アリオストの「狂えるオルランド」は、オルランド本人とは直接関係のないエピソードが至る所にはめ込まれて叙事詩の時間軸の横幅を広げているのも魅力の一つですが、その数あるエピソードの中でも特に好きなものがイザベル&ゼルピン、アリオダンテ&ギネヴィアのロマンスです。
ヘンデルのオペラ「アリオダンテ」は、このキラキラ輝く正統派純愛ロマンスの原作に忠実に作られた作品だけあって、台本的にも言う事なし。
とにかく主人公アリオダンテのアリアがどれも素晴らしいのですが、ズボン役が当てられるのがまたぴったりで良いのです…。
主役アリオダンテはとっても優しく真面目で真摯な騎士の鏡。
ですが、ポリネッソ公爵のあまりにも単純な罠にかかって絶望して崖から飛び降りたりとちょっと真面目すぎ、そして剣術の腕も弟ルルカーニオにはかないません。
そんなちょっぴり頼りない繊細さも魅力の正統派王子キャラ アリオダンテをこちらのDVDでは、メゾのアン・ハレンベリが実に柔らかな声で歌い上げています。(ちょっと太めですがご愛敬)
対する悪役ポリネッソ公爵もメゾのマリー=エレン・ネシ。
初登場からうっわー、と思わずうなってしまうほどの悪役ぶりで、「ジネーブラ~」といやらしそうに王女に変装させた恋人ダリンダに呼びかける所など、男声だったら絶対パス!という雰囲気もズボン役ならウェルカムなのは不思議なところ…。
すっきりした演出もおススメ。
国王が飼っている設定のわんちゃんが出てくるのですが、舞台の上でも物怖じせずに良い子にしていてとっても可愛いですよ。
ヘンデル「アリオダンテ」DVD
指揮 アラン・カーティス
イル・コンプレッソ・バロッコ
演出 ジョン・パスコエ
収録 2007年 スポレート音楽祭・ライヴ
アリオダンテ アン・ハレンベリ
ポリネッソ公爵 マリー=エレン・ネシ
ジネ―ヴラ ラウラ・ケリーチ
ダリンダ マルタ・ヴァンドーニ・イオーリオ
上記所有音源とは異なります。
第一幕アリオダンテ「ここでは小川も芝もブナの木も彼らの言葉で恋する私に愛を語る」
第二幕アリオダンテ「浮気な女よ」
第三幕アリオダンテ「暗く憂鬱な夜のあとで」