ロジャースのパスサッカーが徐々に浸透し、調子を上げてきているリヴァプール。シャヒンがドルトムントに去ったものの、FWスターリッジを獲得し、前線の層はさらに厚くなった。真の実力が問われる首位ユナイテッドとのナショナル・ダービーでも結果を出せるか。注目のプレミア第22節を振り返る。
☆パスサッカーのための人選
リヴァプールはここまでリーグ戦21試合で15ゴールと好調のスアレスにどうボールを届けるかがカギを握る。パスサッカーは確実に浸透しているが、得点部分ではスアレスに頼っている部分が大きい。まずはリヴァプールの守備から見ていく。
リヴァプールは4-1-4-1で守備をセットし、ユナイテッドに自由を与えようとしなかった。序盤はこの狙いが当たり、ユナイテッドにチャンスを作らせなかったのだが、厄介な存在がいた。
香川である。この日左サイドハーフで先発した香川は、中盤まで下がってボールを引き出し、ユナイテッドの攻撃を活性化させていく。香川の出現でボールの奪いどころを潰されたリヴァプールは、徐々に後手に回っていくようになる。
攻撃面にも大きな問題があった。キーマンのスアレスが孤立し、全くチャンスが作れない。ユナイテッドにしっかりとプレスをはめこまれ、アッガーがドリブルで持ちあがらないと攻撃を作れない状態になっていた。
人選にも問題がある。リヴァプールは両ウイングを上手く攻撃に組み込めていない。アウトサイドを主戦場とするダウニングは全くポジションを変えようとせず、右サイドは死んでいたに等しい。
左のスターリングはボールを持っても個人技が目立ち、パスサッカー向きとは言い難い。リヴァプールは中央の選手だけでボールを繋ごうとしていた。それでは上手くいかないのも当然だ。
さらに残念だったのは、右SBのウィズダムである。彼は繋ぐプレーを得意としておらず、ユナイテッドに標的にされていた可能性が高い。
CBのボールをサイドに誘導されると、香川がプレスをかける。するとウィズダムはロングボールを蹴るか、レイナに返すか、縦のダウニングにパスを出そうとする。こんなマニュアル通りの動きはユナイテッドに読まれており、ダウニングにパスが通っても囲まれて攻撃が手詰まりになってしまう。
かといってジェラードやアレンがポジションを下げるとスアレスが孤立し、アタッキングサードの枚数が足りなくなる。前線にも後方にも色々と問題があるリヴァプールだった。
試合は前半19分にV.ペルシーのゴールでユナイテッドが先制。細かくパスを繋いで左のエヴラに展開したシーンは、今季のユナイテッドが理想とする香川を中心とした見事なパスワークだったと思う。
1点をリードされ、しかも前半に全くシュートを撃っていないリヴァプールは後半から動きを見せる。
☆システム変更と前回の記憶
アンカーのルーカスを下げ、新加入のスターリッジを投入。システムを4-2-3-1に変更し、スアレスの位置を1列下げた。このシステム変更は、単純にスアレスと中盤を近づけ、ボールに絡む回数を増やそうというもの。
先発したルーカスだが、ほとんど見せ場が無かった。推測だが、ルーカスのアンカー起用は、香川がトップ下で起用された場合のものだったのではないか。
しかしトップ下で先発したウェルベックは、香川よりも縦の推進力に優れ、ゴール前で真価を発揮するタイプだ。この試合でも自由に動き回り、ルーカスが彼を捉えた場面はほとんど無かった。
話を後半に戻そう。アンカーのポジションを削ったリヴァプールは、スアレスが前を向いてボールに触る機会が増え、徐々にチャンスが増えていく。と同時に、香川にもチャンスが訪れる。
アンカーが無くなった事により、香川が中央に進出する場面が頻発。ボランチのクレヴァリーらと細かくパス交換し、何度もジェラード・アレンの裏を取る事に成功していた。
実は、前回対戦の9月23日の時も同じような現象が起こっていた。リヴァプールのボランチの隙間で香川がボールを受け、攻撃が加速するパターンだ。
この日は左サイドハーフだったが、中央に流れる動きは見ていて美しかった。ほとんどミスも無かったし、見る者を唸らせる優しいボールタッチだった。
試合はその後FKからエヴラ?ビディッチ?がヘッドで決め、ユナイテッドが追加点を奪う事に成功。今季は本当にエヴラがセットプレーで活躍している。その後リヴァプールが意地で1点返すが、試合はそのまま終了した。
☆まとめ~香川が抱えるジレンマ~
今日の香川に点数を付けるとするなら、75点といったところだろうか。中盤でプレスをかけられてもボールを失わず、正確に味方にボールを繋ぐ。今日香川からボールを奪ったのはジェラードだけのはずだ。そのあたりはさすがである。
しかしシュートが少ない。左で起用された事も原因の1つだが、シュートは後半の1本のみ。香川はクレヴァリーやキャリックとパス交換しながらゴール前に侵入するが、そこからボールが出てこない。
今もユナイテッドの得点の大半がサイドからのクロスで、香川が得意とする狭いエリアでの崩しは実現出来ていない。後半の惜しいシュートも、相手の足に当たったボールがこぼれてきただけで、狙い通りの攻撃パターンではない。
このまま連携を深めれば、後々上手くいきそうな気はする。それでも今季香川がドルトムント時代のようにゴールを量産するのは難しいだろう。今の香川には「無難」という言葉が当てはまる。良くも悪くもない。
チーム改革には時間がかかるだろうが、香川には辛抱強く待ってもらいたい。何度か香川が得意とする崩しも見られたので、2,3カ月後にはコンスタントにゴールを決めてくれる姿に期待したい。
☆パスサッカーのための人選
リヴァプールはここまでリーグ戦21試合で15ゴールと好調のスアレスにどうボールを届けるかがカギを握る。パスサッカーは確実に浸透しているが、得点部分ではスアレスに頼っている部分が大きい。まずはリヴァプールの守備から見ていく。
リヴァプールは4-1-4-1で守備をセットし、ユナイテッドに自由を与えようとしなかった。序盤はこの狙いが当たり、ユナイテッドにチャンスを作らせなかったのだが、厄介な存在がいた。
香川である。この日左サイドハーフで先発した香川は、中盤まで下がってボールを引き出し、ユナイテッドの攻撃を活性化させていく。香川の出現でボールの奪いどころを潰されたリヴァプールは、徐々に後手に回っていくようになる。
攻撃面にも大きな問題があった。キーマンのスアレスが孤立し、全くチャンスが作れない。ユナイテッドにしっかりとプレスをはめこまれ、アッガーがドリブルで持ちあがらないと攻撃を作れない状態になっていた。
人選にも問題がある。リヴァプールは両ウイングを上手く攻撃に組み込めていない。アウトサイドを主戦場とするダウニングは全くポジションを変えようとせず、右サイドは死んでいたに等しい。
左のスターリングはボールを持っても個人技が目立ち、パスサッカー向きとは言い難い。リヴァプールは中央の選手だけでボールを繋ごうとしていた。それでは上手くいかないのも当然だ。
さらに残念だったのは、右SBのウィズダムである。彼は繋ぐプレーを得意としておらず、ユナイテッドに標的にされていた可能性が高い。
CBのボールをサイドに誘導されると、香川がプレスをかける。するとウィズダムはロングボールを蹴るか、レイナに返すか、縦のダウニングにパスを出そうとする。こんなマニュアル通りの動きはユナイテッドに読まれており、ダウニングにパスが通っても囲まれて攻撃が手詰まりになってしまう。
かといってジェラードやアレンがポジションを下げるとスアレスが孤立し、アタッキングサードの枚数が足りなくなる。前線にも後方にも色々と問題があるリヴァプールだった。
試合は前半19分にV.ペルシーのゴールでユナイテッドが先制。細かくパスを繋いで左のエヴラに展開したシーンは、今季のユナイテッドが理想とする香川を中心とした見事なパスワークだったと思う。
1点をリードされ、しかも前半に全くシュートを撃っていないリヴァプールは後半から動きを見せる。
☆システム変更と前回の記憶
アンカーのルーカスを下げ、新加入のスターリッジを投入。システムを4-2-3-1に変更し、スアレスの位置を1列下げた。このシステム変更は、単純にスアレスと中盤を近づけ、ボールに絡む回数を増やそうというもの。
先発したルーカスだが、ほとんど見せ場が無かった。推測だが、ルーカスのアンカー起用は、香川がトップ下で起用された場合のものだったのではないか。
しかしトップ下で先発したウェルベックは、香川よりも縦の推進力に優れ、ゴール前で真価を発揮するタイプだ。この試合でも自由に動き回り、ルーカスが彼を捉えた場面はほとんど無かった。
話を後半に戻そう。アンカーのポジションを削ったリヴァプールは、スアレスが前を向いてボールに触る機会が増え、徐々にチャンスが増えていく。と同時に、香川にもチャンスが訪れる。
アンカーが無くなった事により、香川が中央に進出する場面が頻発。ボランチのクレヴァリーらと細かくパス交換し、何度もジェラード・アレンの裏を取る事に成功していた。
実は、前回対戦の9月23日の時も同じような現象が起こっていた。リヴァプールのボランチの隙間で香川がボールを受け、攻撃が加速するパターンだ。
この日は左サイドハーフだったが、中央に流れる動きは見ていて美しかった。ほとんどミスも無かったし、見る者を唸らせる優しいボールタッチだった。
試合はその後FKからエヴラ?ビディッチ?がヘッドで決め、ユナイテッドが追加点を奪う事に成功。今季は本当にエヴラがセットプレーで活躍している。その後リヴァプールが意地で1点返すが、試合はそのまま終了した。
☆まとめ~香川が抱えるジレンマ~
今日の香川に点数を付けるとするなら、75点といったところだろうか。中盤でプレスをかけられてもボールを失わず、正確に味方にボールを繋ぐ。今日香川からボールを奪ったのはジェラードだけのはずだ。そのあたりはさすがである。
しかしシュートが少ない。左で起用された事も原因の1つだが、シュートは後半の1本のみ。香川はクレヴァリーやキャリックとパス交換しながらゴール前に侵入するが、そこからボールが出てこない。
今もユナイテッドの得点の大半がサイドからのクロスで、香川が得意とする狭いエリアでの崩しは実現出来ていない。後半の惜しいシュートも、相手の足に当たったボールがこぼれてきただけで、狙い通りの攻撃パターンではない。
このまま連携を深めれば、後々上手くいきそうな気はする。それでも今季香川がドルトムント時代のようにゴールを量産するのは難しいだろう。今の香川には「無難」という言葉が当てはまる。良くも悪くもない。
チーム改革には時間がかかるだろうが、香川には辛抱強く待ってもらいたい。何度か香川が得意とする崩しも見られたので、2,3カ月後にはコンスタントにゴールを決めてくれる姿に期待したい。