コッチとヤッチ 最終回 | がらくた通り3丁目

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人にとってはまるで無価値。それも一個人の形成には不可欠。自我の源泉をたどる旅。おつきあい頂けたら幸いです。

バラ

コッチとヤッチ二人とも芸術家かぶれだけど
コッチは自然な感じ。
ヤッチはコッチを鑑にしていたように思う。
ヤッチはどれだけ彼女に憧れていたことだろう。

でもコッチはコッチで
ヤッチの中に自分にないものを見いだしていて
嫉妬にも近いものを持っていたようだ。
二人ともお互い惹かれ合いつつ
嫉妬心もあった感じだ。

その後もたまにみんなで会ってはいたが
コッチとヤッチとは別々に会っていた。
コッチにいたってはヤッチの名前を聞くだけで
気分が悪くなると言っていたから
失言のないよう気を使っていたもんだ。

コッチは田舎で結婚して
二人の子供の母親になった。
田舎に引っ込んでいても
人形劇の発表会なんかもやりながら
精力的に活躍しているようだった。

それにひきかえヤッチのことは
この連載の冒頭でも告げたように
縁が切れたし他のヤツにも音沙汰無しなので
消息不明なままだった。

今年の7月
コッチが田舎でライブをやることになった。
またしてもおかしな編成だ。
彼女らしい。

このバンドのギタリストさんが
またコッチに音楽やるよう
背中を押してくれたらしい。

しかもこの方偶然にも実はヤッチの知り合い。
もしかしたら30年ぶりに
仲直りできるチャンスが巡ってきたのかもしれない。
そう思ったコッチ。
期待と不安
複雑な気持ちが入り混じったのだが
次に彼の口から出てきた言葉に耳を疑った。

ヤッチが5年前にガンで亡くなった。

抗がん治療も拒否、覚悟の死だった。
そう告げられたそうだ。

なんのための涙なんだろう。
三日三晩ことあるごとに泣いたコッチ。
このままじゃダメだ。
大道芸人のノッポとチンチクリンという
キャラクターを
自分たちにあてはめた曲を作り
このライブで披露した。

いつか一緒にライブやろう!
将来の明るい未来を信じてた
二十代のあの頃の僕たち。
だけどヤッチの将来は5年前に消えていた。

もう二十代には戻れないし
ヤッチは死んでしまった。
だけどコッチとヤッチ二人の輝きは
今も消えない。永遠に。

Primal Screamで「Dolls」です。



またはhttps://youtu.be/4o9XOYhPJmM