勘違いから始まる...ナントカ。 | サボリ通信

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大村幸太郎ブログ

先日、大阪で仕事を済ませ夕方日本橋堺筋線から阪急河原町まで準急に乗った時のこと。

向かい合って僕の前にはカップルが仲良く座っている。 買い物の帰りなのか、アミューズメントパークの帰りなのか手には大きなビニール袋を持って携帯をみて二人は楽しそうに話している。 
透明の袋からは大きなぬいぐるみや小さなぬいぐるみが透けて見えている、やはりアミューズメントパークの帰りのようだ。 が、しかし、おかしい。。キャラクターに統一性が無い、というか、てんでキャラがバラバラなのだ。

手に持つ簡易的なビニール袋といい、若干チャラく見えるカップルといい、これはあれだ、UFOキャッチャー/死語、クレーンゲームなんかで獲得したぬいぐるみたちなのだ。 
山盛りぎゅうぎゅうのぬいぐるみを彼女さんが抱えながら、彼氏も今日は仕事をしたって顔だ。両手にしっかり抱えてこぼれそうなぬいぐるみ達は袋の中からこちらを見ている。透明越しのぬいぐるみを見ながら僕は河原町までの準急に乗っていた

 準急は特急よりも遅い列車、いわゆる鈍行と同じ造りの列車で向かい合って座るタイプの車両だ。
普通車ながらある区間は特急の如く各駅を飛ばし、街が近づくといきなり各駅停車になる。これが準急の定義なのだけれど、あまり電車に乗らない僕には分かりにくい列車だ。ま準急とはそうなのだ。

日本橋から淡路を過ぎて南茨城まできたところでカップルは急に慌てて電車を降りていった。 丁度その時にぬいぐるみの一つが袋から落ちて降り口のドアの真ん前に転がった。
アッ!と思った時にはカップルは急いで乗り継ぎに走っていった。 ドアの前には取り残されたぬいぐるみが一つ転がったままだ
そこに一人の理系ぽいメガネをかけたサラリーマンが乗ってきて。あれ?と、ぬいぐるみに気づいてそれからずっと見ている。

、、いや、それはですね、先ほどバカップル、もとい仲の良いカップルがクレーンゲームで大量に取ったうちの一つで全然気にすることはない、、 と僕から呼びかけるわけもなく、、なんとなく、その足元のぬいぐるみをどうするだろう? と少し様子を見ていました。

落としていったぬいぐるみは手の平ほどでキャラクターの名称は分からないのだけれど、見た目にも可愛いピンク色の動物ぽいものだ。さらにはカバンなどに吊るせるようなヒモも付いていて、転がったぬいぐるみはあたかもバッグから落ちてしまった雰囲気をかもしだしている。 

サラリーマンのメガネ君はじっとそのぬいぐるみを見ている。 。


分かる、
分かるぞ。あなたの考えていることは、。
あなたは多分こう思っているだろう、。

これは、小さな女の子がカバンに付けていた大事なぬいぐるみなのでは、、ふとしたはずみにカバンから落ちてしまったのでは?、無くした女の子は今頃泣いているのでは? 大切なぬいぐるみなのでは、、?

そんな感じだ


違う、違うぞ
それはさっきカップルが有り余るぬいぐるみの一つを落としていったものだ。決してそんな想いの入ったものではない 

なんて、そんな心の声は届くわけもなくメガネ君はついに、ぬいぐるみを手にとった。
 それはカップルが落としてったもの、!、、と言っても、もうメガネ君はそれを信じないでいたと思う、彼の片手にしっかりぬいぐるみは吊るされていた


着ている黒のコートの袖先にピンクのぬいぐるみがチラチラが見えるものだから、それが目立って、、やがて何人か車内の人も気づいて、、、何?、あの人?、なんでぬいぐるみなんか持ってるの? みたいな感じなってしまった。、
いや、違う、違うんです。それは落ちていたもので、さっき拾ったモンで、決してメガネ君の私物じゃないんです。 それはカップルが落としていったもので、。、 メガネ君も勘違いしていて多分小さな子が落としたものと思っていて、、    と状況みていたこちらも何やら混沌としてきました。


多分メガネ君も分かっていたと思う、ぬいぐるみなんか持ってヘンだ俺と。 そう、そうするしかない、ポケットに入れるのもヘンだし。
しかし、本当、あなたがそこまで犠牲になる程のモンでもないんだそのぬいぐるみは


と、ここで準急の定義がメガネ君にのしかかる。 「次の停車駅は茨木市、、茨木市を出ますと高槻までは止まりません。」車内アナウンスが流れる。
そう、次で降りなければ列車はかなり遠方の高槻へ。 どうする?
ぬいぐるみ拾った南茨木へ一駅戻るには次で降りなければならない。 それともこのまま家まで持って帰るのか? 、というかメガネ君、あなたの家はどこだ?


どうする?

列車は茨木市へ近づいていく

どうする、メガネ君、、


手に持ったぬいぐるみを

どうするんだあなたは、、


メガネ君の左手には小さなピンクのぬいぐるみ
のそこだけがきれいな色を映している

何を言われても、もうメガネ君は気にしない。 直立にドアの前に立ち流れる夜の街を見るメガネ君のメガネはガラス越しにも強く輝いているように見えた、それは彼の意志のように思えた

窓の外の明かり一つ一つに家族があるように、その中にはぬいぐるみを大事にしていた子がいるかもしれない
 メガネ君も同じくらいの子どもがいるのかもしれない、
自分の子と照らし合わせながら、窓の向こうに映る小さな落とし主をメガネ君は探していたのだと思う

−カップルのだけれど




、、そして到着の車内アナウンスが流れる

茨城市−、茨木市−、



ゆっくりと列車は速度を落とし、


完全に停車をして


決断を下したように
ドアが

開いた



メガネ君は、


そこで
降りた



列車を降りた


左手にぬいぐるみを持ちながら、

列車を降りた




僕は車窓から彼を探した


人並みに飲まれうまく見えない


彼はどこだ?



どこだ?

メガネ君は、、






、、 いた!




人が重なり、そのなかを階段を降りるメガネ君、


まっすぐ前を向いていた、
前だけを見ていた




行き先は南茨城駅なのか


渡し先は、、


駅員さん?

車掌さん?


いや、彼は信じている。だれにどこに渡そうとそのぬいぐるみが必ず小さな落とし主の元へ帰るということを


それを信じて彼は列車を降りたのだ



人並みに飲まれる彼の手を私は見ることは出来なかった、

けれど
その手には必ずあのぬいぐるみが強く握られていただろう





彼は多分届けに行った。
拾って、ヘンな目で見られても、しっかり手にとって、 それを届けにいった。

カップルのだけれど−笑     


とんだ思い違いの落し物だったけれど、メガネ君は良かったんじゃないかな、僕もなんか良かった。   カップルのだけれど





まあメガネ君がその後どうしたかは、この話と別かもですが、、  それもまた野暮ですね   サンタクロースも信じていた方が楽しいのだから

ここまできたら本当に同じぬいぐるみを落とした子が居て、駅まで探しに来ているかも 
そんなふうにまで思えてきた




ここのところ急に寒くなって冷たい風に身体丸めていましたが、駅に着いて改札をでて、今宵の寒さはがいやに爽やかでした。
時計を見たら19:00、

久しぶりに、あのラーメン屋行こうかな?たしか19時半までは開けていたな、、一杯食って帰るか!






と気分よく、店に行ったら19:15ですでに閉まってた。
オイ、もうちょい信じて待っててくれよ。










あと10日ほどで11月です。 そしたら年内もあと少し、どうぞお身体ご自愛ください。
ブログあと一回書けたら と思っています。