま見てはいけない」と「第六の力」はおすすめです。

以外、解説からの引用+αとなります。
ネタバレを含むのでご了承ください。


「いま見てはいけない」
舞台はヴェネチア。
幼い娘クリスティンを髄膜炎で亡くした傷を癒しにヴェネツィアを訪れたローラとジョンの夫婦はレストランでスコットランド人の奇妙な姉妹と会う。
姉の方は視力を失ってから霊的な力が宿るようになったという。彼女は夫婦の間に、亡くなった娘が幸せそうに座っている姿が見えたと言ってローラを喜ばせるが、ジョンはこの邂逅に何故か不吉なものを感じる。姉妹は、ヴェネチアにいるとジョンの命が危ういとクリスティンが伝えているというのだが……。  ヴェネチアの河の水面が、現在進行形で起きている連続殺人事件とジョンとローラの過去、そして未来をイマージュのように映し出す、ダークで幻想的な作品。


「第六の力」
発達障害の子どもニキを媒介に使い、白血病で死にゆく青年の生命エネルギーをコンピューターに取り込もうとする研究者グループの話。

ラストの不可解な描写からは、研究者たちが手を出してはいけない領域に踏み込んでしまった事の恐ろしさが深深と伝わってきます。
肉体が亡くなったあと、コンピューターに閉じ込められたケンの知性は?
そして政府の役人から研究を隠すために、コンピューターから解放され自由になったその精神エネルギーは何処へ?
私的にはこの短編が一番面白かったです。