覚醒した人間には、それまでとは比較にならない知覚が身に付くようだ。
まず、危険に関して。
平穏に潜む危険信号には敏感に感じとる力が備わる。
敵か味方か、瞬時に判別もできるようになってくる。
言葉にならないメッセージも感じとれる。
ものの見方が変化する。
物象をそのままにではなく、それが意味すること、意味合いや、込められたメッセージを感じとる力が目覚めてくる。
次に必要なのは、同じように、自分からも発信したり伝える能力だ。
これは訓練を重ねるしかない。
だが、必ず力は増幅し上達する。
連日のハードワークによる睡眠不足と過労。
仕事の納期とポジションによる重圧からのストレス。
過労による一時的な心身症。
これが私が手に入れた免罪符だ。

目覚めたばかりで混乱していた当時の私には、表向きの何かもっともな理由が必要だった。
これなら誰もが納得してくれて、私には傷がつかない。

でも……
私は、何もかも、すべてを覚えていて、そして、すべてを確信していた。

仕事はしばらく休暇扱いにしてもらうことにできた。
日常から解放されて、私は少し安らいだ。
時間も手に入った。
やっと、落ち付いて考えることができる。
これからのこと。今、私が存在する世界の真実について。
迷い込んだパラレルワールド。
どうすればいいのか。
言葉に出来ない。
声に出せない。
でも、感じることがある。
私の仲間はたくさんいる。
この街の雑踏に紛れている。
見つからないように、
無言のメッセージは
街中に溢れている。
見つけろ、メッセージを。
感じとれ、真に意味するところを。

私は自分の感じとる感覚だけに集中した。 そして、従った。

道行く人が、駅のホームに佇む人が、示唆している。
靴先で。指先で。肘で。顔の向きで。
私が進むべき道先を指し示し、導き案内してくれている。

そして、丸と四角の関係。
赤い丸は、
キケン。
キケン。

白い四角は、
アンゼン。
アンゼン。

複雑な多重構造と込められた意味を
感じとれるのは
仲間だけ。
単純かつシンプルを求めるな。

彼らには、見えない。
だから、言葉にするな。
語るな。
メッセージは描け。
汲み取った意味を、決して語ってはいけない。
奴らは必ず聴いている。聴いて、そして必ず巧みに忍び寄ってくる。
引っ掛かるな。
見破られるな。
平静を平然と装うのだ。
何喰わぬ顔をして……。

そして、
生き残れ。