「ムーミン谷の夏祭り」
トーベ・ヤンソン 著
下村隆一 訳
講談社文庫
この本の前に読んだのがちょっとシニカルな「ムーミンパパ海へ行く」でしたので、すべて丸く収まるハッピーエンドのこちらの本は無条件に楽しめました!
面白かったです。
もうすぐ6月の夏祭りを迎えようとしているムーミン谷。
例年はもうとっくにムーミン谷へ帰ってきているスナフキンが今年はまだ現れません。
しばらく前から不穏な動きを見せていた火山がある日爆発します。
海水が押し寄せムーミン谷は水の下に…。
ムーミン一家とスノークのお嬢さん、ミイ姉妹、ホムサとミーサは流れてきた不思議な建物に移動し、ムーミン谷を後にします。
木でできたリンゴや風景を描いたカーテン…様々な見せかけの物であふれたこの風変わりな建物をムーミン達は化け物屋敷と勘違い、でもそれは舞台監督の未亡人エンマが守ってきた劇場だったのです。
「劇場って何ですの?」とマイペースなムーミン一家にエンマはイライラ。
ある日、ムーミンパパが大きなナナカマドに家を括り付け、ムーミンとスノークのお嬢さんが木の上で寝ている間、エンマがそのもやい綱を外してしまいます。
ムーミン達を木の上に残したまま、劇場の家はぷかぷかと流されて行き…。
パパやママと離れ離れになったムーミンとスノークのお嬢さん、家が浅瀬に乗り上げた勢いで水の中に落ちてしまったミイ。
一方、○○するべからずと書いた立て札を公園中に立てて子供たちを管理する公園番夫婦に一矢報いるために夏祭りのイヴを待ち構えるスナフキン。(夏祭りのイヴにニョロニョロの種をまけば芽を出してあっという間に成長します。生まれたてのニョロニョロは特別多く帯電しているので、公園番の制服の金ボタンをスパークさせ、その間に立て看板を引き抜いてしまおうという魂胆)
そして、はぐれた息子に居場所を知らせるために、エンマの指導でムーミンパパは劇を書き、皆で上演することに。
最後、劇の初演の日にチラシを見てはぐれていた一同は再会、大水も引いた懐かしいムーミン谷へ帰って行きます。
中でも面白いのは、公園番をやっつけたスナフキンがそこにいた24人の子供たち(置き去りにされたり迷子になった森の子供たち)になつかれ暫らく彼らの親代わりをするエピソードです。
あの自由人のスナフキンが「親ともなれば、こんなふうになってしまうんだなあ。今日はあの子たちに何を食べさせたものだろう」と思い悩んだり、子供のあやし方をミイに教わったりするのですね。(ミイの言うことはまるきり間違ってますが…)
意外なほどほほえましい新人パパぶりに結構ほんわかしました。
フィンランドのムーミン島では憧れのスナフキンとツーショットが撮れる、かなあ…。