国立歴史民俗博物館のくらしの植物苑にやっと行ってきました。JAFカードを見せると、なんとたった50円で入園できます。毎月「観察会」があって、無料で講義をうけることもできます。なんて素晴らしい。4/27の観察会に参加してきました。
今回の観察会はサクラソウの話。サクラソウは 古典園芸植物の一つです。
「江戸期以来2,000種を数えますが、現在、栽培されているのは400~500種(野田さくらそう会のお話)」といわれる種類の多いサクラソウ、展示もしているのでわくわくと出かけました。
園内にはいっぱいサクラソウが展示されていました。
花の大きさも花の形も色も様々。
垂れ咲き 玉咲き 裏表で色が違い 表に裏の色が出ないもの かな?
こんな色もあるのですね。
花びらが大きいです。
こちらは小さい。
鋸のようにギザギザの花も。
なんと八重咲き。舞紅葉
小桜重
鹿島
小町紅
東王父は中国神話の仙人。
はんかいは 中国の漢の功臣
実に様々なサクラソウ。驚きました。
講義会場の東屋にはこんな素敵な展示も。
文政13年には漆塗りの箱に寒天を流し固めてサクラソウを挿して飾った記録があるそうです。素敵な発想ですね。
前半のサクラソウの歴史の話は私を夢中にさせました。
自生のサクラソウを庭に植えて楽しむことは室町時代からされていたらしく、興福寺の大僧正の日記にサクラソウが庭に咲いているという記載があるそうです。
また江戸時代のいろんな絵師の四季草図に サクラソウが描かれています。
このころは自生する花を庭に連れ帰って楽しまれていたようです。
自生のサクラソウ
江戸中期になると園芸品種化が行われるようになりました。突然変異を選抜したものです。
寛永の荒川の瀬替えにより広大な原野がいくつもでき、大洪水で上流の長野や群馬の高地からサクラソウが流れ着いて繁殖したのか 荒川周辺の原野に沢山のサクラソウが自生するようになりました。江戸庶民はサクラソウを見に出かけ、摘んで楽しんでいたそうです。
---花の頃は、この原一面朱に染む如くにして、朝日の水に映ずるがごとし。また此の川に登り来る白魚をとるに、船にて網を曳き、あるいは、岸通りにてすくい網をもって、人々きそいてこれをすなとる。桜草の赤きに白魚を添えて、紅白の土産なりと、遊客いと興じて携かえるなり。
「江戸名所花暦」文政10年(1827)岡山鳥ーーー
江戸の町では 団子一串ほどの値段でサクラソウを売り歩いていたんですって。
江戸後期になると 武士が中心の「連」という愛好会が作られ、新品種を持ち寄って品評したり競い合ったりしたそうです。門外不出の掟があって 非開放的な組織だったそう。
鑑賞するのに、桜草花壇(段飾り)という作法が生まれました。
桜草花壇
また、園芸品種化は武士が主体だったので 能や和歌、漢詩などに由来する名前をつけることが多かったそうです。
大型の花や 花の裏表で色が異なり裏の色が表に出ないもの 花の咲き方が変わっているものなどが珍重されたようです。
明治維新で「連」もなくなってしまい、衰退しそうになりますが、愛好会によって継承され、明治40年に植木屋から311種のサクラソウがのっている本が刊行されています。
さらに、関東大震災や東京大空襲などで株が絶えてしまったり、世界大戦で愛好会も中断して、サクラソウ栽培は衰退しましたが 現在は各地にサクラソウ愛好会ができ 今に続いているということでした。
日露戦争の時期には軍艦の名前を花につけたり世界大戦の頃には「日の丸」「戦友」と名付けられた品種も出現。
ここからは講義以外の勉強知識、江戸近郊荒川周辺の自生地は乱獲や開墾などで絶えてしまいましたが、さいたま市田島ヶ原サクラソウ自生地は大正9年には天然記念物に、S25年には国指定の特別天然記念物に指定され、熱心に保護されています。でも 外来植物の増加、気候変動 河川改修など色々なことで生育数の減少は続いています。さいたま市では「ひるまず臆せず立ち止まらず、危機を克服し自生地を伝えていくことはさいたま市の責務です」と色々な取り組みを続けておられます。
講義が終わって、園内を少し散歩してみました。
サンザシが咲いていました。
クロバナロウバイだそうです。香りはするのかな、マスクしていたのでわからなかった。
サイカチの若葉。大きな豆も見てみたい。
ベニバナトキワマンサク。鮮やかで目立ちます。
こんな素敵な花が咲き残っていました。
シロダモ。先日山で見ました。
オオシマザクラの実。
ヒメコウゾの雌花
右端に雄花
シナマンサクの花後
サワフタギ 素晴らしい花のボリューム。
あ、ユリノキの葉っぱです。駅前に生えているけど、花を見たことがない木です。
大木を見上げると 花が咲いています。感激~!
チューリップのように咲いています。
大きな雌しべと雄しべ、花弁の色が上品で素敵。葉っぱのような模様があります。これからもっと黄色くなるのかな。
タラヨウ 葉の裏に傷をつけると黒く字がかけるらしい。
ニシキギ
桜草の歴史を学び、ユリノキの花に会って とても充実したくらしの植物苑でした。
また勉強に行きます。