「名画で読み解く ハプスブルク家12の物語」中野京子 作、光文社新書 | サーシャのひとり言

サーシャのひとり言

音楽や絵画など日々見たり聴いたりしたことの備忘録的ブログです。

12の絵画作品をベースに、中野さんらしい分かりやすい語り口で、ハプスブルク家の650年に渡る歴史の流れを綴った本。
ハプスブルク家が表舞台に躍り出た王家の開祖ルドルフ1世から始まり、最後の章はマネの描いたフランツ・ヨーゼフの弟でメキシコ皇帝となったマクシミリアン大公の処刑。
長い帝国史の概要を俯瞰できたような気分になれて非常に面白く読めました。



✳️やはり読んでいて特に興味深かったのは以前から惹かれていた女王フアナやフェリペ2世の章。

ティツィアーノによる皇太子時代のフェリペ。
素敵ー!!ラブ
ヴェルディのドン・カルロでは息子の婚約者エリザベートを横取りする老人ですが、史実では彼女と結婚した時のフェリペはまだ32歳。
老人どころか色々問題点の多かった息子ドン・カルロよりよほど素敵だったのですよ。

ちなみに2番目の妻はあのブラッディー・メアリー。
メアリー女王本人は、政略結婚で11歳も年下のフェリペが好きだったようですね。想像妊娠までしますが、実は腹部の膨隆は腫瘍によるものでこれが元で亡くなります。何だか切ないお話です・・。

メアリーの死後、フェリペが結婚したのがエリザベートですが、代理人挙式の際、馬上槍試合でエリザベートの父アンリ2世が亡くなるのが有名なノストラダムスの予言的中例です。(この事故の際は解剖学者ヴェサリウスも駆けつけます!)



✳️マネの「皇帝マクシミリアンの処刑」の右端。
オーストリア皇帝フランツ・ヨーゼフの次弟マクシミリアンがナポレオン3世に担がれて傀儡政権の皇帝としてメキシコに渡って3年後、共和派に敗れて処刑される場面を描いたもの。

中野さんの説明を読んでから見ると、右端の男性は確かにナポレオン3世によく似ています。
つまりマネは、マクシミリアンはメキシコ共和派のファレスではなくて、実質ナポレオン3世に殺されたと言外に示唆しているのでしょう。
画中の兵士が着ている制服も革命軍のそれでは無くてフランスの軍服とよく似たものに変えてあります。

なお、実際の処刑の写真ではマクシミリアンは無帽ですが、マネの絵ではソンブレロを被っています。
中野さんの説明では、この絵は明らかにゴヤの「マドリッド1808年5月3日」を意識した作品なので、ゴヤの絵の中央の白いシャツの男性の手掌に聖痕ににた傷があるのに対応する様に、光輪的にソンブレロを被せたのでは?とのことでした。
まぁ、でもゴヤと比較するとこのマネの作品は即物的過ぎますね・・。

ナポレオン3世

✳️上記のマクシミリアンの本当の父親?とも噂されるナポレオン2世ライヒシュタット公。
由緒ある王家のプリンセスを所望するナポレオンに、ハプスブルク家のフランツ2世(神聖ローマ帝国最後の皇帝)から人身御供の形で嫁がされた王女マリー・ルイーズとの間に生まれました。

トーマス・ローレンスのライヒシュタット公。
まさに美少年です・・。照れ

他の作品もどれも興味深い内容でした。