むかしばなし | がらくた通り3丁目

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人にとってはまるで無価値。それも一個人の形成には不可欠。自我の源泉をたどる旅。おつきあい頂けたら幸いです。

あの子は少し変わった子だった。
おともだちは多い方ではなかった。
多人数との薄っぺらな関係性よりも
仲がいいおともだちと深く関わるのが好き。
あの子はそんな子だったに違いない。

あの子はいつも
空の見える大きな窓のそばで
絵を描いていた。
ある時はチラシをはさみで切って
セロテープで貼り合わせたりしながら
工作を楽しんでいた。
とうさんがそれを見せてって言うと
最初はテレくさそうに
でも自慢げに見せてた。

これはライオンでしょ〜〜
これがペンギンでしょ〜〜
これがゾウだよ〜〜。

へへへ〜〜動物園作ったんだよっ。
はいっ。とうさんにあげるっ。

ペコって上手だね〜!って褒めると
あの子は頬を思いっきり膨らませて
怒ったもんだ。

なんでかって?
あの子は生まれてから喋るまで時間がかかって
ただ一言ペコとしか言えなかった。

とうさんはそんなあの子をからかって
いつもペコって呼んでいた。

しかしペコだってもう8歳。
こんな呼ばれ方するとさすがに怒る。

とうさんはそれでも
ニコニコしながらペコって呼んでた。

ペコには親友がいた。
いつも二人は公園で遊んでいた。
会う約束なんかしなくても
学校から帰ってきたら
公園で会うのが二人の暗黙の決まり事だったのだ。
毎日いつも一緒だった。

二人の姿が真っ黒になる。
夕日に照らされた二人の姿は
みかん色の空を飛んでいるカラスと重なる。
遠くから美味しそうな匂いが漂ってくる。
影遊びの終わりの時間だ。

ペコも友達も
かあさんが待っている。
幸せな夕飯が待っている。
家族の食卓が待っている。

かあさんがいて、とうさんがいる。
家族の食卓は幸せの食卓。

またね〜〜。
おともだちが夕日に吸い込まれていく。

またいつもの明日がやってくる。
明日になればいつもの公園で
おともだちと会える。
ペコはそう思っていた。
でもおともだちと遊んだのは今日が最後だった。
おともだちは明日引っ越しだ。

おともだちのとうさんとかあさんは
離婚してしまったのだ。
おともだちはかあさんの実家に
行くことになったのだ。

あくる朝小学校でそれを知ったペコ。
意外とさっぱりしてたペコに
とうさんはめんとくらったものの
別れを受け入れてくれたのだと安心もしていた。

でもそれはとうさんの早合点だった。
ペコはそれからも毎日
くる日もくる日も
学校から帰るといつものように公園に出掛けた。
待っているはずもないおともだちに会いに。

ペコが作った動物園。

きっとここしかなかったんだろうな
ペコもおともだちも大人の都合に左右されず
安心して遊べる場所は。